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名取さな「だじゃれくりえぃしょん」MV感想

おはようございます、チェ・ブンブンです。

10/9(日)にVTuber名取さなさんの新作MV「だじゃれくりえぃしょん」が発表された。この楽曲は、RPGゲーム「MOTHER2」で設定する必殺技名を「PKダジャレ」にしてしまうほどダジャレ好きな彼女が、ひたすらダジャレを繰り出す楽曲である。すでに、「名取爆誕」のライブ特別映像がMVの役割を担っていたのだが、今回正式に制作されたので感想を書いていく。

なお、MVを観てから読まれることを推奨する。

ダジャレの本質とテクニカルトークの世界がくっついた

ところで、ダジャレとはなんだろうか?ダジャレとは、普段交わることのない言葉をつなげて新しい世界や視点を見出す活動だと思っている。例えば、私が以前、考案したダジャレに「サメ映画?サメテガル」というものがある。これはフランス語において「どうでもいい」を意味するサメテガル(=ça m'est égal)とサメ映画をつなげることで、サメ映画に興味のないシネフィル像というものを表象している。

「だじゃれくりえぃしょん」でいえば、「ぼうしを蹴ったら ハットトリック」というダジャレが披露される。これは、ぼうしを蹴った時に、思わぬ方向に飛んでしまう様子をハットと掛けてハットトリックにつなげる。「さっさとトイレに行っといれ」「イルカはいるか?」みたいなベタで寒いダジャレの影からこのような高度な視点を挿入していくところが本楽曲の面白さである。

さて、名取さなさんに注目すると、彼女の雑談配信は無軌道曲芸となっている。RTA in Japanの話をしていたかと思うと、おジャ魔女ゲイツのゲイツがビル・ゲイツの幼少期だと勘違いしていた話を始め、気がつけば高解像度なハリー・ポッターソシャゲについて妄想を膨らませている。様々なジャンルの話をテクニカルに紡いでいくのだ。

これはまさしく、ダジャレの持つ異なるジャンルの言葉を手繰り寄せて世界を生み出す活動と共通している。そのため、このミュージックビデオもあらゆる質感や文化をねじ込んだキメラとなっているのだ。

ネタ、ネタ、ネタの回転寿司

太鼓の達人のパロディ

MVを見ていると、回転寿司のようにネタが流れてくる。例えば、太鼓の達人を模した画が飛び出してきて、「ドン」、「カッ」の譜面に歌詞を注ぎ込んでいる。

「お前を消す方法」のネットミームでお馴染みカイル君とおぼしき存在

また、「イルカはいるか?」と歌われる場面ではインターネット世界で最も有名な「カイル君」とおぼしき存在が「呼んだ?」と現れる。

レースに乱入する「トイレニー=イトゥイーレン」

時には、斬新なネタ画が飛び出すこともある。「トイレに行っといれ」と歌う場面では、レース画面が展開され、そこに爆速で駆け抜けてくる「トイレニー=イトゥイーレン」が映し出される。このように、4分の中にネタが過剰積載されており、観れば観るほど旨味が染み出してくるMVとなっている。

質感の変容

デフォルメされた名取さな
3Dで現れる名取さな

「だじゃれくりえぃしょん」では2Dからデフォルメされた姿、3Dと様々なフォルムの名取さなが現れ、踊り狂っている。ネタの回転寿司と絡むことで、彼女の雑談における無軌道な混沌が再現されているといえる。

また、彼女の世界はまるで細田守映画のように、狭い空間から壮大な世界が生み出される。部屋の中から世界に飛び出せる様子はすでに「モンダイナイトリッパー!」のMVで表現されていたが、本作では王国からカオスな世界が生み出されるものとなっている。カオスな世界を表現するために、彼女の肉体も姿形変えて現れているのである。このギミックにより、一貫して彼女の世界観が紡がれているといえよう。

映画パロディを検証してみた

映画ライターとして全部わかるかと思ったが、意外と特定できなかった…

MVの途中でTSUTAYAを彷彿させる場面が現れる。せっかく映画ライターやっているのだから全部特定してみようとしたのだが、これが意外と難しかった。6本は分かったので元ネタを紐付けた図を作ってみた。

【特定した映画作品】

『ゴッド・ファーザー(1972)』
『ゴーストバスターズ(1984)』
『ジョーズ(1975)』
『シャイニング(1980)』
『マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009)』
『ホーム・アローン(1990)』

【特定できなかった映画作品】

(左上)被写体の胴体から『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』みたいな眺めのタイトルが差し込まれている印象を受ける。意外と、お仕事系なのかなと『ナースのお仕事』や『ハッピー・フライト』のポスターを調べてみたのだが、類似性を感じない。中央に人がドンと構えている系に何があるだろうと『キューティ・ブロンド』を調べてみたが、これも違う。なんだろう?

(右上)フォントの形が『20世紀少年』っぽい作品。ただ、画をみると廊下から銃か武器をしょった存在が映し出されている。意外とデヴィッド・フィンチャー系かと思ったがこれも違うようだ。

(左下)ピクサーあるいはイルミケーション系だとは思うのだが、探してみても類似の画が出てこなかった。これは特定簡単だと思っていただけに無念である。

(右下)右に縦で文字が刻まれているタイプの作品。洋画だとあまりみないタイプの構図なので日本のアニメかなと思い、ふと『劇場版 少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト』を思い浮かべたが全然違った。

ということで、しばらくは「だじゃれくりえぃしょん」をヘビロテしながら映画記事をアップしていこうと思います。


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