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アマガエルセラピー 15

いい子でお留守番

 パンデミックもようやく落ち着き、ワクチン接種から逃げていた私も、3年ぶりに夏のバカンスに行けることになりました。妻の夏休みに合わせて年に一度、不自由な日本から脱出して英気を養うのが夫婦の一番の楽しみです。ただし1週間も家を空けることになるため、やはりカエルたちのことが気がかりなのは言うまでもありません。

 餌をもらえなくなるのは、餌付けに慣れたカエルには一大事です。できるだけのことをやっておきます。水が蒸発しても問題ないように水場の数を増やしておく。羽虫を集めるライトの自動点灯タイマーを確認しておく。帰ってきたら孵化しているようにサシを仕込んでおく。出発直前に餌をしこたまあげておく。いい子でお留守番しているんだよと、ちゃんといい聞かせる。それでも、半分くらいはいなくなってしまいます。

 しかもよく懐いていて、残ってもらいたい子ほどいなくなるのが顕著な傾向です。カメラを構えたこのヒトの関心を惹けば惹くだけお腹がふくらむことをすぐに覚えたお利口さんなので、頭の切り替えも早く、餌がもらえなくなったと判断すれば、同じライトに群がるライバルの多いベランダには早々に見切りをつけ、新たな餌場を探しに移動するのが賢明な選択なのでしょう。

 今回も一番かわいがっていた子とは永遠の別れとなり、最後に撮った写真を泣きべそ顔で見る羽目になりました。全体では9匹から4匹に減りましたが、そのうちの2匹が帰宅してカーテンを開けると、窓際に行儀よく並んでいて、あーあ、やっと帰ってきてくれたよといった、うれしげな表情で出迎えてくれたのには、妻と顔を見合わせて大感激。旅の疲れが一気に吹き飛びました。

 翌朝には帰宅の噂を聞きつけたさらに2匹がどこからか現れ、計6匹となりました。予想よりも上々の出来で、どうやらいい子でお留守番ができたようです。

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