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珈琲にライム

アパートを契約した。デポジットを払うとオーナーは、「お茶はいかがですか。コーヒーと紅茶、どちらにしますか?」といった。コーヒーをお願いすると、小さなデミタスカップに半分のライムが添えられてきた。

ん??

私が頼んだのは紅茶ではなく、珈琲ですけど。こちらでは、コーヒーにライムを絞って飲むのです。おいしいですよ、お試しあれとウインクされるも、瑞々しいライムは大さじ1杯分はありそうだ。せっかくの味が台無しになるのではないか・・と思いながら絞ってみると、これがおいしい。キリマンジャロの酸味を強くしたような、フレッシュさがましている。あまり詳しくはないけれど、ミャンマーは珈琲の産地だ。

「こちらでは二日酔いの朝、ブラックコーヒーにライムを絞って喫茶店で飲むのですよ。」仲介してくれた知人がいう。ということは、毎日通っているコーヒーショップの皆さんは私が毎日、二日酔いと思っているってこと?「そういうことになりますね。」と笑いをかみ殺している。あの、アイスアメリカ―ノ、ノーシュガー、ノーミルクですねと満面の笑みで皆が暗唱するのにはそのような意味があったか。

「タクシードライバーからお届けものです。」スタッフがやって来た。まだ立ち上げのホテル住まいの頃、夕飯のテイクアウトを手伝ってくれたミャンマー料理屋でよく頼んでいたものだ。沖縄に近いトロピカルな気候の当地で、ゴーヤのおひたしをみつけ、野菜不足を補っていたが、人気メニューで売り切れの日も多い。ココナッツのゼリーも添えられていた。アパート住まいになってからなかなか行けてないなあ・・と車の中でつぶやいた言葉を覚えていてくれたようだ。チップが差し入れになって返ってきた。

家に帰ると扉の前に、ミャンマーの伝統食モヒンガ-の差し入れがあった。大家さんとマネージャーは時々、粋なお届けものをしてくれる。くしくも、制裁がより厳しくなった翌日、みえない応援の気持ちが温かい。どのような評価を受けようとも、今日も夕日は美しく、珈琲は薫る。ミャンマーの方々のさりげない思いやりや助け合いの精神から学ぶことも多い。

その行間に込められた彼らの願いに応えられることはわずかだけれど、次世代が屈託なく活躍する場をつくることで恩返しができたらと願っている。


バラ01
スタッフのお庭に咲いたというバラの花。
子どものころ近所にあった生垣のような香りがする。
















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