【エッセイ】2022年12月34日

人生の分岐点に毎日立っているような1年だった。
本当に疲れた。
一挙手一投足、一瞬の選択が今後の人生を左右する気がして、それが自分を大胆にもしてくれたし、萎縮もさせた。
去年まで一緒にフーテンしていた連中は軒並み就職し、いよいよフーテン組は俺一人になった。
結婚した友達も格段に増えた。
暇さえあれば焦っていた。
焦る暇を与えないようにパソコンへと向かった。
「こんなことしてていいのか?」と、毎秒耳元で悪魔が囁いていた。
天使はずっとベッドに引きこもっていた。
諦めないことしかやることがなかった。
今年は舞台を2本、小説を2本、合間でエッセイを数十本書いた。
その程度だった。
とにかく創作の回転数を上げて、前へ前へ進もうとする自分と、
納得いかないものを出したくないという夢想家の自分が喧嘩して、その仲裁に時間を取られる。
そんな1年だった。

全ての選択が間違っていたように思える。
ある仕事が舞い込んだ時、納期とこだわりを天秤にかけ、後者を取ってしまった。
そのことが向こうの逆鱗に触れ、首を切られた。
親しい人間が俺のためにと振ってくれた仕事だったので、その恩すら仇で返してしまった。
せっかくのチャンスが舞い込んでも、一瞬の選択を誤って、全てを水の泡にしてしまう。
であるならば、来たるチャンスのために鍛錬を積むことも全て無駄な所業だ。
いよいよ死んでしまおうかと思った。
だが逆に、どうせ死ぬことがゴールならもうどうなってもいいと思った。

人間に唯一残された平等。それが死だ。
どれだけ成功した人間も、終わっている人間も、いつかは等しく死ぬ。
成功ではなく、死ぬことがゴールなら、そこまでの道のりなんて大した問題ではない。
「自分がどうあるべきだ」なんて思想に縛られる必要はない。
スタンスは天国に持って行けないからだ。
自分を抑えつけているブレーキを全て取っ払って、徹底的に自分を破壊しようと決めた。
どれだけ納得いかないことも、全て飲み込んでやろうと決めた。

「好きなことをやってるだけえらいよ」と誰かが言う。
「本当に好きじゃないとやっていけないよ」と誰かが言う。
そんなこと別にどうだっていい。
俺は書くということが大嫌いで、生きがいだ。
だから続ける。
それ以上でも以下でもない。
この文章を何年後かに読み返して顔から血が出るほど恥ずかしい思いをしたとしても、別に関係ない。
俺はどこまでいってもそういう人間だ。
認められないお前が悪いんだ。
さっさと鎧を捨てて投降しろ。
鎧を纏った人間に、誰も歩み寄ってくれはしないのだよ。

とか言いつつ、たぶんまた些細なことでくよくよ悩む。
今も悩んでいる。
簡単に開き直れはしないし、人間はそう簡単に変わらない。
だがそれでいい。
悩む自分を肯定することが、幸せな死への第一歩だ。
では皆さん、くれぐれも良いお年を。


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