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はんなり???!!!着付師物語 第3章❹未来ニューヨークへの旅

未来は、運転免許をとり、行動範囲を広げた。
トムの仕事の手伝いの幅も広がり、アルバイト代も前の倍ほどもらえるようになったから、その増えた分をエアチケット代にプールした。
未来は、あと数ヶ月で日本に帰ると思うと焦りが出てきた。
せっかくアメリカに来たのだから何かしたい!このフロリダの田舎町にずっといたから、はっきり言って、アメリカ大陸の壮大さなどは感じる経験もなかった。
未来はニューヨークに憧れを抱き行ってみたいと思ったけれど、ニューヨーク行きのエアチケットを買う余裕はなかった。

「そうだ!トムのオンボロ車を借りてフロリダからニューヨークまで行けばいいんだ!道は繋がってるんだから絶対到着出来るわ。」

何とも無謀なプランを思いついた未来だった。
フロリダからニューヨークまでは、約1200マイル、つまりは、約1850キロメートル。飛行機で飛んでも3時間はかかる距離だ。
大阪空港から北海道に飛ぶのに、2時間かかるかかからないかの距離のだから、相当な距離だと想像して欲しい。
未来は、やりたいという気持ちを抑えられないタイプで、100人が反対しても自分がやりたければ、実行に移す。
早速トムに話してみた。
トムは呆れた顔で、こう言った。
「お前、どれだけ遠いか分かってるのか?そんなことは誰もしない。やれるもんならやってみろ。けど、俺も仕事で車を使うから、10日で往復して帰ってくることが条件だ。」
トムにしても、行かせたところで根を上げてすぐに戻ってくるだろうと思い、車を貸したのだろう。

未来は、まだ見ぬニューヨークに想いを馳せながら、ワクワクして出発した。
ところが、同じ景色が続く道をもう何時間も一人で運転し、ウンザリしてきた。
かといって、ここから戻るのも癪に触るから、とにかく前に進んだ。
当時は、今とは違うから、GPSで位置情報が掴めるわけもなく、一体自分が今現在どこにいるのかさえ分からない。
けれど、一度決めた目標は、絶対にやり遂げたい未来は、とにかくニューヨークを目指した。
お金のない16歳の少女が車を運転し、疲れれば車中泊すること自体、当時の治安を考えると恐ろしい。
けれど、未来には、そもそも怖いという感情が欠如している。
なんとか出来るし、なんとかすればいいと思っている。
何かが起これば、その時の最善を選べば良いだけだという考え方で、とても冷静だ。本当に十代の少女なのだろうかというキモの座り方だ。

未来は、数日かかり、なんと、ニューヨークにたどり着いたのだ。
マンハッタンは、キラキラしていた。スカイスクレーパーが立ち並び、ネオンが輝き、町中の人々はかっこいい。カフェやレストラン、シアターをチラ見しながら街を回ったけれど、全てが高価で未来には手が出ない。
しかもニューヨークに行くという目的は達成しゴールについたわけだから、それだけで満足していた。
未来はフロリダに帰ろうと思った。けれど、あのロングディスタンスをもう一度運転して帰る気にはなれなかった。

「そうだ!!車をエアチケットに替えれば良いんだ!」と思い立った。

普通に考えて、16歳の少女がニューヨークに来て、自分の乗ってきたオンボロ車を売り払うなんてことはやらないし、思いつきもしないだろう。

未来は、ガソリンスタンドに入った。給油をしていると、その横で車のメンテナンスをしている作業員がいた。
チャンスとばかりに未来は話しかけた。
「ハーイ!私、フロリダからドライブしてここまで来たの。すんごく遠かったから、もう一度あの距離を運転して帰る気になれなくて、、、、、だから、この車を売ってとにかくフロリダ行きのエアチケットを買って、家に帰りたいから、車買ってくれないかな?」

背の高いブラウンの肌をした二十代前半に見える男は、びっくりして聞き返した。
「ワオ!本当にフロリダから運転してきたの?それはクレイジーだ。しかもお前子どもにみえるけど、無免許じゃないのか?」

「ちゃんと免許証持ってるよ。ほら、これ。私16歳だから免許はつい最近取ったばかりだけどね。ねえそれより、車買ってくれないかな?フロリダに帰るエアチケットさえ買えればいいんだ。いくらくらいでエアチケット買えるのかな?」

「そりゃ、お前、国内線だから100ドルぐらいで買えるんじゃね?車の値段にしたら、オンボロでも安すぎるだろ。それなら俺のボスがきっと買ってくれるさ。部品取りにでもなるからな。俺、車の修理屋から派遣されてんだ。お前運がいいよな。ちょっと待ってろ。これ終わったら店に帰るから。」

持ち前の行動力が引き寄せる運の良さで、国内線の片道チケット代という安価ではあるけれど、トムの車は売れてしまったのだ。
そうしてトムの車を売り払ったお金でフロリダ行きのエアチケットを買えた未来は、満足して家路についた。

飛行機で帰ってきたご機嫌な未来にトムが激怒した。
「未来、お前は、俺の車をそんな安い値段で勝手に売って、のうのうと帰ってきたのか?!本当にお前ってやつは、お前の父親が言ってた以上に世の中を舐めやがって!!車は仕事で使うからいるって言っただろ!どう落とし前つけてくれるんだ!このことは、お前の父親に言いつけるからな!」と、16歳の少女をボコボコに殴り出した。

未来は、今までに女一人で二人の男をボコボコにしたこともあるわけで、やり返すことも出来た。しかし、自分が理不尽だと思うことや、自分が大切だと思ってる人や友達を守るためなら暴力に打って出るが、今回のことは自分が確かに悪かったなと思い黙って殴られていた。それにしても未来の痛点はどうなってるのか?体がもともと丈夫なのは確かだけれど、ガードは一応しているとはいえ、黒人の男が殴り続けているのに耐えれるものなのだろうか?
しかも殴られながら、意外と冷静に考えを巡らせているのだ。
『それにしても、こんなに殴られたら死ぬかもしれないな。
そういえば、今までに死ぬかもしれないっていう目にあったのは、アメリカに来る前、お父さんに熱湯のバスタブに頭突っ込まれて抑えつけられた時だったな、、、なんでトムこんなに怒ってんだろ?』

そしてその三日後には、あのオンボロ車とは打って変わって最新の高級車がトムのガレージに置かれていた。



https://note.com/chiaki1969128/n/ncd200df69603


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