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「5分で投資したくなった」。“CaaS”で信用を最適化するCrezitに投資を決めた理由

こんにちは、千葉道場ファンドです。

2022年2月千葉道場ファンドは、金融サービス構築のプラットフォームサービス『Credit as a Service』などを展開しているCrezit Holdings株式会社(以下、Crezit)に対して、プレシリーズAラウンドで追加出資しました。

今回のプレシリーズAラウンドでCrezitは千葉道場ファンドほかから6.5億円を調達。シードラウンドからの累計調達額は約9.2億円となりました。

Crezitは2019年3月創業し、2020年3月に個人向けのモバイルクレジットサービス『CREZIT』をローンチ。さらにCREZITの開発および運営を通じて獲得した金融サービス構築に必要なシステム基盤やオペレーションを提供する『Credit as a Service』の展開を開始しました。

同社代表取締役・矢部寿明さんと、千葉道場ファンドの取締役パートナーである石井貴基にCrezitの事業展開と目指す世界観、投資家・起業家としての関係性について聞きました。

今回の資金調達は「加速度的に事業成長」するための第一歩目

ーーまずはCrezitの事業展開について教えてください

矢部「僕らは『信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。』をミッションとしている会社です。働き方や社会様式が変わる中で、個人に対する与信のあり方も大きく変わっていく必要がある。それを実現していくことを僕らのミッションとして、そのために今は『Credit as a Service(クレジット アズ ア サービス)』というビジネスを立ち上げています」。

「今後、金融機関だけではなくて新しいテクノロジー企業、例えば常にコンシューマーとの接点を持っているような事業会社が金融サービスにどんどん取り組むようになると思います。その裏側を『Credit as a Service』というソフトウェアで支えていくことにチャレンジしているんです」。

「2019年の3月8日に創業して3年が経とうしている中、ようやく今回の調達によって事業としてきちんと立ち上がり始める、というフェーズです。金融サービスという分野には、重たい課題がいっぱいあるんですけども、前回の調達後に事業検証できたことがかなりある。その検証を踏まえてようやく本格的にゼロからイチになるタイミングだと思います」。

ーー今回の資金調達の概要や目的について教えてください

矢部「資金調達はこれまでに2回実施してきました。創業時に7000万円、そして前回、1年ぐらい前にトータルで2.7億円。千葉道場さんは前回の資金調達から出資いただいているので、ちょうど1年くらいのお付き合いになります」。

石井「あー、そうでしたか。1年くらい前でしたっけ」。

矢部「ぴったり1年ぐらいですね。1年でまたお金が必要になってしまった、という話で恐縮なんですけれど(笑)」。

石井「スタートアップというのは、だいたい1年おきぐらいに資金調達しなきゃいけない生き物なんですよね(笑)」。

矢部「今回はdelight venturesさんとSpiral Capitalさん、そして千葉道場さんから、トータルで6.5億円の資金調達を実施することになりました。僕たちが作っている『Credit as a Service』は、いわば『与信のプラットフォーム』です。この事業では大きなマイルストーンとして『どれだけ大手金融機関を巻き込めるか』、つまり『大手金融機関に対してシステムを導入できるか』を狙っています。国内の消費者金融大手での導入がかなり進んできている状況です」。

「今回調達した資金6.5億円は、この『大手金融機関へのシステム導入』をやり切るためのシステム開発やチーム作りなどに使いたいと思っています。目標の一丁目一番地である大手金融機関への導入が達成できれば、その後かなり加速度的に事業成長できるプランを描けています」。

Crezitのメンバーには『なんとかする力』が備わっている

ーー千葉道場ファンドがCrezitに出資することに至った経緯や理由を教えてください

石井「シードラウンドからCrezitに投資していたジェネシア・ベンチャーズ田島さんからご紹介いただいたのが、最初のきっかけです」。

「こういう話をするのはあまりよくないんですけど、実は矢部さんから話を聞いて5分ぐらいでもう『投資したい!』と心のなかで決めていました。というのも、金融サービスの立ち上げは高い専門性が求められる。金融リテラシーも経験も必要で、そこに加えてある種の『常識を無視して突き進む力』も必要だと思っていて。まさに矢部さんはその両方を兼ね備えている人物だと感じたんです」。

「チームバランスも非常に良いなと感じました。当時のCrezitはまだコンシューマー向けに実証実験を行なうぐらいのフェーズだったんですけど『なんとかする力』が高そうだなと。『生命力』とでも言いますか。それも出資を決めた理由のひとつですね」。

矢部「本当に早かったですよね、千葉道場さんの意思決定。全プロセスを経ても一瞬で決まった感じがしました」。

石井「はい。タイミングも良かったので、全速力で対応いたしました(笑)」。 

ーーお互いに対する印象について教えてください

石井「投資前の面談では矢部さんと、CrezitのCOO・村井さんともお話ししたんですけど、お二人とも『愛され力』がすごい高い。『愛嬌』とも言うんでしょうか、それが起業家には大事だと私は思っていて。お二人とも専門的な経歴に加えて、愛嬌もお持ちでいらっしゃる。このチームだったら、たくさんの人から応援してもらいながら、描いている夢に向かって走っていけるのではないか。その成長の軌跡をご一緒させていただきたいなと思ってCrezitに投資しました」。

矢部「石井さんに会った時の印象は、石井さんは起業家出身なので、他のキャピタリストとは明確に違いがあるなと感じました。石井さんは『起業家との向き合い方』を熟知しているような気がします。起業家というのは、自分のプロダクトや業界については『自分が一番詳しい』という自負を持っているんですが、石井さんはそこに対して配慮やリスペクトをしてくれるんですよね。常に起業家ファーストの姿勢を感じています」。

「石井さんがもともとは起業家なので、僕にとっては『先輩っぽい』感じもありますね。普通の投資家相手だと相談しにくいことも、石井さんに対しては気軽に相談できますし。相談できて心がスーッと軽くなることもしばしばあるので、非常に感謝しています」。

石井「起業家に対するリスペクトはあると思います。というのも、投資家って多分、起業家の考えていることを30%くらい理解できたら相当すごい方じゃないかと思うんです」。

「投資家の場合、起業家と違って投資先の事業を24時間365日ずっと考えているわけではありません。なので、投資家が起業家のことを100%分かると言うのは、『おこがましいな』と思ってもいて」。

「Crezitのビジネスやビジョンも、矢部さんたちからお話を聞いて分かったと思っても、いつのまにかもっと進化している。いつまで経っても追い付けないんですよね。なので私自身は基本的に事業のことを『分かっていないなー』と思いながら接するようにしているんです。そんな中でも起業家としての『基本的な型』や『失敗例』とかは共有できるので、そういったことは必要に応じてお伝えするようにしています」。

矢部さんのバーチャル背景を見て「やるなあ」と。

ーー矢部さんから見た千葉道場ファンドの印象を教えてください

矢部「千葉道場ファンドのサイトで千葉功太郎さんが一人語りしてる動画を見て『熱いな』と思ったのがファーストインプレッションです。あの動画は人によって感じ方が分かれるところだと思っていて。例えば『Catch the Star』と本気で言っているのを見た時に、白けてしまうタイプの人と熱くワクワクできる人がいるんですよね。僕は後者だったので、そういった点でフィーリングが合ったのかなと思います」。

石井「矢部さんは最初からワクワクさせてくれましたよね。矢部さんとオンラインで初回の面談をした時に、矢部さんの使ってた背景画像が東証だったんですよ(笑) 東証の鐘をバーチャル背景に使ってて。そんな起業家、見たことないんですよ」。

矢部「そうだ! 前回ラウンドのときはずっと東証の画像を使ってました」。

石井「背景に使っている理由を聞いたら矢部さんが『いや、(将来は)鐘を鳴らすので……』って。『やるなあー!』って思っちゃったんですよね。すごい気合入ってるなって。先ほどの『愛嬌』の話にもつながるんですけど、そういったキャッチーさというか、素直さというか。矢部さんに『東証の鐘を鳴らす!』と言われると、なぜか本当にいけるかもしれないとワクワクするんです。そのあたりも含めて総合的に『愛され力』なのかなと思います」。

ーー東証の鐘を背景にしたのは矢部さん、計算尽くですか?

矢部「いえ、当時は、起業家として投資家に見せられるものがあまりなくて……。要は『俺を見ろ!』という気持ちしかなかったんですよね(笑)。なので、精一杯の気持ちを見せようとして『東証の鐘』だったのかなと思います」。

石井「普通、そういうことすると何か『やらしい』感じがするんですけど、矢部さんはそういう感じがしなかったんですよね。言語化が難しいけど、しっくりきた。そういったことも矢部さんの魅力かなと」。 

ーー矢部さんが千葉道場ファンドに参加して得られたメリットなどがあれば教えてください

矢部「千葉道場の半年の合宿で、先輩の起業家や経営者から本音の意見を聞けたり、気付きがたくさんあることですかね。視座が高まるのがすごく刺激になるんですよね。シリーズがもっと進んでいる起業家やイグジットした方たちなど、多様なステージの人がいて、自分の領域に関係のある話を直接聞けるんです。僕がこれから進んでいくフェーズを先に経験している先輩が近くにいるのは心強いですよね。今後もこの機会をうまく利用したいなと思います」。

これから、「自分にとってベストな金融サービス」が必要になる

ーーCrezitの今後の事業展開や実現したい世界観などについて教えてください

矢部「『信用の最適化』というCrezitのミッションを発想した根本には、とある発展途上国でのインターンシップでの経験があります。その国ではFinTechのスタートアップが、例えば銀行口座を持っていないような状況の人たちに対して、テクノロジーにより金融サービスを届けるという取り組みをしていて」。

「日銭を稼いでロウソクに火を灯す生活をしていた人たちが、与信の力で発電機のセットを買えるようになり、電気が使えるようになり。発電機の支払いが終わったら今度は冷蔵庫を買って、食材を保管できるようになった。そういった具合に、与信の力で人々の生活がステップアップしていく光景を目の当たりにして『これが与信や金融の本質だな』と強く思ったんです」。

「金融サービスの本質は『それまではできなかったことを、できるようにしていく』ことであると思っています。もちろん発展途上の国と日本では状況は違いますけど、この本質は同じだと思いますし、もっと多くの人々が、自分にとってベストな金融サービスを上手く使える世界ができたらいいと思う。そのためにまずは日本において、金融サービスの選択肢を広げるための『Credit as a Service』の開発と普及に取り組んでいるんです」。

ーー石井さんからはCrezitの事業展開はどう見えていますか?

石井「金融サービスってテクノロジーの進化に合わせてアップデートされてきたものなんですよね。電話が普及したときは電話で、FAXが出た時はFAXで、ポケベルが出た時はポケベルで最適化されている」。

「ですから、クラウドにより与信データを色々なところから収集する、という新しい与信のやり方にチャレンジしているCrezitは、金融サービスの潮流にマッチしており、非常に期待ができる。引き続きサポートしていければと思っています」。

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