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「服を着る」を考える——服にまつわる問題とは

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、さまざまな領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。
 
みなさんが毎日着てる「服」。どんな服を選ぶか、また、それをどんなふうに着るか、じっくり考えたことはありますか?環境問題について考えるとき、衣食住の「食」に関心を向ける人は多いと思いますが、実は「衣」も、環境問題にとってとても深い関係があるのです。
 

今回はそんな服と環境の関係について、いろいろな角度から見てみましょう。 

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■素材が抱える環境問題と労働問題

環境や人、動物などに配慮された服装全般のことを「エシカルファッション」と呼びます。エシカルは「倫理的な」を意味する英語で、「環境にあまり負荷をかけない」、「生産者の健康や仕事が守られている」、「動物の権利を守っている」など、いくつかの定義があります。この言葉は、ここ数年で耳にする機会が増えてきました。
 
エシカルファッションの定義の一つに「環境にやさしい素材を使用している、開発している」というものがありますが、環境にやさしい素材として代表的なものといえば「天然素材」ではないでしょうか。天然素材である「綿・麻・絹」などの植物性素材は、吸水性や保湿性に優れ、一年を通して着ることができます。また、製造過程で使用する水の量やCO2排出量が化学繊維に比べて少なく、環境負荷が低いのが特長です。肌触りがなめらかで、静電気が起こりづらくなっているのも嬉しいポイントです。

以前、「江戸時代に学ぶ循環型社会」の記事でもご紹介したように、昔は着物をダウンサイクルして雑巾やかまどの燃料、最後には畑にまく肥料として利用していました。こうした生分解が可能だったのも、自然からできていたからにほかなりません。

最近では、竹からできた「竹布(たけふ)」や間伐材からできた「木布(もくふ)」なども出てきました。日本国内で流通している服のほとんどは外国産ですが、竹布や木布であれば国産化ができると期待する声もあります。さらに、成長スピードが速いため伐採が追い付かず竹害とまで言われることもある竹や、廃棄される予定の間伐材を使うことで、周囲にある別の社会問題の解決にもつながります。 
また、私たちの周りに当たり前のように存在している「コットン(綿)」も大きな問題を抱えています。コットン栽培時に散布する大量の農薬が生産者に健康被害を与えていることや、大きな手間をかけてつくったコットンが適正な価格で買い取りをしてもらえないことなど、私たちにとって身近なコットンにもたくさんの問題が存在しています。

これらの健康問題や労働問題を解決するのが、エシカルファッションのひとつとして考えられている、「フェアトレードのオーガニックコットン」です。有機肥料を使って育てられたコットンは適正価格で買い取られ、公正(フェア)に貿易(トレード)され、世界各地へ輸出されます。生産者は健康を害することなく栽培ができ、育てたコットンもきちんと買い取ってもらうことができます。なお、使用されている素材がオーガニックコットンかどうかは、服やタオルなどに付けられた認証マークでチェックすることができるので、ぜひ購入の際の参考にしてみてください。 

このような活動や知識が広がれば、服を購入する際にデザインや着心地だけで選ぶのではなく、「どこでどう作られた素材なのか」で選ぶという人が増えていくかもしれません。

■誰にでも実践可能なエコ活動、ひとつの服を長く着ること    

エシカルな素材で服を選ぶことはとても大切ですが、それよりももっと単純に環境問題に貢献できる活動があります。それは、買った服を長く着るということです。

服を長く着ることができれば、ゴミの数を減らすことができます。2020年時点で、日本の衣料廃棄物は年間50万トンを超えると推計されています。また、アパレル業界全体で見ると、毎年廃棄されるゴミの量は9200万トン(2021年時点)にものぼり、「汚染産業」とまで言われています。ゴミの量を減らすことは、誰にでもできる、最も身近な環境保護活動のひとつです。そこで、「服を長持ちさせる方法」をいくつかご紹介したいと思います。

分厚い生地を選ぶ

薄い生地だと摩擦や洗濯でその都度ダメージを受けやすくなってしまいますが、分厚い生地であればその分だけ丈夫になります。オンス(生地の重さを表す単位)を選んで買うことができるTシャツなどもあるので、お気に入りの厚みのものを探してみてください。(もちろん、薄い方が涼しくて好みという方もいるかと思います。好みに合わせながら生地を選び、なるべく長く使う工夫をしていくことが大切です。)

ベーシックなデザインを選ぶ

流行を取り入れたデザインやカラーはどうしても短期間で入れ替わってしまいます。流行を楽しむこともファッションの醍醐味のひとつですが、流行に左右されないものを選ぶと長く着ることができます。また、もし「状態はいいけれど、もう自分では着ない」という服があれば、捨ててしまうのではなく、誰かに譲るのも手かもしれません。ファッションを楽しみつつも、服を大切にするバランス感覚が重要です。

服を休ませる

服を着る度に洗濯すると、当然生地にダメージが加わるスピードも速まります。1日着たら、何日か休ませて他の服を着るなどローテーションしましょう。また、着ない場合はハンガーに掛けたり、クローゼットに収めたり適切に保管してください。服にも休息が必要です。

リペア・リメイクをする

服のほつれなどを直してくれるメーカーの修理サービスを利用したり、自分で手を加えてリメイクしたりするのもおすすめです。放っておけば着られなくなってしまう服でも、一工夫すればまだ楽しむことができます。むしろそれによって新しい価値が加わるかもしれません。

リサイクルする

そして、着なくなった服は素材のリサイクルに出してみましょう。店頭に服の回収ボックスを設置しているアパレルメーカーもあり、購入から廃棄ではなく、購入から回収、そして再利用へと、服のライフサイクルを延ばす取り組みがさまざまな企業で積極的に行われています。エシカルファッションは、

環境にやさしい素材の服を選ぶ

服を長持ちさせる

服を再利用する

と、服を購入するときから始まっています。健康のためにからだにいい食べ物を選ぶように、社会を良くするために環境にいい服を選んで着る。そんな選択をする人が少しずつでも増えていくことを願っています。

■最後に

そうは言っても、エシカルやサステナブルは、取り組む人に対して「楽しい」「美味しい」「面白い」など、何かしらのインセンティブが働かないと続きません。環境のために自分たちが我慢をするのではなく、自発的にやりたくなるような何かがあることで、楽しみながら環境を守ることができるのだと思います。たとえば、エシカルファッションは、「かわいくて(かっこよくて)環境にもいい服」のようになっていくといいのかもしれません。
 
服に限らず、限りある資源や生命が存在する地球において、私たちがそれらと共存するためには「楽しむ当事者」として意識できることが大切でしょう。千葉ウシノヒロバには、ソーラーパネルと蓄電池によってのみ電気の供給が行われる「オフグリッド」形式のロッジがあります。自然のエネルギーを実感しつつ、キャンプならではの「不便さ」を楽しんでもらえたらと考えています。

このように、それぞれが楽しむ中で、気づいたら環境を守っているような仕組みを考えていきたいと思っています。

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(執筆:松本有樹、編集:山本文弥)