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「想像力と数百円」

昔、文庫本のキャッチコピーに「想像力と数百円」というのがあり、なかなか上手いコピーを考えたものだと、半ば感動した記憶がある。

昔はインターネットがそんなに主流ではなく、代わりに文庫本が五百円あれば買えた。子どもだった私はお年玉を握りしめて、推理小説から漫画からコバルト文庫まで、色々買い漁っていた。
その「数百円の趣味」は、貧乏旅行にとって変わるまで続いたと思う。

私の旅行好きは、「トラベルミステリー」が作り出したものではないかと、ふと思うことがある。
この「トラベルミステリー」は、高校生の女の子が全国を一人旅して、様々な事件に巻き込まれる話だったりする。

私がそのくらいの年齢の時は、勉強に追われて死んだ魚の目をしていて「トラベルミステリー」所ではなかった。
しかし、もう少し年齢が上がった頃に自分の自由になる時間が出来ると、「トラベル」をしはじめた。最初は日帰りで鎌倉、横浜など。もう少し、自由になるお金が出来ると、函館、札幌。「ミステリー」に遭遇することはなかったが、一人で自由気ままに旅をする楽しさを、「トラベルミステリー」の文庫本と共有できた気がした。

一人旅の影響、という意味では、沢木耕太郎の「深夜特急」も捨てがたい。この本は今でもたまに読み、「ああ、旅っていいなぁ」と思わされる。

主人と結婚して、貧乏旅行を楽しむ機会はなくなってしまったが、「数百円と想像力」でタイムトラベルからトラベルミステリーまで、色々な読書の旅を楽しみ続けたい。

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