映画仕草
英語圏の映画やドラマで、会話中、両手の人差し指と中指を立て、クイクイと曲げるのをよく目にしていた。一体どういうタイミングでやってるのかな、と気になっていたのだが、なんとあれは、“引用符”の「“ ”」を指で表現しているのだと知り、「へー!」と「なるほど!」の嵐が巻き起こった。なんだか遊び心があってオシャレじゃあないか。ボディランゲイジを基本に持たない日本人には無い発想なのかもしれない。
オーディブル版『グレイラットの殺人』(“ワシントン・ポー捜査官”シリーズ4作目。昨年、このM・Wクレイブン作のミステリーシリーズにどっぷりハマった。ちなみに、僕の中ではなんとなく、ポー=ジェレミー・レナー、ブラッドショー=マヤ・ホークの配役で脳内再生されている。)を聴いているとき、「…と、ポーは指で引用符を作った」というような感じで、件の仕草がさらりと登場し、長年ぼんやり抱えていた疑問の答えを知ることになった。
たしかに、何かを揶揄したり、「例の“アレ”」みたいな説明をしようとするときに使ってる。僕が最も印象的だったのは、『オースティン・パワーズ』。「“モジョ”」と言うときに、必ず指クイクイをやってた。当時よくそのマネをしていた。
気になる仕草の話。他にもある。
指をピース状にして(またピース)自分の両目に向けてから相手の方へ向けるやつ。これは警察や軍隊が突入するシーンなどで頻出する。「しっかり目で確認しろ」とか、そういう合図で間違いないだろう。
『NOPE』では、それが兄妹の絆を表す表現として使われるところが渋くて感動的だった。
あとは、怒りを抱えた登場人物が一通り怒り散らして、気が立った状態で頭を抱えてるとき、相手が何か一声掛けようとしたとき、無言で目も合わせず手を「パッ」として相手を拒絶する仕草。これもあんまり日本では見ない気がする。中でもトニ・コレットの「パッ」はとても印象深い。『シックス・センス』と『ヘレディタリー継承』での、苦悩する母親が繰り出す無言の「パッ」には、そんじょそこらのセリフより鋭く強い拒絶感がある。現実でやられたらしばらく立ち直れないかもしれない。
僕はまだ海外へほとんど行ったことがなく、こういった仕草を映画でばかり見たり知ったりしていた。だから僕の中では、これらがとてもファンタジックで、映画的な仕草だという気がしていた。本当は普段の生活の中にも、ごく普通に登場するのだろう。いつかリアルで観た日には「わ!ホンモノだ!」と思うかもしれない。
逆に海外の方は、日本人が電話中、見えない相手に対して、ペコペコと頭を下げるのが可笑しいと思っていると聞いたことがある。言われてみれば、確かに少しヘンだ。ヘンなのだけど、日本人からしても日本人っぽいわーって感じがする。どうやら電話ペコペコにはエキゾチックが宿っている。
考えているうちに、各国の方々は、どのくらい自分たちの「っぽさ」に自覚的なのかが、だんだん気になってきた。
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