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トイレの消音器は本当に”あの音”を消してくれるのか

私はもともと胃腸があまり強くなく(移調も強くない)、香辛料の効いたインドカレーなどを食すとすぐさま大変な事になります。逆説的に便秘がちな時にインドカレーを食べに行くと速やかに改善するため、長いことうまく自分の体と付き合っているわけです。

先日、仕事の付き合いで、とある小さなレストランでお手洗いの個室に入った際、ボタンを押すと流水音が鳴るというシロモノに久しぶりに遭遇しました。個人経営の飲食店で、やや刺激的な料理を食しており、やはり直後にトイレに駆け込んだわけです。

そこで発見した消音器。きっと”あの音”もかき消してくれるに違いない!と思い、ボタンを押し、流水音を背景に遠慮なく、気兼ねなく、爆発的かつ盛大に”あの音”を発しました。

いちおう”音の専門家”ですから、流水音のそれを耳にした段階でdB値と周波数特性(f特)をすぐさま想定し「遠慮すべきである」と判断するべきでした。冷静さを欠いていました。それだけに一刻を争う事態であったわけです。

席に戻るなり同席していた方から「音がぜんぶ聞こえてたよ、食事中にほんと勘弁してよ」と。本当に申し訳ございませんでした…。

考察

さて、実体験をもって”あの音”が完全に消滅する事はないと理解したわけですが、ここでは2つの側面から考察してみようと思います。

 1、そもそもあの機器はなにが目的なのか
 2、遠慮のない”あの音”を完全に消すには何dB必要か

「1」について、弊所が勝手に推察するのではなく、メーカーのwebを拝見しました。私はここで「消音器」と呼称しておりましたが、正確には「トイレ用擬音装置」とのことです。また、主に女性が対象であり、必ずしも排泄音だけではなく生理用品の開封音などもマスキングすることが目的であることがわかりました。ですから、私のような大柄男性で、全く遠慮のない爆発的な”あの音”は残念ながら適用外であることがわかりました。

「2」について、これを調べるには自身の爆発的な”あの音”を計測するしかありませんが、残念ながらこれを執筆している現時点においては快調であり放屁の予兆すらありません。弊所の膨大な音声ライブラリより複数の放屁音を再生し解析したところ(弊所にはあらゆる音声が蓄積されているのです)、発信部(肛門)から0cmの至近距離では、なんと111.4dBを記録し、30cmの距離ではおよそ93.5dB、1mの距離では73.3dBであることがわかりました。ただし、臀部は便器内に収納されているため音量の減衰はあるとしても、これを完全にマスキングするには、80dB〜90dB以上の音で、かつ全周波数帯域をカバーするノイズであることが理想です。さすが開発メーカーにおいては「どの音を選定すべきか」という点において、このノイズに最も近い「流水音」「川の流れ」を選んでいるわけです。また、リラックス効果もあるのでは、という側面からもこの音を採用したようです。

音量については、完全にマスキングするためには「電車の高架下レベル」の音量が必要なので、壁掛けの小さなスピーカーからは到底無理ですし、それを実現してしまうと店内に滝のような轟音が毎度響き渡るため現実的ではありません。これはもうトイレを防音にするしかありません。


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