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アマガエルセラピー 11

鳴き始めと衣替え

 春に生まれたチビたちがすくすくと育ち、夏の終わりには一人前になります。成長の記録を追った写真を見返し、こんなにちっちゃかったのに立派なカエルになったもんだと、食事の世話をしながら毎日見守っている私は、なんだか育ての親にでもなったような気分でうれしくなります。

 大人になった証として、オスはあごの下にある鳴き袋を風船のようにふくらませて鳴き始めます。最初はか細い声で、いかにも自信なさげですが、練習を重ねるうちに、夜中に起こされることもあるくらい、けたたましい声を出すようになります。1匹が鳴くと釣られて鳴き始めたり、深夜にカエルの合唱でもされた折には、近所迷惑にならないか心配するほどです。

 性別がはっきりするこの時期くらいから、オスメス関係なく、衣替えのように体色を変える子が決まって何匹か出てきます。黄緑色からベージュや茶色に変わりますが、マンションの壁の色に合わせて白っぽくなる場合もあります。全身一色になる子もいれば、黄緑色を所々残したままだったり、一見トカゲっぽい柄模様を浮かび上がらせたり、個体差が大きいです。正直、写真映え的には黄緑色のままでいて欲しいのですが、こればかりは仕方ありません。

 不思議なことに、みんながみんな衣替えするわけではなく、冬眠までずっと黄緑色のままの子もいます。変わる子と変わらない子の違いは、まだ納得のいく答えは見つかっていませんが、保護色に敏感かどうかの違いはある気がします。ベージュになって久しぶりに帰ってきた子が、緑の葉っぱの上で過ごすうちに似た色に戻ったりしますから。

 とはいえ、常緑のカポックに住み着いているのに目立つ色に変化したり、保護色だけの問題ではないようです。自由気ままなカエルのことですから、けっこう場当たり的に色を変えているのかもしれません。

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