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ロシアを利するような停戦ではなく、ロシア軍のウクライナからの撤退を!

5月19日から21日まで広島市でG7首脳会議(サミット)が開催されます。参加するG7首脳にロシアとウクライナの停戦交渉仲裁を求める声明が、4月5日に歴史学者の和田春樹さんや東京外国語大名誉教授の伊勢崎賢治さん、ジャーナリストの田原総一朗さんらの学者・ジャーナリストの有志32人が連名で出されました。同声明への賛同を募りオンラインでの署名や、意見広告のためのクラウドファンディングなども行われています。昨年も歴史学者などが同様にロシア軍とウクライナ軍の即時停戦を求め、日本・中国・インド三国の政府に公正な仲裁者となるよう要請する声明が発表されています。

言うまでもなく私も一刻も早くウクライナに平和が戻ることを願っています。そしてこれ以上ウクライナの人々にもロシア兵にも犠牲者が出ないことも強く願います。しかしながら、プーチン大統領は未だに侵攻をやめる気はまったくなく、ウクライナの人々への数限りない戦争犯罪に対する何らの反省もありません。現時点でプーチン大統領のロシア相手に仮に一時的な停戦が成立しても、平和に向かうことも、ウクライナの人々のいのちを守ることにもつながるとは思えません。しかもロシア・ウクライナ双方に妥協を促して停戦させるということは、侵略を受けているウクライナ側に大きな譲歩を強いることになり、一方侵略者であるロシア側にはウクライナの占領地を認めることになります。声明は、戦争継続によるこれ以上の犠牲を案じるなど耳障りのいい言葉を並べ、一見正論を装いながらも、ウクライナの人々の必死の抵抗を否定し、結果的にロシア側を利することになりかねません。

そもそもこの戦争は、ウクライナの政権をネオナチだと一方的に断じ、東部のロシア語話者を救うという偽りの名目を掲げたプーチン大統領の身勝手な命令により、ロシア軍がウクライナに侵攻したことで始まりました。これは明らかな国際法と国連憲章に違反する軍事侵略です。この戦争はロシア軍が撤退すれば終わります。停戦の要請ではなく、ロシア軍の撤退こそを求めるべきです。

1999年に始まった第2次チェチェン戦争でも明らかなように、ロシアとの停戦は決して「平和」を意味しません。ロシア軍は2年余りの停戦を破り、チェチェンに非人道的な無差別攻撃とあらゆる残虐行為を行いました。その結果チェチェンはロシア軍により完全に破壊され、人口100万人の内約20万人近くが殺されてしまいました。その第2次チェチェン戦争を始めたのは当時のプーチン首相であり、モスクワの連続アパート爆破事件という自国の市民を犠牲にした謀略的なテロ事件を起こしながら、その責任をチェチェン人に負わせ、停戦を破り攻撃を行いました。その後チェチェンは現在に至るまでロシアの傀儡政権による暴力にまみれた恐怖政治が続き、自由も人権も奪われてきました。

ウクライナにおいてもブチャなどロシア軍の占領下にあった地域では、拷問・レイプ・虐殺などの戦争犯罪が相次ぎました。ロシア軍が撤退しない限りこれらの非人道的な戦争犯罪は終わりません。とにかく停戦さえすれば平和が訪れるというのは幻想に過ぎません。

しかも何より当事者であるウクライナ側は、現時点では停戦を拒み徹底抗戦を選択しています。それはウクライナの政権や軍だけではなく、ウクライナの人々の多くが支持していることでもあります。当事者の意思を無視するべきではないと思います。ウクライナ側は現在反転攻勢に向けて準備中であり、その最中での停戦呼びかけはあまりに当事者をないがしろにした、一方的な思い込みでしかありません。

国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアのこれ以上のウクライナ侵略をやめさせるのは、国際社会と国連の責任です。この戦争を止めるために国際社会と国連はウクライナへの支援を含む、あらゆる手立てを行うべきです。

チェチェン連絡会議代表 青山 正

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