見出し画像

乗り越えるべき【起業の壁】Chapter7 組織の壁(前編)

こんにちは、千葉道場メディアチームです。

千葉道場noteは、起業家コミュニティである千葉道場内の起業家が持つ経営ノウハウをもとに、日本のスタートアップエコシステムをよりよくする情報を発信しています。

スタートアップの経営では、起業後に必ず遭遇する悩みや困難、すなわち「壁」があり、それを乗り越えなくては成長が停滞してしまいます。

本連載『乗り越えるべき【起業の壁】』は、千葉道場コミュニティのメンバーでもある令和トラベルCEO・篠塚 孝哉さんのnote記事「スタートアップ経営で現れる壁と事例とその対策について」を参考に、スタートアップ経営において乗り越えるべき「壁」に注目。千葉道場コミュニティ内の起業家にインタビューを実施し、壁の乗り越え方を探ります。

本連載では起業家が直面する壁を8つに分類。壁ごとに前編・後編に分け、千葉道場内の起業家の考え方をご紹介します。

第7回は、組織を成長させていく過程で必ず遭遇する「組織の壁」について、その乗り越え方を探ります。

【今回の壁】

第7回:組織の壁

【次回以降の壁】

第8回:倫理・ガバナンスの壁

ご協力いただいた起業家の皆さん

「組織の壁」前編となる今回は、千葉道場コミュニティから2人の起業家のインタビューをご紹介します。

原田 大作 さん
2011年にザワット株式会社を創業、代表取締役に就任。WishScope、スマオク等のC2Cフリマアプリをグローバル市場で展開。2017年2月、株式会社メルカリにM&AでExitし参画。2022年にVELVETT社を創業し2回めの起業に挑戦中。

黒川 晃輔 さん
株式会社LITALICO、株式会社パンカクを経て、2013年10月にゲームアプリケーションの企画・開発・運用を行なうNobollel株式会社を創業。現・同社CEO

「組織の壁」とは何か?

「組織の壁」は、組織のメンバーが増えていくことで顕在化する問題のことを指します。

メンバーが数人のうちは全員で同じ方向に進むことは容易ですが、人数が増え組織が拡大するにつれ、当然、摩擦や衝突が発生しやすくなります。そうしたなかで、いかに組織の足並みを揃える仕組みをつくれるのかが、組織の壁を乗り越えるためのポイントです。

今回は起業家のみなさんに、組織の壁として具体的にどのような問題が発生したか、どのようにして対処してきたのか、経験談や考え方を語っていただきました。

「組織の壁」は規模ごとに異なる

原田 大作さん
組織の壁を論ずる前に、なぜ組織を作る必要があるのか。「早く行きたかったら一人で行け、遠くに行きたかったらみんなで行け」(※1)とよく言われますよね。スタートアップの場合はもちろん遠くに行くことを目指しますから、基本的には仲間を集める必要があるわけです。

スタートアップに組織は必須だとして、組織の規模ごとに、発生しやすい典型的な問題がある。これが「組織の壁」です。

まず、組織が10人前後になった段階で最初の問題が起きてくる。ジェフ・ベゾスが唱えた「Two pizza rule」というルールがあります。これは、ミーティングの参加人数はピザを2枚分け合える「8人」以内に抑えるべきというものです。それ以上人数が増えると有意義な議論が難しくなるから。僕もこのルールに則って、例えば9人集まったら4人と5人のグループに分けるようにしています。

さらに人が集まって30人くらいの組織になると、今度は気を抜くと名前が分からないようなメンバーが出てきて、トップの言葉も組織全体に届かなくきづらくなります。間に入るミドルマネジメントの重要性が高まってきます。

その次は「ダンバー数(※2)」とも言われる150人。これを超えると、もはや全員と関係を築くことは難しい規模となります。ここまで会社の規模が大きくなるほど、いわゆる指示待ちタイプのメンバーが意図せず増えてくる難しさもあります。

さらに多くのメンバー数となると、もはやトップと直接会ったことがないメンバーが出てきたりもするので、メッセージの伝え方の一言一句が重要になってくるわけです。

このように「組織の壁」は常にあり続けるものです。たくさんの会社があの手この手でなんとか解決しようとしていますが、僕はミッション・ビジョン・バリューを浸透させることが極めて大事だと思っています。ミッション・ビジョン・バリューが組織内にしっかり浸透すれば、それを実現できるメンバーを評価するという軸になりますし、組織変更をする時にも説明に納得感を持たせられます。

あとは、後から組織に加わった人が、その組織内ですでに共有されている情報等を追えるように、組織内の情報や意思決定の背景をすべて言語化してオープンにしておくことも大事だと思います。

※1.早く行きたかったら一人で行け、遠くに行きたかったらみんなで行け:「If you want to go fast, go alone; if you want to go far, go together.」の訳。組織のあり方について論じる際によく援用される。アフリカのことわざとする説がある。

※2.ダンバー数:人が集団を形成するに際して、安定的に集団を維持できるとされる人数のこと。イギリスの人類学者ロビン・ダンバーにより提唱された。

壁を乗り越えるカギは優秀なナンバー2の確保

黒川 晃輔さん
組織の壁は、僕も全力でぶつかった壁です。

僕の場合はナンバー2が長らく不在で、30人の壁で何度も足踏みをしてしまいました。しかし今は優秀なナンバー2のおかげで、リーダークラスやマネージャークラスにも優秀な人が入社してくれています。メンバーが僕に相談しにくいことをナンバー2が受け止めてくれるようになったことで、組織のバランスが良くなりハレーションも減ったと感じています。

組織の壁を乗り越えるには、優秀なナンバー2の存在が非常に重要なんです。ナンバー2がちゃんとしていれば、30人の壁、50人の壁、100人の壁も超えられます。

どのような人材をナンバー2に据えるべきかについては「リクルーティングの壁」でもお話ししたとおり、トップである起業家が抽象型・具体型・バランス型のどれなのかを見極めて、バランスのとれる人材を据えれば良いと思います。

例えばトップが抽象型なら、ナンバー2には具体型の人を選ぶ。ナンバー2に適切な人材を据えられたら、次はマネージャークラスの人材をきちんと見極める。マネージャークラスに良い人材を据えられれば、メンバークラスにも良い人材が集まります。これで30人までは規模を拡大していけるでしょう。

30人以降の壁を乗り越えるには、ミッションやビジョンの確立と、トップ自身の成長が求められます。トップに対して「この人はすごいな」と思ってもらわないと、やはり人はついてこないんです。30人、50人の組織に成長しているなら、事業でも一定の成果が出始めているはずです。それに見合った覇気をまとえているか、まとえるほどにトップ自身が成長できているかというのがポイントです。

トップ自身が成長することで人を見極める力を上げていき、ナンバー2にも優秀な人材を据えて、そのナンバー2のもとに優秀な人材が集まる。このように組織全体がバランスよく連動することで50人の壁を突破し、100人の組織を目指せる。こういう感覚を僕は持っています。

後編でも、さらに3人に“壁の乗り越え方”を聞きます

後編では千葉道場ファンドパートナー・石井貴基さん、パネイル創業者の名越達彦さん、カウシェ代表・門奈剣平さんの3人に「組織の壁」の乗り越え方を聞きます。

文:小石原 誠
編集:西田 哲郎


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?