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乗り越えるべき【起業の壁】Chapter7 組織の壁(後編)

こんにちは、千葉道場メディアチームです。

千葉道場noteは、起業家コミュニティである千葉道場内の起業家が持つ経営ノウハウをもとに、日本のスタートアップエコシステムをよりよくする情報を発信しています。

スタートアップの経営では、起業後に必ず遭遇する悩みや困難、すなわち「壁」があり、それを乗り越えなくては成長が停滞してしまいます。

本連載『乗り越えるべき【起業の壁】』は、千葉道場コミュニティのメンバーでもある令和トラベルCEO・篠塚 孝哉さんのnote記事「スタートアップ経営で現れる壁と事例とその対策について」を参考に、スタートアップ経営において乗り越えるべき「壁」に注目。千葉道場コミュニティ内の起業家にインタビューを実施し、壁の乗り越え方を探ります。

本連載では起業家が直面する壁を下記の8つに分類。壁ごとに前編・後編に分けて千葉道場内の起業家の考え方をご紹介します。

第7回の前編は、組織を成長させていく過程で必ず遭遇する「組織の壁」の乗り越え方を探りました。今回は後編をお送りします。

【今回の壁】

第7回:組織の壁

【次回以降の壁】

第8回:倫理・ガバナンスの壁

ご協力いただいた起業家の皆さん

今回は、千葉道場コミュニティから3人の起業家のインタビューをご紹介します。

石井 貴基さん
千葉道場株式会社取締役、千葉道場ファンドパートナー。2012年に株式会社葵を創業、誰でも無料で学べるオンライン学習塾「アオイゼミ」をリリース。2017年にZ会グループにM&Aを実施。以降も株式会社葵の代表取締役として、グループ各社と複数の共同事業を開発し、2019年3月末に退職。同年10月より現職。

名越 達彦さん
株式会社パネイル代表取締役社長。2012年、株式会社パネイルを創業。次世代型エネルギー流通基幹システム「Panair Cloud」の研究開発および小売電気事業者等への業務支援などの事業を展開。

門奈 剣平さん
株式会社カウシェ代表取締役CEO。日中ハーフ。2012年より「Relux」を運営するLoco Partnersにジョインし、海外担当執行役員と中国支社長を兼任。2020年4月に株式会社X Asia(現・カウシェ)を創業し、同年9月にシェア買いアプリ「カウシェ」をリリース。

目的地を決めてもルートで意見が割れる。それが「組織の壁」

石井 貴基さん
「組織の壁」の本質について考えるために、身近な例を挙げてみます。集団で「富士山に登りたい」となった場合、3人組なら簡単に行けそうです。5人組でも、ちょっと予定が合わない人が出てきたりもするけど、調整すればなんとか行けます。ところが10人になると「富士山じゃなくてディズニーランドに行きたい」というような声が出てきてしまう。そして30人になると、もはや収拾がつかなくなります。

幸い、会社の場合は「富士山に行くぞ!」とトップが宣言をした上で人を集められるという前提はあります。それでも、「どのルートで行くのか?」「どのペースで行くのか?」「どこまで車で、どこから徒歩なのか?」といった具合に、目的地は一緒であっても、ルートについて意見の相違が起こることはある。これが「組織の壁」だと考えていただくと、会社ではどのようなことが起きるのかをイメージしやすくなると思います。

「最初の10人」をしっかり固めることが大事

名越 達彦さん
組織には「10人の壁」「30人の壁」「100人の壁」があるという感覚を持っています。

30人の壁を乗り越えるためには、最初の10人をしっかり固めることが大事です。「リクルーティングの壁」でもお話したとおり、その企業の文化を決める最初の10人に良い人材を集められれば、その下にまた良い人材が集まり、30人の壁も乗り越えられる。ただ、その後に来る100人の壁はまた違う難しさがあるので、苦労することにはなると思います。

私の場合は、創業後の2年間は業務委託で仕事をやってくれる人を集めて、そのなかから信頼できる人に取締役をお願いしました。「信頼関係は仕事を通じてしか生まれない」と考えているからです。ただ、業務委託でマンパワーを集めるのは大変でした。例えば大企業の系列会社に業務委託を頼みに行ったりすると、我々の会社の方が小さいので、相手にされなかったことも多かった。

これに限らず、残念ながらスタートアップが邪険な扱いをされる事例は、かなり多いのが実情です。スタートアップは自分の能力以上の相手と向き合い、その中で志を共にする仲間を見つけ、社会に新たな価値を届け続けなければならない、まさに少年漫画のような世界だと思っています。

組織をまとめる基礎はバリューにあり

門奈 剣平さん
組織の壁については、前職でもカウシェでも色々と経験しています。いずれにも共通しているのが「そろそろ、こういう問題が起きそうだ。でももうちょっとなら大丈夫かな……」と思っているようなトラブルこそ、想定以上にすぐ発生するということ。つまり、組織で発生する問題というのは、顕在化がすごく早い。

例えば「そろそろCxOを据えないと業務が回らなくなるかも」と思った途端に、本当に業務が急増して回らなくなってしまうとか。あるいは人が増えてきて「そろそろ疎外感を覚えてしまう人が出てきてるみたいだけど、まだ人数も少ないし大丈夫かな」と思っていたら、組織内の横の連携が悪くなってしまい、辞めてしまう人が出てくるとか。

こういった問題に対して私が取り組んでいるのは、きちんと会社のバリューを作ること、そしてそのバリューを軸として、逆に「これはやってはいけない」というルールを作ることです。確固たるバリューがあれば「これってバリューに反しているよね」「俺たちらしくないよね」といった「組織の価値観」ができ、組織をまとめる軸にすることができます。

カウシェの場合は「Enjoy Working」というバリューを掲げ、人生を楽しむために仕事も楽しんでほしいと常に言っています。何かを達成したときに皆で喜んだり、楽しめるのがプロフェッショナルだという考え方です。ただ単に楽しい仕事、ラクな仕事ばかりを選ぼうとする人はプロフェッショナルではない、ということになります。あるいはもう一つのバリューのように、何事にも「Try First」の姿勢で挑戦を促し、たとえ失敗しても皆で「ナイストライ!」と評価する。

こんなふうにバリューに基づく価値観を組織に浸透させられれば、組織をうまくまとめていけると思います。

組織の壁を乗り越えるにあたって重要なポイント

第7回「組織の壁」について、起業家の話からは、主に2つの共通項が見えてきました。

ひとつが、優秀なナンバー2やマネジメントクラスの人材の重要性。そしてもうひとつが、成長中の組織において価値観の基準となるミッション・ビジョン・バリューの重要性です。組織の規模が大きくなっていくにつれトップの声は届きにくくなってしまいます。そうなった時に組織を束ねてひとつの方向に向かわせるために重要なのが、上記2つの要素だと言えるでしょう。

最終回となる次回は「倫理・ガバナンス」がテーマです。どうぞお楽しみに!

文:小石原 誠
編集:西田 哲郎


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