イエス・イキリストが蠅の王になるまで。
ライオンは寝ている、いや死んでいるのだろうか?
彼らには危機管理の概念がないらしい。ンゴロンゴロだろうか、セレンゲティだろうか、それともトゥルカナ?ボヤけた視界では大地の色彩、血と排泄物、うだるような熱を感じることしかできない。だが、俺には分かる。ここはアフリカであること、そして隣で飛び回る奴はバカだと。
「父ちゃん、お腹すいたよぅ。食事にしよう。」
「なぁ、お前頭いいんだろ。奴が生きているのか、死んでいるのか分かるんだろ?」
俺はやれやれ、と息を吐きこう答える。
「それはシュレディンガーの猫のようなものさ、寝ているだけかも知れないし死んでいるのかも知れない。触るまで分からぬものさ。その強烈なヘモグロビンの匂いは、ライオンの血ではないかもしれない。川の香りがする。カバかも知れないし、水浴びしていた象の匂いかも知れないぞ。」
「なるほど、確かにそりゃあぶねぇな。ではどうやって死を確かめるのだ?」
俺がスノッブなイキり野郎だって?
YES!イキリスト。
俺の名前はイエス・イキリスト。昨日まで人間だった20歳さ。どういうわけか学会で教授の無茶苦茶な論破に苛立っていたら蝿になっていたのさ。交通事故だろうか、幻覚だろうか?そんなのは知らぬ。ただ、俺はどうやら蝿であることその事実だけが存在する。なにが「お前の論理は論理的ではない」だ。俺はいつだって論理的さ。蝿野郎は、肉にしか目がない。頭が悪すぎる。幼稚だ。ここでなら頂点になれるに違いない。1日で背中から生える羽の扱いにはなれた。なんて俺は天才だろうか。
俺は「蝿の王」になってやる!
人間界はクソだった!
巨大を喰って喰って喰いまくる!群れを作って人間どもに復讐してやる!
6日で支配してやる!
「けつを目指せ!吐息を感じろ!吐息を感じたら回り込め!それが奴の尻だ!」
俺らは茶と黒のモザイクに向かって飛びかかった。
【続く】
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