日本人女性のたしなみ
ホストマザーになって
アメリカの17歳の女の子をホストファミリーとして受け入れたのは先月のこと。
約20日間の日本滞在を終え無事帰国。時々ほのかに感じるEddyの香りがすでに懐かしい。
友人知人が世界各国の人を受け入れ、一緒に生活する様子を側で見ていて「自分の子にもまだ手がかかるのになんでわざわざ全く知らない外国の他人と生活しようなんて思うんだろう?」と疑問を持ってたけど、色々と謎が解けた。
外国人ホームステイ受け入れは、多様性を育むとか豊かな言語環境を作るとかそんな体裁良いもんじゃなくって、単純に挑戦なんだよね、きっと。その家庭のお母さんの。よそ様のお子さんも自分の子と同じように大切に接し愛を与えられるのかって。
あと、すぐに凝り固まってしまう考えを解し、視座を高めたいのかも。文化や習慣の違いを知るってやっぱり面白い。
Alienの存在はもちろん信じてるって話はまた別の機会に。
さて、Eddyには絶対に日本で体験してほしいことがあり、来日前から近所の友人(次女すうのクラスメイトのママ)に相談していたことがある。
友人は三世帯同居、純和風の邸宅に着物の着付けが出来るおばあちゃんと大ばあちゃんと暮らしていて、Eddyにはぜひニッポンの原風景の中で浴衣の着付けを体験してほしかったのだ。友人家族にすんなりと快く引き受けてもらえたので一安心。
当日、友人の家に着くと、88歳の腰の曲がった大ばあちゃんのお出まし。
「あんれまぁ!これはこれは、こぉんな歳になって、こんな美しい青い目のお方にお逢いできるなんてぇ、夢にも思っておりませんでした。あれあれあれ。こりゃあ冥土の土産になりました。どうもありがとうございます。」と、手の平まで畳にしっかりと付け頭を深々と下げお辞儀をしたのだ。その作法にEddyは深く感動し、すぐさま自分も正座し手の平を畳に付け頭を深々と下げ「アリガトゴザイマス。」と返す。友人と私は88歳と17歳がお互いに敬意を表するその光景に更に胸を打たれ、昭和初期に生まれた日本の女性の姿だね、本物のお辞儀だねとコソコソ話。その横では子どもたちが「ねぇゆかたまだぁ?はやくぅ~。」とはしゃぎ回る。
その後、浴衣の着付けに入り、グラマーなEddyのブラジャーをどうするかという問題が出た。友人と私は「まぁ、若いんだし今回はブラ着けたまんまでいいんじゃない?」とやんわり友人の義母と義祖母に伝えるが「これ着けると綺麗になるよ。」と何度も薄っぺらい布切れの下着を進めてくる。どうやら、着付けを習った際に、肌襦袢の上に着る補正着なるバストやウエスト、背筋をシュっとさせる専用の下着(和装ブラ)の着付けも学んだそうだ。つまり、豊かな胸の人こそ欠かせない下着というわけだ。昔は晒しなどで胸を抑える人もいたそう。せっかくなのでその補正着も着付けてもらうことになった。もちろんEddyの気持ちを優先し本人の承諾済み。
友人と私は初めて見る和装下着の存在に癒された。数十年で日本人女性の胸は驚く程豊満になり、大きく大きく見せる下着が主流となり、その刺激の強さに疲れてたんだと気付き、薄い木綿の布地に紐が付いただけのシンプルなそれは胸を包むような作りで、なんだかとてもやさしく愛おしく見えたのだった。
浴衣姿のシルエットが綺麗になるばかりでなく、凛とした日本女性の美しさを守る大切なものだったんだと、友人と私はEddyのおかげで気づくことができた。
どうしても誰かに感動を伝えたくなり写真を送ったのは、Eddyのお母さん。(以外には考えられないよね。)
この日の夜、Eddyとりんとすうが浴衣を脱いだ途端、三人が共に「はぁ~」っと笑顔で大きく息を吐いたのだった。
自然と背筋が伸び、重心が安定、小股で品良く歩く、小さい子どもたちも一つ一つの仕草が上品になる和装。浴衣。
不思議な力が宿ってる。