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【#03】“映画館”の本と、渋谷にいた中学生の頃の私と映画館のこと

みなさんと同じように、私も映画館が好きです。(きっと映画館が好きな人しかこのnoteを読まないと思うので)ミニシアターエイド基金が本日23:59まで。

私も超微力ながら支援しつつ、この支援にまつわる主催の方のメッセージやSNSでの支援の言葉を読んで、私と映画館のことを書きたいなと思ったのでした。

シネマライズに通う中学生だった

東京都渋谷区初台出身で、渋谷まで自転車で20分くらい。私立の中学に通っていた私は、自宅前からバスに乗り渋谷へ、そこから電車に乗り換えて通学していたので渋谷は単純に通学路でした。2000年になったばかりの頃の渋谷は今よりまだまだ治安が悪く(笑)、センター街ではコギャルの名残みたいな人たちがたくさんいたし、実際マジックマッシュルームも売っていました。(よく言われるのは、渋谷で育ったなんて不良になるね!みたいなことなのですが、遊びたい人が集ってくるのが渋谷なだけで、渋谷にいるからといって全員がそういう遊びが好きなわけではない。)
放課後よく遊びに行っていたのは、原宿竹下通りから渋谷にかけてのキャットストリートと、キャットストリートを抜けてタワレコの横から公園通りに入ってスペイン坂に出るルート。道端で布を広げて謎のアクセサリーを売っているおじさんと話したり、雑誌に乗っていた裏原のたっかいアパレルショップに背伸びして入って怪訝な顔をされたりするのでした。

買い食いしたりしていたらあっという間にお小遣いが飛んじゃう中で、1000円札握りしめていつでもおしゃれなもの見られる映画館という場所は、当時の私にとってはある意味コスパの良い選択。旧パルコ3の上に入っていたシネクイントや、東急文化村の上のシアター・イメージフォーラム、そしてシネマライズ。ふらっと行っても大概どこかで何かは見れるから特に作品や時間も調べずにとりあえず覗いてみるのが日常でした。

そんな中、ある日ひとつの法則に気付いたのです。シネマライズで見る映画はなんか分からないけど全部自分好みだ、と。「何の作品を見る」じゃなくて「(何か)映画を見る」のスタンスで映画館に行っていたため、特に作品を選ばずに入って、もちろん寝ちゃう時もよくわかんなかったなって時もあったのですが、面白かった映画を思い返すとシネマライズで見た時という共通点があった。

これがミニシアターとの出会いでした。支配人の頼さんが、自ら映画祭に買い付けに行って上映する作品をセレクトしていること。それが配給という仕組みで、だから厳選したタイミングで作品がかかっているのだということ。後期ミニシアターブームの真っ只中に渋谷にいる中学生でした。

「と言うことは、頼さんと私は趣味が合うんだな!」と思い、この映画館でかかるものは全部面白いに違いない、と一方的に信頼したのが通い始めるきっかけ。
時代はバラバラかもだけど、「アメリ」「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」「潜水服は蝶の夢を見る」「ミスター・ロンリー」とか、たぶんもっとたくさん観たな。「リリイ・シュシュのすべて」はリアルタイムに中学2年生で観て、ちょっと気まずい思いをしたのを覚えています。

その後キュレーションという概念が出てきて、自分のおすすめのものを「まとめ」て紹介したり、「編集」の概念が広がってコンテンツを切り貼りして整えながら共感を得ていく手法も出てきたけれど、「これが俺のおすすめカルチャーや!ドヤッ」ていう圧倒的な“推し”を感じたのは、私にとってはシネマライズが一番でした。そして、そういうのすごいかっこいいなと思ったのでした。

映画館の支配人になる、と今も言い張っている

そういうことで、私にとっての「映画館の支配人」はシネコンのオーナーではなく、「自力で買い付けた作品をかける単館を運営しつつ、推しを見せつける人」
キュレーションして紹介する、なんて生易しいものじゃないんです。だって暗闇に入れて2時間最後まで見続けさせるんだもん。「どや、これ面白いやろ!」って自信と覚悟がないと。

その上で、「ああ、私の好きなものを、同じように強く良いと思っている人(=映画館の支配人)がいる」ということそのものが、私にとっての自己肯定感につながっていたのですよね。私の趣味まちがってなかったんだ、的な。中学生の頃そんなことを感じ、映画に関わる仕事に憧れ、そのあと時代は進んでコンテンツビジネスというカテゴリが出てきて、自分なら何ができるか考えてまだ見つからなくて、少しでもクリエイティブのシーンにいたいと思いながら試行錯誤しているのが、イマココです。

「映画館」という概念は変わるかもしれない。それはコロナがあってもなくても、テクノロジーや人間の時間の使い方の変化で変わっていっていると思います。でも私にとっての「圧倒的なセンスの押し付けの場としてのミニシアター」は、形が変わっても誰かにとって必要であり続けると思う。そういう場をいずれ作りたいなぁということは、今でも全然諦めていないのです。

“映画館”の本1:「ミニシアターフライヤーコレクション2」

前の職場の本棚にあった参考書籍。引っ越す時にしれっともらってきて、ずっと今でも自宅の本棚にいます。2003年〜2006年頃のミニシアター作品のフライヤーデザイン集。1はもっと古いのかな、私にとってはこの時期が自分のミニシアター通いのドンピシャなので、パラパラ見るだけでエモい気持ちになる。

その頃私も映画館に行く度にフライヤーを棚の端から端まで1枚ずつ持って返ってファイリングしていました。多分1000枚くらい溜まってるんじゃないかな、実家の引っ越しと共に今は段ボールに詰めてサマリーポケットに預けてある。いつか整理してみよう。

“映画館”の本2:「映画館(ミニシアター)のつくり方」

地方の有名ミニシアターを中心に、ケーススタディとして17の劇場を取り上げて、どういう経緯で開館したか、館内図面や運営方法の違いをそれぞれまとめている。

中心を成しているのは、2004〜2008年の間に「映画芸術」誌に連載された「映画館通信」の原稿を加筆修正したものであり、これらは主に映画館を作った後の事柄について書かれている。にもかかわらず、なぜタイトルを「つくり方」にしたのかといえば、映画館を建てることよりもむしろ、その後いかにして独自のカラーを創り上げていくのかに、映画館作りの本質があると考えたからである。

まえがきにこうある通り、建てたあとどうやって個性をもって運営していくかについての支配人の覚悟や意志を感じるエッセイとしても。

“映画館”の本3:「CINEMA,CINEMA,CINEMA」**

Amazonに在庫なかったので写真のみ。
これは今でいうZineみたいなものなのかな?「映画館情報」といいつつ、ページの半分以上は映画館関係者や、単なる映画ファン(本当にただただ映画好きで通っている人)の新聞への寄稿みたいなエッセイ?ていうか映画館との思い出話?みたいなコラムがびっしりで、超個人的な内容。(笑)
みんな映画館好きなんだなぁとほっこりしつつ、後半の映画館情報のところには「※遠くからの人は事前に休館情報をチェックしてからでかけること!」みたいな支配人からのメッセージもあり、往年のぴあを思い出します。なんで持ってるんだろ。

“映画館”の本4:「映画館ほど素敵な商売はない」

こちらはもう少し「建てる」ことに実践的な内容。京都シネマを開館する時のノウハウの整理とともに、最後の章では上映会のHowtoまで触れており、本当に「劇場側に携わる人を増やしたい」という意志を感じた本でした。
設備・音響のこと、建てるにあたっての建築基準の話、接客業としてのオペレーションのことなど。きれいごとや想いやビジョンだけではない、実務的に配慮しなければならないことにも向き合っていて、自分の城をつくるってこういうことなのだな、と実感できる本。

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