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初心者のための天文講座~天体について その4 小惑星~

ここは初心者の方に向けてお話をしています。
中には細かいところの説明を省いたりしているところが多々あります。
そこのところご了承ください。

前回は準惑星についてお話ししました。
恒星・惑星・準惑星と進んできましたがついてこられていますでしょうか。
まだ大丈夫でしょうかね。
それではおさらいをします。

天体とは、「宇宙空間に存在する天然の物体」のこと。
そして天体は恒星・惑星・準惑星・小惑星・衛星・彗星・外縁天体などに分類されている。
恒星とは、自らが光やエネルギーを放つ巨大なガスの塊で、夜空で輝く星々や太陽が恒星の一つ。
惑星とは、恒星を公転する岩石・ガス・氷などの天体のこと。
準惑星とは、
太陽の周囲を公転し、惑星と衛星以外で球形を保っていられる大きさの天体のこと

それでは今回のお題、小惑星についてお話していきましょう。

・小惑星とは

小惑星とは、恒星・惑星・準惑星・衛星以外の小型の天体で、海王星の公転軌道より内側にあり、大きく成分を噴出拡散していない天体のことを言います。
必ずしも球形でなくてもよいので歪な形のものが大半を占めます
数がどれだけあるかというと、正確な数はわかりません
小惑星や彗星の情報提供や報告・出版などを公式に行う機関である小惑星センターに正式に登録され、小惑星番号が付けられた天体だけで541,132個(2019年時点)となっています。ただし、この番号は準惑星やまだお話ししていない彗星や太陽系外縁天体などが含まれています
公転軌道が確定しないと認定されないので、確認途中の天体もたくさんあります。その数は20万個ほどと言われています。
その他にも直径1km程度以下の小惑星は未発見のものが数十万個あると言われています。

・小惑星の二つの意味

以前に内惑星という言葉がふたつの意味があるというお話をしました。英語で二つの用語が日本語訳されたときにひとつの用語になってしまったためです。
それと同様のことが小惑星という言葉にもあります
その二つの用語とは、「asteroid(アステロイド)」と「minor planet(マイナー プラネット)」です。
「asteroid」は岩石を主成分とする海王星の軌道の内側にある小天体のことで、
「minor planet」は惑星より小さな天体の総称(衛星を除く)のことで、asteroidを含む準惑星や太陽系外縁天体・彗星などです
したがって、先ほど出てきた小惑星番号が付けられた天体はminor planetの意味での広義の小惑星となります。
この後の小惑星は狭義の小惑星「asteroid」でお話していきます。

・小惑星の分布

現在識別されている小惑星の大部分は火星と木星の間に存在しています。この領域を小惑星帯(アステロイドベルト)、近年はメインベルトと呼びます。
この領域は太陽から約2~4天文単位に広がっています。

ここで天文単位という用語が出てきました。
天文単位とは距離の単位で、英語で「astronomical unit」と言い、記号は「au」となります。
1天文単位はどれくらいの距離になるかと言えば、太陽から地球の平均距離です。正確には149,597,870.7km(約1億5千万km)となります。

この地帯になぜ小惑星が集中しているのかというと、最初はこの位置にあった惑星が何らかの原因で破壊され、破片が漂っていると考えられました。しかし、現在では、通常惑星は岩石などが衝突を繰り返して次第に合体し大きくなっていって形成されますが、すぐ外側を公転する木星の強い重力によって小惑星同士が合体するのを遮られてしまい、大きく形成されないままに散らばったため、と考えられています。
ただ、小惑星帯に存在する天体のすべての質量を合計しても、月の質量の35分の1程度にしかなりません。

この他、木星軌道に近いところに存在する小惑星群もあります、それの代表的なものはトロヤ群と呼ばれます。
木星の強大な重力に晒されながらも取り込まれていないのは、ラグランジュポイントにあるためだと考えられています。

ラグランジュポイントとは、ある二つの天体の重力が釣り合った場でのことで、安定してるポイントです。
余談ですが様々な物語にスペースコロニーという宇宙空間に浮かぶ建造物が登場します。例えば「機動戦士ガンダム」などに登場するスペースコロニーは地球と月の重力が釣り合うラグランジュポイントに建造されているという設定があります。

トロヤ群は太陽と木星の重力が釣り合うラグランジュポイントに位置しているため、木星に取り込まれずに済んでいるのです。

そして、このトロヤ群のように惑星の軌道周辺に分布している小惑星は木星だでなく、地球にもあります。他にも火星・天王星・海王星にも発見されています。

小惑星帯

・小惑星発見の歴史

小惑星の発見1801年に発見されたケレスから始まります。当初は惑星と考えられていましたが、翌年の1802年にパラス、1804年にジュノー、1807年にベスタが発見され、これらは同じような位置で発見され、いずれも惑星と呼ぶには小さすぎることから惑星と区別して考えられるようになりました。
そして小惑星「asteroid」という言葉が1853年に考え出されました
ちなみにこの最初に発見された4個の天体は四大小惑星と呼ばれていました。

・小惑星の大きさ

小惑星の大きさは直径が最大のパラスでも約520kmベスタで500km500kmを超えるものはこの二つしかありません。準惑星になったケレスですら910kmでした。ほとんどは100km以下といわれています。
1km以下となると発見すら難しくなりますが、数十万個存在していると言われます。

小惑星の大きさ

・命名

小惑星の名前は天体の中で唯一発見者に命名権があります。
「発音可能な英文字で16文字以内であること」、「公序良俗に反するもの、ペットの名前、既にある小惑星と紛らわしい名前は付けられない」、「政治・軍事に関連する事件や人物の名前は没後100年以上経過し評価が定まってからでないとつけられない」、「命名権の売買は禁止」などの基準があります。

当初は他の惑星と同様に、ローマ神話の神の名前を付けられていました。ケレスは豊穣の女神、パラスは海の神トリートーンの娘(なぜかギリシア神話)、ジュノーは結婚の女神、ベスタは竈の女神といった具合です。男神でも女性化して名付けられていました。
しかし、あっという間に尽きてしまったため他の神話や文学作品の登場人物、実在の人物、地名なども使われるようになりました。そこで、上記のルールが生まれました。
また、中には小惑星番号に関連のある言葉や語呂合わせでついている名前もあります。
たとえば、「ゼロ」。これの番号は4321です。カウントダウンしてゼロになるからだそうです。
ほかには6980の「坂本九」。これは坂本九さんの代表曲「上を向いて歩こう」に関連しています。どう関連しているのでしょうか。
それは作詞の永六輔さんの「6」、歌手の坂本九さんの「9」、作曲の中村八大さんの「8」がはいっているからでした。六八九トリオと呼ばれているそうですね。
わかりやすいところで8940「薬師丸」これはそのまんまですね。
また、31152は「大震災」と名付けられています。これは東日本大震災の発生日、3月11日が含まれているためです。
暗号のようなものもあります。46610「Bésixdouze」。発音は[be.sis.duːz]「ベ・シス・ドゥーズ」でしょうか。
これは小惑星番号の46610を16進数で表すと「B612」となり、サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」に登場する王子の故郷とされる架空の小惑星「B 612」と一致することから命名されました。Bはbé「ベ」、6はsix「シス」、12はdouze「ドゥーズ」と読むためだそうです。もはや説明されなければわかりません。

命名のルールに「ペットの名前禁止」とありますが、実は一つだけペットの名前が付けられた小惑星があります。「ミスター・スポック」と呼ばれる小惑星で、発見者の飼い猫にちなんで名づけられました。ちなみにこの飼い猫の名前は、テレビドラマ「宇宙大作戦」に登場する宇宙船エンタープライズの副長である「スポック」から名付けられたそうですので、架空作品の人物ということで強ち例外でもないような気がします。
しかし、このネーミングが物議を醸し、以降は禁止となってしまいました。
もし、そのまま禁止となっていなければ、日本人の発見した小惑星はペットに多い食べ物の名前ばかりになったかもしれません。

・特異小惑星

小惑星の中には小惑星帯以外に存在するものもあります。
先ほどお話ししたトロヤ群もそのひとつです。
それ以外に、一般的な軌道から著しく逸脱した小惑星が発見されています。1898年に発見された「エロス」は楕円軌道となっており、地球まで約2230万kmまで接近することもあります。
1932年にはアモール、アポロという地球に接近する小惑星が発見されました。特にアポロは金星の内側から火星の外側という軌道を描いていました。地球に最接近した時には約1140万kmまで接近しました。天文単位で言うと0.076天文単位です。なんとなくかなり近いことが想像できるのではないでしょうか。
以後、このタイプの小惑星を「地球近傍小惑星」「アポロ型小惑星」と呼んでいます。
小惑星探査機はやぶさの着陸で注目された小惑星「イトカワ」(トップ画像)や、はやぶさ2の目標小惑星「リュウグウ」はこのアポロ型小惑星に分類されます。

・まとめ

一番小さい天体でありながら、過去最長となってしまいました。これでもかなり端折っているのでそのままお話したら3~4倍の量にはなりそうな気がします。

では小惑星についてまとめます。
小惑星とは他の天体に比べるとごくごく小さくて不定形な天体だが数は膨大に存在。ほとんどは火星と木星の間に存在してるが、たまに惑星の軌道周辺にいたり、大きく楕円軌道を取ったりしていたりする。

それでは今回はここまで。次回は衛星についてお話していきます。
それではまた来週お会いしましょう。

ここまでご覧いただきありがとうございます。
ぜひ次回もよろしくお願いします。

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