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エッセイ】 社長の永い話とガンダムとおっぱい①

コロナ禍なのに、会議室に100人ぐらいミッチミチに従業員を集めての講習会。
「始めるにあたってまずは社長の挨拶から…」
と言われてマイクをもった社長、かれこれ15分くらいナンカしゃべっている。
普通、長くても2.3分位だろうよ、挨拶って言ったじゃん。


「まいどぉ! ほな頑張ってな」


だって別にいいのに…。
うっすら覚えているのは、『松坂大輔の引退』とか『自宅の畳の張替え』など。
エッセイじゃん!
Noteにでも書けばぁ、と思った。
あぁ…眠い…。


この講習会に参加するために朝の4時30起き。
うつら、うつらとなる意識にムちを打つために、自分の腿をつねる。
それでも眠い。

駄目だぁ…寝ちまいそうだぁ……しょうがない、こうゆう時はなるべく、違う事を考える事にしよう。

うーん…ヨシッ!


ここは宇宙だ!!

けっして会議室ではない。

そして僕が座っているパイプイスと長テーブルはコックピックだ!
何のだって? そりゃもちろん、ガンダムだよ!
そして、僕と同じ長テーブルに座っている隣のおっさんは……えーっと……ジムだ!
量産型のジムだ。 
ほらっ、このおじさんによく似ている『薄らサビている人』がこの部屋に何体もいるだろう。数さえいればいいモビルスーツ。
僕は違う、ガンダムだ!
個性あふれる、高性能のガンダムさっ!

ウィーン…。


右手に持っているボールペンを掴んで引いた。
ガンダムの起動ボタン。


「大気圏突入のこのタイミングなのに10時の方向からザクが3体、靖生君なら出来るわよ」
前席の同僚の後頭部を『セーラさんが映っているモニター』にしてみた。
「そんなぁ…おだてないで下さいよぉ」
あと3年で50歳になる僕が照れる。
カタパルトに足を乗せるイメージで自分の足をパイプイスの脚の上に添える。


さぁ、これから宇宙に放たれてジオン軍と戦うぜ! っていうタイミングで、「本社が定めたコンプライアンスに従事し……」
と、どっかから戦闘に関係のない声が聞こえてきた。
本社って、コンプライアンスっ何? 今、大事な所なんだから邪魔しないで。
「靖生、いきまぁーす」
腰を後ろに倒し、パイプイスの前側を少し浮かした。
コトンと戻した。


―宇宙戦争のクダリは割愛させて頂きます―


ザク2体をやっつけ、なんとか無事に帰還した。
ホームベースのクルーは僕の帰還を拍手で答えてくれた。
「こんなの、おちゃのこさいさいさ」おでこに指をつけ、それを指でピッと弾く格好良いポーズ。
次の出動に備え、僕は控室に戻った。


「地域のお客様のライフラインを支える配送員は……」
うそぉぉ! まだしゃべってたの、社長! マジで!
すげえ頑張って瞑想してたのにぃぃ。

時計は30分を過ぎていた。
こっちは荒野の宇宙を縦横無尽に飛び回っていたのに、なんて小さい世界の事をむにょむにょと言ってんだ、このおじさん。


続く。

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