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ASKA

つい先日、3年ぶりに彼の曲を聴いた。

iPhoneのミュージックを整理してて、そろそろ聴けるかもと思いシャッフルしたら、1番好きな彼の曲が流れてきた。
冗談みたいな話だけど、身体中の細胞がゾクソクって反応して、気が付いたら勝手に泣いていた。「やっぱりいい曲だな…」とか、感傷に浸る前に涙が出てしまったものだから、人体っていうものはつくづく不思議だと思う。
そんな再会だった。

彼との付き合いは、割と長い。
小さい頃実家にはチャゲアスのベストアルバムがあって、『振り返れば奴がいる』も見ていて、自然と『YAH YAH YAH』は覚えていた。学生時代は少し遠のいていたけど、社会人になってから、どっぷり彼にはまってしまった。理由は簡単、好きな男が好きだったから、彼のことを。

今はだいぶ衰えてしまったけど、それとなくメロディーを聞けばハモれるっていう特技を私は持っていて、月2、3回はカラオケでひたすらチャゲアスと彼のソロ曲を好きな男と一緒に歌っていた。楽しかった。だけど、その恋は非常に面倒くさくって、振り返るとその男も私もひどいメンヘラだった。たくさん傷つけられたし、傷つけたし、周囲の人たちも傷つけ悲しませ、誰も幸せじゃなかった。

それでも、彼の曲はずっと聴いていた。曲中に出てくる男たちは、少しだけ弱気で優しくてずるい。彼女がいるのに他の女の子と真剣に恋愛してる最低な奴なのに、何故か責めることが出来ない。憂いが漏れる歌声と、胸をじんわり抉る旋律が、しょうがないよって思わせてしまう。本当にずるいのはそんな曲を作っている彼なんだけど。

その男との関係を終わらせるのにはかなり時間を費やしてしまったけど、不毛な恋愛はなんとか終わった。だけど、彼のことは、引き続き好きなままだった。27歳のクリスマスは、彼のライブに行った。Twitterに感想を書いた記憶がある。

『晴天を誉めるなら夕暮れを待て』で、座っていたお姉さま方が一斉に立ち上がった。あぁ、そういう伝統なのかと、私も少し遅れて立ち上がった。オレンジ色の舞台照明が神々しかった。お姉さま方は、みんな少女の顔をしていた。

そのライブの割とすぐ後に、チャゲアスの再始動が発表され、後にライブ開催も決まった。やっと!チャゲアスのライブに行ける!とワクワクしていたけど、ついに願いは叶わなかった。※今年の8月、彼はチャゲアスを“脱退”している。

復活ライブの中止から世間を騒がす出来事が立て続けに起こったけど、彼を応援しようという気持ちは変わらなかった。彼がしたことは悪いことだけど、曲に罪はないじゃないか。むしろ、あんな繊細な曲を作り続けてきたんだから、少しくらい道を外れてしまってもしょうがないくらいに思っていた。でも、その気持ちをTwitterでつぶやいたり、誰にかに話したりすることは出来なかった。これが、世間体というやつなのだろうか。

だけど、それでも、さすがに、2回目は堪えた。それが3年前。1回目は仕方がないって思えたけど、今までずっと他人事だった街頭インタビューの「裏切られた気持ちです」っていうのを、ついに体感した。このnoteを書くにあたりWikipediaで経歴を見返したけど、2016年はなんだか危なそうだな、ダメかもしれない、頼むから何も起こらないでくれって願っていたことも思い出した。
彼の曲を、今までと同じように楽しめるとは到底思えなくて、聴くのを止めた。

───

ところが。今年の夏、思いがけない形で彼の音楽と再会した。光GENJIだ。ひょんなことから彼が提供した『STAR LIGHT(作曲はチャゲアス名義)』『ガラスの十代』『パラダイス銀河』三部作をYouTubeで見てしまい、どっぷりはまってしまった。光GENJIのキラキラした笑顔やダンスは素晴らしくて、リアルタイムで彼らの活躍を見ていたら絶対恋してしまうよってくらい素敵だった。だけど私が一番衝撃を受けたのは、彼にしか書けないであろう、もろくて繊細な歌詞。

ガラスの海で憧れたちは 未来の空を思い出してる/STAR LIGHT

散りばめられた単語ひとつひとつは難しくないのに、組み合わせ方一つで、脳に心臓に深く沁みてくる。もうそろそろ、彼の曲を聴いてもいいのかなって、思えるようになった。

ここ数日彼のことを調べてみたら、オフィシャルサイトとファンクラブが出来ていて、アルバムが発売され、Twitterが開設され、今年はツアーも行われていた。最近は剣道を頑張っているらしい。あまりの情報量の多さに、3年前離れてしまったことを少しだけ後悔した。どんなことがあっても諦めずに応援し続けた人にしか、新曲が発表された瞬間の熱量は味わえない。聴かないって決めたのは自分の癖に、何周も何周も置いてけぼりを食らった感じがして、どこか寂しかった。

今はまだ、全然追いつけていないけど、少しずつ彼の軌跡を辿っている。自分の思考や生活環境が変わって、もう昔ほどの熱量は持てないかもしれないけど、もう一度彼が歌う姿を見たいって、思えるようになってよかった。だって、人生で一番歌声を聴いている男性は、きっと彼だから。私を少女に戻してくれるのも、きっと彼だから。カラオケで一緒に歌い合った男ともう会うことはないけど、折角だから、私の夢に出て来てよ。2、3曲くらい、一緒に歌いたい気分なんだけど。

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