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フランス映画名門学校La Fémisの筆記試験の過去問まとめ

こんばんは、チェ・ブンブンです。
先日、ユニークなドキュメンタリーを観ました。

クレール・シモン監督の『LE CONCOURSです。この作品は、フランスの名門映画学校《La Fémis》の入学試験を追ったドキュメンタリーです。《La Fémis》に入学した暁には、映画業界への切符が約束されており、卒業生には『去年マリエンバートで』のアラン・レネ、『そして僕は恋をする』のアルノー・デプレシャン、『2重螺旋の恋人』のフランソワ・オゾンがいます。そしてあのジャン=リュック・ゴダールが落第したことでも有名な学校です。そのドキュメンタリーで描かれる一次試験の筆記試験が非常に興味深い。大ホールにすし詰となり、映画の一部を観せられる。このドキュメンタリーが撮影された時は、黒沢清の『贖罪』の結婚式の場面を観せられ、"Le rite. Outil. Invisible.(儀式、ツール、見えないもの)"について3時間かけて論述する試験が映し出されていました。フランスの試験は、日本とは大きく違い、記述式が多い。それこそ、センター試験に当たるバカロレアでは数学の試験であっても論述が求められる。フランスは、いかに自分の考えを論理的に語れるかが重要視されているのです。

この試験について気になったので、学校のWebサイトを調べたら1986から今年までの過去問が公開されていました。2016年から制度が変わり、欧州圏の学生(le concours général)とそれ以外の学生(le concours international)で課題映画が振り分けられるようになったのですが、それでも伝統的に映画を観て、三つの要素を結びつける論述試験となっています。

今回は、その過去問10年分を翻訳して並べていきます。

『LE CONCOURS』の映画レビューは『チェ・ブンブンのティーマ』にて

2022年度 


テーマ:急上昇、繋がり、分岐
対象映画(一般):トゥキ・ブゥキ / ハイエナの旅(ジブリル・ジオップ・マンベティ)
対象映画(インターナショナル):ラストナイト・イン・ソーホー(エドガー・ライト)

2021年度 


テーマ:配備、流行、勇気
対象映画:公衆衛生の不良のため中止


2020年度 


テーマ:空、瞬間、椅子
対象映画(一般):アウト・オブ・ブルー(デニス・ホッパー)
対象映画(インターナショナル):たぶん悪魔が(ロベール・ブレッソン)

2019年度 

テーマ:規則、変幻、起源
対象映画(一般):スウィート・スウィートバック(メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ)
対象映画(インターナショナル):ブレードランナー 2049(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)

2018年度 


テーマ:食欲、ネットワーク、繰り返し
対象映画(一般):Travolta et moi(Patricia Mazuy)
対象映画(インターナショナル):カジノ(マーティン・スコセッシ)

2017年度 


テーマ:カーテン、約束、ほほえみ
対象映画(一般):大いなる神秘 王城の掟(フリッツ・ラング)
対象映画(インターナショナル):ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダーソン)

2016年度 


テーマ:試練、光沢、継承
対象映画(一般):スタンダール・シンドローム(ダリオ・アルジェント)
対象映画(インターナショナル):マタドール〈闘牛士〉 炎のレクイエム(ペドロ・アルモドバル)

2015年度 


テーマ:隠れ家、発端、選別
対象映画:早春(イエジー・スコリモフスキ)

2014年度

 
テーマ:儀式、ツール、見えないもの
対象映画:贖罪(黒沢清)

2013年度 


テーマ:組織、習慣、壁
対象映画:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(セルジオ・レオーネ)

2012年度 


テーマ:遊戯、予想、痕
対象映画:裸足の伯爵夫人(ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ)

2011年度 


テーマ:窓、何時も、エピソード
対象映画:さすらいの女神たち(マチュー・アマルリック)

2010年度 


テーマ:注意、ベッド、かけら
対象映画:デカローグ<第6話 ある愛に関する物語>(クシシュトフ・キェシロフスキ)

2009年度 


テーマ:恒常性、木、順位
対象映画:ヒストリー・オブ・バイオレンス(クシシュトフ・キェシロフスキ)

・最後に

いかにもフランスらしい、自由度の高い試験ですね。2010年度の『デカローグ<第6話 ある愛に関する物語>』のテーマのように、パッとシーンが浮かぶものもあれば、2017年度の「Le rideau. La promesse. Le sourire.(カーテン、約束、ほほえみ)」というテーマからは全然『ムーンライズ・キングダム』の情景が浮かばなかったりします。自由度が高い分、論述には圧倒的個人が見えてきます。1000人近い受験生の論述を読み通し、合否を判定する試験官の強靭な精神を思うと驚くばかりです。もっと昔のお題に興味を持ちましたら、《La Fémis》のANNALES DES CONCOURSというページを訪れてみてはいかがでしょうか?


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