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好きな問題の紹介 (AMC2022 Day3)

この記事は、 AMC2022 (Advent Math Calendar2022)の3日目の記事です。2日目はおじゃめしさんでした。4日目はmaccha_of_macchaさんです。

はじめに

はじめまして、MMと申します。
普段は会社員をやりつつ、OnlineMathContest(以下、OMCと略記)やAtCoderなどで競技数学・競技プログラミングを細々と楽しんでいます。(OMCのレートは青です。「好きこそ物の上手なれ」はまだまだ遠い……)

Twitter以外でほとんど情報発信をしていないのですが、OMC+それに携わる方々(+ついでに私)のことを多数の人にご紹介できる折角の機会ですので筆を執った次第です。(AMC主催の仮の人さん、ありがとうございます!) 

本記事では、好きな問題2問とそれにまつわるエピソードをご紹介します。最後までお楽しみ頂ければ幸いです。


1問目:OMCと出逢うきっかけの1問

問題

△ABCにおいて、∠Aの二等分線と辺BCの交点をDとする。△ABCの3辺の長さの和が1のとき、△ABDと△ACDの面積の差の最大値を求めよ。

出典:東京出版「大学への数学」2020年6月号・学力コンテスト5番 出題:とりゐさん

コロナ禍真っ盛りの2020年、私は医学部の再受験に向け勉強していました。当時最も大きな課題だった科目である数学の勉強に関連した息抜きとして、学力コンテスト(Yahoo!ニュースの紹介記事はこちら)をしておりました。
そこで出逢ったのが上記の1問です。入試問題にありそうな見た目ながら、解き始めた時からワクワクが止まらなかったことをよく覚えています。

発想+指針

  • 与えられた「周の長さ一定」「角の二等分線」を活用したいので、各辺の長さを文字で置けば、高々2変数関数になるはず→AB = x, AC = yとおこう

  • 「xとyの交換」が「点Bと点Cの交換」に対応し、交換前後で面積の差は変わらないので、最大値を表す関数はxとyの対称式になる。ゆえに、受験数学定番の基本対称式(u = x+y, v = xy)での置き換えも選択肢に入りそう

  • 「三角形の面積の差を二変数関数で表す」→「文字の変域を調べる」→「文字を片方ずつ動かして最大値を出す」の3ステップで答えが出そう!

解答例

答案作成時には、流れを追いやすい答案作りに心を砕きました(※12/3 15:30に修正しました)

余談

本問と出逢うちょうど1ヶ月前、Twitterの勉強アカウントを開設しました。学コン仲間・再受験仲間との情報交換が目的だったのですが、それを通じて出題者のとりゐさんやOMCを知り、今に至っています。2021年の頭に転職が決まり(結局医学部には進学せず……)、その年の3月にOMCを始めました。ほぼ毎回楽しく参加しております。新しいつながりもたくさん出来ました。当時の志望校をユーザー名に入れてしまったことは今でも後悔しています。


2問目:OMCで一番楽しく解けた1問

問題

出典:OMC128-F(OMCへのリンクはこちら) 出題:ぽもどーろさん

10月下旬に出題された図形(初等幾何)の問題から1問。大学受験数学では図形問題を解くにあたって座標・ベクトル・三角関数・複素数などのツールを駆使することを要求される場面が多いです。それも関係してか、大学受験経験者の中には、OMCの問題で初等幾何の考察を不得手とされる方が一定数いらっしゃり、文字や座標を必要以上に置いてしまい計算量が膨らむ解法をとってしまいます。かくいう私も、幾何の問題でむやみやたらに座標計算へ走って時間を浪費したり、幾何でつまずいたことが原因でコンテストの成績が伸び悩んだり、幾何の問題の解説に馴染みのない知識が断りなく登場するのを見てうなだれたりしたことが何度もあります。そんな私が珍しく(?)最低限の計算量で解けた幾何の問題がこちらです。OMCを始めてから1年半抱いてきた幾何への苦手意識が、ほんの少し払拭できたことを実感できて、本当に嬉しかったことを今でもよく覚えています。

発想+指針

  • 正弦定理からBC=2Rsin60°=√3R(R:外接円半径)なので、外接円半径を求めたい。第2式のd(O,BC)の部分がRのみの式で表せることに気付き(図1)、ここを文字で置く方針をほぼ確信するも、第1式の扱いに困る

  • そういえば、三角形ABCの垂心H・外心OについてAH = 2 OMが成り立つ(ただしMはBCの中点)という有名事実を数ヶ月前に偶然知った

  • 与えられた2式と上記の定理を用いれば、頂点から対辺に下ろした垂線の長さをRと数文字(ここでは∠Bと∠Cを採用)で表せるので、解けそう!

解答例

コンテスト中に幾何の問題を「座標をおかず、手が止まらず、方針を迷走せず、計算ミスせずに」正解できたのは初めてでした

余談

上記の問題は幾何をまともに(?)解けた私の中では数少ない一例でして、元々は座標や文字を設定し煩雑な計算をすることをためらわない、いわゆる「体育会系数学部」の一員です。そんな私も相似とangle chase(初等幾何の諸定理を駆使した角度計算)の2つに絞って勉強して、幾何の実力を少しだけマシにできました。本記事の趣旨からは外れますが、同じような悩みをお持ちの方の助けに少しでもなれば幸いです。

ところで、本問の出題者:ぽもどーろさんは、幾何の良問をここ最近は特に大量生産しています。特に初等幾何は、私は解くのが精一杯(解けないことさえ多い)なのに作れるだなんて……そんなんできひんやん普通

あとがき

社会人同士の雑談にて、よく「この歳になって○○の楽しさに目覚めた」「学生時代は○○の勉強が嫌いだったけれど、大人になって試験から解放されると楽しいと思えるようになった」などという話をよく口にしたり耳にしたりします。「○○」には「語学」「歴史」が入ることが多いですが、「数学」が入っても良いのにと個人的に思っています。末筆ながら、OMCをはじめとする各種コンテンツが、今後ますます発展し、年齢(とか)に関係なく多くの人が競技数学へ参加するきっかけになることを心より願っております。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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