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初心者のための天文講座~天体について その6 彗星~

ここは初心者の方に向けてお話をしています。
中には細かいところの説明を省いたりしているところが多々あります。
そこのところご了承ください。

前回は衛星についてお話ししました。天体についてのお話ももうあとわずかです。
それではおさらいしてみましょう。

天体とは、「宇宙空間に存在する天然の物体」のこと。
そして天体は恒星・惑星・準惑星・小惑星・衛星・彗星・外縁天体などに分類されている。
恒星とは、自らが光やエネルギーを放つ巨大なガスの塊で、夜空で輝く星々や太陽が恒星の一つ。
惑星とは、恒星を公転する岩石・ガス・氷などの天体のこと。
準惑星とは、太陽の周囲を公転し、惑星と衛星以外で球形を保っていられる大きさの天体のこと。
小惑星とは、他の天体に比べるとごくごく小さくて不定形な天体だが数は膨大に存在。ほとんどは火星と木星の間に存在してるが、たまに惑星の軌道周辺にいたり、大きく楕円軌道を取ったりしていたりする。
衛星とは、惑星などの周りを周回する岩石や氷でできた天体。ひとつの惑星にひとつではなく、持たない惑星もあれば何十個も存在していることもある

それでは今回のお題、彗星についてお話していきましょう。

・彗星とは

彗星とは、太陽系内の小さな天体のうち、核・コマ・尾で構成され、核は主に氷や塵などでできており、その氷や塵・ガスなどの構成成分を大きく放出している天体の事を言います。

核とは彗星の中心にある物体です。コマとは核を取り巻くガスや塵のことで、コマの物質が流れ出たものが尾となります。彗星の画像を見ると進む軌跡を描いているかのようなものがほとんどだと思います。この核から伸びている輝きが尾です。

・彗星と太陽の関係

彗星の軌道は他の太陽系の天体と同じく太陽を公転していますが、極端な楕円軌道となるものが多く、太陽に大きく近づいては遥か彼方へと飛び去る軌道を描いています。
中には二度と戻ってこないものや、成分の放出により崩壊してしまうもの、途中で違う天体に引っ張られて衝突するものもあります。

彗星の中心となる核を取り巻くコマや尾は太陽に近づいたときにのみ見えるようになります。なぜ太陽に近づいた時にのみ見えるようになるのでしょうか。

彗星は太陽から遠いところにある時、核は凍り付いています。そのため小惑星のように見えています。
そして、だんだんと太陽に近づくにつれ、太陽が放出する熱により次第に凍っていた核が溶け始め蒸発していきます。この蒸発した成分がガスや塵となりコマが発生します。
そして太陽から放たれる電磁波と太陽風により、太陽と反対方向にコマが流れ出し、長く伸びて尾となります。

この尾は2種類あります。ひとつはダストテイル、塵の尾といいます。これは核の欠片である塵や金属から成る物質の尾です。
もうひとつはイオンテイル、イオンの尾といいます。これはイオン化されたガスで構成される尾です。
ここでのイオン化とは電子によるイオン化で、ガスを構成するプラスでもマイナスでもない中性の分子が、電磁波等によりプラス、もしくはマイナスに電荷(電気を帯びた)した分子を得て変質することです(大雑把な説明です)。詳しい説明はしませんので、ガスがエネルギー(ここでは太陽からの電磁波など)を受けて変質したんだな、と思ってください。

尾

彗星の最大の特徴はその尾です。写真などでよく見る白い尾はダストテイルです。その長く伸びた姿から、日本では「箒星(ほうきぼし)」とも呼ばれます。

・彗星の軌道と周期

先ほど彗星は公転軌道が極端な楕円となるものが多いとお話ししました。太陽に近づいたかと思えば火星の外側まで行って戻ってきたり、とんでもないものだと一番外を回る惑星の海王星の遥か外側まで到達するものもあります。
これだけ軌道の差があれば、一周回って元に戻ってくる期間にも大きな差ができてきます。
番周期が短い彗星はパンスターズ彗星で、その期間は1182.64日。およそ3年3か月弱ですね。下の画像がパンスターズ彗星です。

パンスターズ彗星

逆に一番長い周期をもつ彗星、それは池谷・張彗星で。その期間はなんと約367年です。前回太陽に最も近づいたのが2002年3月18日で、その影響で周期が366年に縮まったそうです。
次に太陽に近づくのは西暦2368年ごろだそうです。とても楽しみですね!

彗星はその両極端な公転周期により、ふたつに分類されます。短周期彗星と長周期彗星です。
短周期彗星とは、公転周期が200年未満の彗星で、長周期彗星は200年以上の周期をもつ彗星です。
他に非周期彗星という分類もあります。これは長周期彗星に含まれています。長周期彗星は軌道が不安定なものが多く(先ほどの池谷・張彗星も太陽に近づいた時に周期が変化しました)、太陽に近づいた後二度と戻ってこない軌道に変化したり、戻ってきそうでも数十万年後と考えられたり、そういう彗星もあります。これらを非周期彗星と呼んでいます。

また、太陽に近づく位置が極めて近い類似した軌道を持つ彗星があります。これらの彗星のことをクロイツ群と呼んでいます。
これはかつてはひとつの巨大彗星で数百年前に分裂し、その欠片がひとつひとつ彗星となって周回していると考えられています。

・彗星はどこからやってくる?

彗星はいったいどこからやってくるのでしょうか。
1950年にヤン・オールトという天文学者が仮説を発表しました。どんな内容かというと、長周期彗星が太陽から一番遠くになるのが太陽から1万~10万天文単位の距離のものが多いことを発見し、この位置に小天体が多く集まり、彗星が生まれる領域があるというものです。この領域のことをオールトの雲と名付けました。

天文単位、以前出てきましたね。小惑星のお話の中です。1天文単位はどれくらいの距離だったでしょうか。
正解は太陽から地球の(平均)距離ですね。覚えていましたか?
せっかくなのでリンク貼っておきます。
初心者のための天文講座~天体について その4 小惑星~
1万天文単位は約0.1光年相当になり、10万天文単位は約1光年です。
光年も以前出てきましたね。光が一年間に進む距離が1光年です。
これは恒星のお話をした時に出てきました。リンクしておきます。
初心者のための天文講座~天体について その1 恒星~

・彗星の個数

彗星はいったいいくつくらい存在しているのでしょうか。
知られているだけで約3700個以上あり、いまも増え続けています。今現在、いくつなのか分かりません。
このうち、約1500個がクロイツ群の彗星です。いったいどれほどの大きさの彗星だったのでしょうね。
そして、約400個ほどが短周期彗星です。ということはほとんどが長周期彗星ということですね。

・彗星のネーミング

彗星は現在は基本的に発見者の名前がつけられます発見順に3名までつけられることがあります。
例外として、発見時は小惑星とされていたものが、のちに彗星であると判明した場合、小惑星として付けられていた名前がそのまま彗星の名前となることもあります。日本人の名前がついている彗星は多数あり、Honda(本田)彗星・Ikeya(池谷)彗星・Hyakutake(百武)彗星などがあります。
しかし、過去は異なる習慣によって名付けられてきました。彗星の軌道を決定した天文学者の名前だったり、3月の大彗星や1811年の大彗星と呼ばれるものがあったりしました。

現在は先にお話しした通り、発見者の名前が付けられるのが原則となっていますが、近年は人工衛星や捜索プロジェクトにより発見される彗星も増加しています。これらの場合はそのプロジェクト名が付けられるようになっています。現在はこういったプロジェクトにより発見されるものが大多数を占めるようになってきているそうです。
となると同じプロジェクトチームがたくさん発見したら同じ名前ばかりになるのでは?という懸念が生まれたのではないかと思います。
実際SOHO彗星という名前は1000個超えるそうです。
その際は名前の後に第二彗星とかつけたりして区別していました。1994年までは。
1995年からは新しい符号が付けられることになり、例えば公転周期の一番短いパンスターズ彗星は「P/2013 P5」(ピー/2013 ピー5)という符号がつけられています。

これはどの様につけられるのか。例えば2020年12月11日(胃にいい日ですね)に5番目に彗星を発見し、報告したという体で符号をつけてみましょう。
まず発見報告を行うと、まず頭に「C/」とつけられます。これは彗星の英語「comet」のCです。そして発見年2020が加えられ、その後に発見された時期を表す記号が入ります。1月15日までが「A/」、16日から末が「B/」、2月15日までが「C/」という具合で1年を24区分にします。使う文字はアルファベット26文字中の24文字で、「I」は数字の1と混同する可能性あるため除外し、「Z」は余ったので使いません。(本当に余ったからなのかどうかは知りません)
で、12月11日なので「X/」が付けられます。そして、この「X」の時期に何番目に報告されたかで最後の符号が決まります。5番目に報告されていれば「5」が付けられます。
これで全部の符号を並べてみましょう。「C/2020 X5」となります。
その後、軌道計算など行って軌道が確定したら、それが周期彗星であったら頭の「C/」は「P/」へと変更されます。周期彗星でない場合は「C/」のままですが、消滅したり、長期間観測できなかった場合には「D/」、軌道が確定できなかった場合は「X/」に変更されます。
こういった符号が〇〇彗星の名前とともに記録されます。ですので、同じ名前で何個も発見された場合、第二や第三とは付けずに符号で管理するようになっています。

・有名な彗星

一度は名前を耳にしたことがありそうな有名な彗星として、ハレー彗星、シューメーカー・レヴィ第9彗星、百武彗星、ヘール・ボップ彗星などがあります。

ハレー彗星

ハレー彗星(画像)は周期75.3年で、前回は1986年に接近しています。この時は肉眼でも尾を観測できたそうです。ただ、地球に最接近した4月盛んに報道され、社会現象にもなったそうですが、北半球からはほとんど見えず、南半球へ行かないとだめだったみたいですね。いつの時代も報道は無責任ですね。
さらに前回の接近は1910年で、この時はハレー彗星の尾の通過跡を地球が通過すると大騒ぎになったそうです。その際、尾に含まれる猛毒成分により、地球上の生物が絶滅すると言った噂や、地球上の空気が5分ほど無くなるという荒唐無稽な噂が広まり(もちろんデマです)、富裕層によって自転車等のチューブが買い占められました。また、長時間息を止める訓練をする者や絶望感により命を投げ出す者、全財産を遊興につぎ込む者など笑い話のようなことが実際にありました。
この話は「空気のなくなる日」という映画になっているそうですね。
海外でも同じような騒動が起こっていたようです。
しかし、実際は彗星の尾の中の大気などは非常に薄く、地球の大気には何の影響も与えません。むしろこの時は流星雨となっており、壮観な夜空となっていたのではないかと思います。

シューマーカーレヴィ第九彗星

シューメーカー・レヴィ第9彗星(上の画像)は地球には接近しておらず、1994年に木星に衝突し、消滅した彗星です。これも毎日のように報道されて衝突の経過が流されていましたね。

百武彗星

百武彗星(上の画像)は最も地球に近づいた彗星の一つでした。
最接近時にはじっくり観察していると移動しているのもわかるほどでした。30分で満月の直径くらいの距離を移動していました。
ただ、最大光度に達したのがわずか数日だったため、天候が悪かった地域では観測できなかったこともあり、社会現象になるまでは至らなかったようですね。
この百武彗星は次回の接近は17000年後と言われています。見れなかった方は次回リベンジですね。

ヘールボップ彗星

ヘールボップ彗星(上の画像)は、おそらく最も多くの人に肉眼で観測されたであろう彗星のひとつと言われています。1997年に接近した際は18か月に渡って肉眼で観測できる明るさになっていました。
この際、日本では起こっていませんが、海外ではデマによりパニックを誘発されたそうで、カルト教団の集団自殺などが発生しています。

架空の彗星では、映画「君の名は。」にティアマト彗星というものがあるそうですね(私はその作品は見ていないので知りませんが)。周期は約1200年だそうです。
他に架空の彗星では、映画「ディープインパクト」内の「ウルフ・ビーダーマン彗星」がありますね。
同時期に公開されていた映画「アルマゲドン」は彗星ではなく小惑星でした。
暴れん坊将軍にも彗星激突を題材にした回があるそうですね。

・まとめ

彗星は調べることが非常に多く、先週の投稿時間には間に合いませんでした。今週も今の時点で12月12日22時50分です。遅れることは明白です。

それではまとめます。
彗星とは、主に氷や塵などでできており、その氷や塵・ガスなどの構成成分を大きく放出し、尾を形成する太陽系内の小さな天体の事です。
楕円軌道により太陽に近づいたあと、大きく太陽から離れるのが特徴
です。

それでは今回はここまで。
次回は太陽系外縁天体についてお話していきたいと思います。
それではまた来週。本格的に寒波がやってきそうなのでお体にはお気を付けくださいね。

ここまでご覧いただきありがとうございます。
ぜひ次回もよろしくお願いします。

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