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未来や社会のことを地域みんなで一緒に考えられる場所にしていきたい|千葉ウシノヒロバメンバーインタビュー⑤平明香さん

千葉ウシノヒロバでは「自律性」「優しさ」「現実的」という3つのキーワードを大切に考えています。誰もが、自分で考え、自分の意思で動くことができる、自由と尊厳をもてる「自律性」。人間に対してだけでなく、自然や動物に対しても優しい気持ちを持てるような「優しさ」。現実から逃れるための場所ではなく、一人ひとりの生活が少しでも前に進むような「現実性」。この3つが満たされた場所に育てていくため、日々多様なメンバーが挑戦を続けています。

今回取り上げるのはメンバーのおひとり、平明香さんです。取材の場で、直接お話をおうかがいして、平さんご自身が3つのキーワードを体現されている方のように感じられました。そんな彼女が千葉ウシノヒロバで働き、どんな挑戦をされているのか、ご紹介します。

難しい課題も、みんなで話し合えば、
解決のためにできることが増えていくと信じています

「千葉ウシノヒロバのコンセプトを読んだときに、共感で鳥肌が立ちました。こんな場所で働きながら、子どもを育てていけたら素敵だろうなと思いましたね。」

平さんは、千葉ウシノヒロバで働く以前から、千葉に暮らされています。地域新聞で知った友人から「近所にこんな牧場ができるんだって」と教えてもらい、求人に応募したといいます。

「千葉ウシノヒロバで働きはじめるまでの10年間は、専業主婦でした。そのため、最初は企業で働くことの不安もありました。でも『動物の解放』や『しんでくれた』の書評など、牛ラボマガジンの記事を読んで『私もあの記事を発信している人たちと一緒に考えたい、一緒に働きたい』と、気持ちが高まり、応募してみました。」

平さんは千葉ウシノヒロバで働く以前から、地域の中でサークルの運営やおはなし会を主催されています。また、子育てを中心に、平和や自然環境、食などについておかあさん同士で学び合うサークルの運営なども行われています。牛ラボマガジンのスタンスに、自らが行う活動との重なりを感じたと話します。

「牛ラボマガジンの記事はどれも『私はこう考えています、あなたはどう思いますか?一緒に考えませんか?』と問いかけてくれる内容ですよね。私自身もこれまで地域のおかあさんたちと社会や未来について一緒に考えるための活動をやってきました。

目の前にある課題を自分1人で考えるのって、難しいと思うんです。何もできない無力感に苛まれたり、膨大な情報量から正しい判断ができるか不安になったり。けれど、みんなで勉強して、一緒にどうするべきか話ができたら、課題に向き合うハードルが少し下がるんじゃないかな。」

社会問題の多くは複雑です。正しいと思える選択肢を選ぶことも難しい。しかし難しいからと諦めるのではなく、「一緒に考えましょう」と呼びかけ、主体的に考える人を増やしていく平さんの活動はまさに「自律性」の実践ではないでしょうか。

「私と同世代の親御さんの中には、自身の親から『政治の話は他人とするべきじゃない』と言われて育ったという方もいます。そういった方は、そもそも課題意識を人と共有することに抵抗感があります。実際に、主催しているサークルの中でも、そうした理由で話すことに躊躇していた友人がいました。でも会の中で対話を重ねるうちに、自然と話してくれるようになりました。今では、彼女から話題がでてくることもあります。誰かが口に出すことで、みんなが自然と社会について話せるような環境ができていくし、課題に対してできることも増えていくと信じています。」

お互いが感じていることを尊重しあうことで、
気持ちよく仕事ができると思っています

平さんが入社されたのは、2020年8月。そのころはまだまだオープンの準備中で、「初めてのことだらけだった」と平さんは語ります。

「キャンプ場のスタッフとして採用されて、一番最初の仕事は自動販売機の設置でした。自分がやったこともなければ、やったことがある人もいなかったので、まずは『自動販売機 設置 方法』で検索して(笑)調べているうちになんとなく方法がわかってきて、見積もりをとって比較表をつくって代表の川上さんに提案して。正直、最初は『え、ここからやるの!?』と驚きました。でも、その経験を経たからこそ、『みんなで作り上げた』という意識がうまれて、自分ごと化できたように感じます。一から仲間入りさせてもらった感じがあるんです。」

また、入社から現在に至るまで、楽しく働けているのは、千葉ウシノヒロバの柔軟な働き方によるところも大きいと語ります。

「パートという雇用形態なので、正社員の方と比較すると労働時間はどうしても短くなります。そのため自分が最後まで全ての作業を担うということができない場合もあります。結婚して子どもが産まれる以前なら、周りに頼る後ろめたさから無理をしてでも一人でなんとかしようとしていたかもしれません。でも今は家族も大事だし、千葉ウシノヒロバも大事。そうした価値観を共有できるメンバーが周りにいるので、素直に頼ることができる。いい意味で図々しさを持ちつつ、自然体で働けています。

以前、子どもの体調が悪いときにお休みをいただいたんです。『仕事のことは気にせずゆっくり休んでください』って声をかけていただいて。その時に千葉ウシノヒロバで働くメンバーと共通の価値観を感じてほっとしたことを覚えています。」

仕事も暮らしも大切にしながら、社会に目を向けることも忘れない。平さんと接していると、さまざまな困難も吹き飛ばしてしまいそうな前向きで明るいパワーを感じます。しかしそんな平さんも一度、壁にぶつかり、退職まで考えたことがあるといいます。

「実は2021年の4月くらいに、辞めたいとメンバーに相談したことがあって。その時は、オープン準備でメンバーみんないっぱいいっぱいで、その状況に対して『誰もこの状況を変えてくれない』って思ってしまったんですよね。でも、コーポレートディレクターのなるさんにご相談したらすごく寄り添ってくれたんです。『どうなったら、もっといい状態で平さんが働けそうですか。じゃあ、一緒に考えていきましょう』と言ってくれて。一緒に変えていこうと話してくれて、この場所だったらもう少しがんばれるかもしれないと思えました。」

状況を悲観するのではなく、どう変えていきたいか。視点を変えたことで平さんの行動も大きく変わっていきます。

「私も、みんなも、それぞれで辛いという気持ちを抱え込んでしまっていました。足りなかったのはコミュニケーションで、『辛いことは辛いって言い合おうよ』と、メンバーにも声をかけていきました。周りのメンバーも、呼びかけをした私に対して、面倒くさがることなく率直に話してくれました。その後、どれだけ忙しくてもみんなとコミュニケーションをとることを大事にしていったら、辛いと感じていた気持ちがだんだんと解消されていったんです。人と一緒に気持ちよく働くためには、相手のメンタルや仕事量とかも含めて今の状況をお互いに感じとること、大事にしていくことが必要なんだと思いました。正直に向き合うことができる現場の雰囲気のおかげで今のわたしがあるので、仲間には感謝ばかりです。」

空間も、集まる人も、コンセプトを体現した場所にしていきたい

壁にぶつかり悩んだ4月から、自分にできることや解決すべき課題に目をむけ行動に移した平さん。現在は、そうしたリーダーシップを見込まれ、ヒロバと里山事業部の里山チームのリーダーを任されています。

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▲リーダーとして入社式でスピーチをされる平さん

里山チームのミッションは商品の在庫や建物といった施設全体の資産管理と、地域連携の2つ。特に平さんは地域連携の方を中心に担われています。地域の人たちとの繋がりや接点をつくるミッションはまさに平さんが千葉ウシノヒロバでやりたかったことに重なる部分です。

「地域というキーワードはこれまでも自分にとって大切なテーマでした。面接でも千葉ウシノヒロバを地域に愛されるような場所にしたいとお話しました。最初はパートの私がリーダーになっていいのかという迷いもありました。でも地域に愛される場所にしたいという自らの思いを達成するために一番良い方法を考えた結果、引き受けることにしました。」

現在、地域連携の中でも力をいれて取り組んでいるのが、「あそんでのびる部」というワークショップの企画です。

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その他にも、ふらっと訪れてくれた一時利用の方にゆっくりした時間を過ごしてもらえるような「あおぞら図書館」や地域の子ども食堂にウシノヒロバで作った野菜をお渡しする活動も、平さん主導で動き出しています。

「千葉ウシノヒロバが地域の人の居場所になっていくきっかけをたくさんつくっていきたいですね。やりたいことはまだまだありますし、今取り組んでいることもこれからどんどんバージョンアップさせていきますよ。」

最後に、平さんが今後挑戦していきたいことについても伺ってみました。

「千葉ウシノヒロバのコンセプトは今見てもやっぱり素敵で、施設もそのコンセプトを反映してつくられています。10月には日本空間デザイン賞2021の『サステナブル空間賞』も受賞しました。今後は提供されるサービスや活動などソフト面に関しても、もっともっとコンセプトを体現したものにしていきたいですね。そのためには千葉ウシノヒロバで働く私たちも自律的で優しく、現実的な思考を深めていく必要があると思っています。私たちが変わっていくことで、千葉ウシノヒロバで提供されるサービスや活動も変わっていくはず。そうなれば、訪れてくれた人や地域の人たちにとっても変わるきっかけを与えられるような場所に育てていけるんじゃないかな。」

「地域」や「社会」、そして「未来」。こうした言葉は抽象度が高く、ときにイメージしづらい場合もあります。しかし、平さんがそれらの言葉を使って話される際には、平さんが思い浮かべている人たちの顔が浮かぶような印象がありました。家族やご近所さんや友人、そして千葉ウシノヒロバで働いているメンバー。直接言葉を交わせる周囲の人たちとともに豊さや幸せに近づくためにできることはなんだろうか?そんな問いを持ちながら行動されているのではないかと感じました。

「私もまだまだなので、みんなとともに思考を深めるための行動を起こしていきたいですね。コンセプトを体現できる千葉ウシノヒロバというチームが大きくなっていったら、どんなことだって実現できる気がします(笑)」

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