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ちぇりと食べ物:ベトナムのお豆腐デザート

食べ物についての記録&コラボ企画

ツイッターでフォローさせてもらってる方に、 #ベトナムあれこれ  というタグで、ベトナムの逐一のアイテムや文化についてツイートをされている方がいます。

ベトナムのことであればジャンルは問わない内容ですが、食べ物についてのこともあって、勉強させてもらうこともしばしば。

で、そのタグの、特に食べ物について書いているものを見つけた時に、ついつい絡みたくなるんですよね。「そうなのそうなの!」とか「えーっ、これはこうだと思ってた!」とかって。私よりもずっとローカル事情に近い目線で教えてくださるので、新しいことをいっぱい教えてもらえるんです。

私だけではとても及ばない知識だったり、触発してくれたりする内容についてのやりとりを、Twitterの中に埋もれさせておくのも勿体無いなと思ったので、ご了解を得て、noteに記録させてもらうことにしました。

こんなものもあるんですよ、これにはこんな素敵なことも込められてるんですよと言うのを知ってもらえたら嬉しいなと言う気持ちを込めて。


 #ベトナムあれこれ お豆腐編

元は多分中華系かなと思うのですが、ベトナムの人、特に女性は豆乳をよく飲みます。豆腐も食べます。そして豆乳を使ったデザートやおやつも、よく食べます。

道端や市場で売ってる豆乳、ほんっとに美味しいんですよ。お豆腐もしかり。原料をふんだんに使ってるのか味が濃い。

その中でもスイーツとして親しまれているお豆腐のデザート。街には小綺麗な豆腐デザート専門店も展開されるほどの人気ぶり。

でも、元々は道端や市場で売られている庶民のおやつでもあるんです。


天秤で売り歩く素朴なおやつ

どんな風に売られてるかと言うと、お店にもよるけどこんな感じ。

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大きな蓋つきの寸胴鍋のようなものにたっぷりな量が作られてる。10kとか20Kドン、50円〜100円くらいのささやかなおやつ。

その価格もベトナムならではなんですが、注文をして、容器によそってくれるその時に、とてもベトナムらしさが溢れてるなーって思うんです。


よそい方で作る美味しさ

注文をすると、売り子さんは、まだホカホカと暖かい豆腐が入った大きな容器の蓋を開けて、大抵の場合はなるべくコストのかからないペコペコの薄っぺらいコップのような容器に入れてくれるんですが…

この容器にタポッと一気に入れたりはしない。
薄い素材で作られた、大きなレンゲのような器具を、豆腐の表面に滑らせるようにして薄く薄く、削ぐように掬う。それをチマチマ容器に移しては、また薄く削ぐ。

大きく掬えば、2〜3回で済むんじゃないかと思われる量を、5回、6回、なんならもっと何度も重ねて、少しずつ少しずつ容器に移す。

なぜ、そんなことをするか。

このお豆腐のデザートには、シロップをかけて食べることが多いです。特に生姜の風味が効いたシロップ。お豆腐自体には甘みもさしてついていないので、このシロップで甘いデザートになると言うわけ。

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で、そのシロップを注ぐ時。
もし、お豆腐がタポンタポンと大きく雑によそわれてたら、シロップはその表面を撫でて下に落ちていくのみ。

でも薄く薄く削がれるようによそわれていたら、一層一層の間に隙間ができる。その隙間にシロップが入り込む。容器の中のお豆腐の全体に、細い筋のように甘いシロップが行き渡るんです。

ぐちゃぐちゃと、お豆腐をとシロップを混ぜて食べても味はそんなに変わらないかもしれません。でも、こうすることで生まれる美味しさも確実にあると思うのです。


食べ物への愛情

私がベトナム料理っていいなと思う理由の一つは、その愛情。料理に限らず、愛があるからできること、かけられる手間ってあるじゃないですか。それをベトナム料理の随所にいくつも感じるんです。

このお豆腐のよそい方も、きっとそんな愛情の一つじゃないかなぁと。5秒で済む手間を倍の時間、もしくはそれ以上をかけて丁寧にこなす。たった、と言う言い方は失礼かもしれませんが、50円、100円の商品に対しても。

より美味しいおやつに仕上げられるように。
買った人が、より美味しく食べられるように。

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そして多分、この手間を彼らは特別なものとは思っていない。他の料理や、その下ごしらえにも見られることだけど、多分その手間は、彼らにとって当たり前のこと。

食材選びからしても、ある心に決めた素材が手に入らないと、もうその日はその料理はしない、なんて頑固な一面を見ることが。理由は「それがないと美味しくないから」。私からすると「別に他のもので代用できるんじゃない?」と思えるものでもガンとして譲らない。

たまにローカルの方と一緒に料理をした時に、その手間のかけ方、こだわりに「わぁ大変!」と感想を漏らすと、大抵「だってこうする方が美味しいよ?」と返ってくる。それはもう事も無げに。

私から言われたなかろうけれど、この人たちは、根っから美味しいものが好きなんだなぁ、と、よく感じます。よっぽど食いしん坊なんだろうなと。

そしてそんな手間もこだわりも、彼らにとてはそんなに深刻なことではなくて、きっと極々当たり前のこと、日常で、自然にやってしまえること。全く天晴れな食いしん坊ぶり。

と言うわけで、お豆腐を買うたった数分のやり取りに、思わずニコニコしてしまうのです。たった100円のホカホカの幸せ。道端のなごみの場面。


え、あれってそう言う意味だったの?

ちなみに上記のようなやり取りをしたのちに、

「え、あれって入れすぎないようにキッチリ量を制限してるからあのよそい方をしているんだと思ってた」

と言う意見ももらって、おおっそう言う見方もできるか!と思った次第で、本当のところはわかりません(笑)

ただ私が思った受け取り方も、間違ってはいないと思うし、悪い風に受け取ってるわけじゃないから自分の中ではそれでいっか、と思ってます。

ほの甘くて優しいおやつ。
もし道端で見かけたら、「ああ、あの話はあれのことかぁ」と思い出してもらえたら嬉しいです。

2020年5月8日
ちぇり


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