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【脳の怖い話】「正義中毒」に侵された美少女

正義中毒・・・自分の考えに反する他人の言動に対して「許せない」「間違った人を罰しなければならない」と過剰な攻撃をすることを当然の正義であるかのように感じている状態のこと。 (脳科学者の中野信子氏が命名)

マサト「あ、そうだ。君、一つだけ約束してくれないか?」

ジュン「何だよ、急に。」

ジュンは驚いた顔で、マサトを見た。

マサト「これからの話、誰にも言わないでくれ。」

マサトの話は、ジュンと同じクラスのリエについてだった。リエは、街で一番の美少女で、その可憐さから皆に愛されていた。しかし、彼女には見えない一面があるというのだ。

マサト「リエは、正義感が強過ぎるんだ。思うだけならいいんだけど、彼女は何かと人を罰したがる。そして、その時の彼女の目は本当に怖い。」

マサトは、幼なじみのリエを心配していた。ジュンは、マサトに、その話をされた翌日にリエの怖い一面を見てしまったのだ。

あるクラスメートが彼女の友達の鞄から小さな財布を盗んだ。それはちょっとした悪戯だったが、リエはその行為に激怒した。彼女の目は怒りに燃え、彼をじっと見つめて言った。

リエ「許せない。君の罪は、必ず罰する。」

その夜、そのクラスメートが何者かに襲われ、重傷を負ったというニュースが流れた。彼の体には「罪人」という文字が刻まれていた。

ジュン「なあ、マサト。これはリエの仕業だと思う?」

マサト「わからない…。でも、彼女は正義を貫くためなら何でもする。彼女は…正義中毒だから。」

それから、街では罪を犯した者が次々と襲われ、罪人という文字を刻まれる事件が続いた。全ての被害者はリエに何かしらの接点がある人間だった。マサトは何とかしてリエを止めようとしたが、リエは彼の言葉を無視し、正義を貫くことに執着した。

リエ「私が正義を貫かなければ、誰がするの?」

人々を傷つける彼女の行為を止めさせるため、ジュンとマサトは彼女との対話を重ねた。しかし、彼女はひたすら自分の正義を語り、話を聞こうとしない。

見方によっては、リエは人々を罰することに異常な喜びを感じているようにも見えた。

リエ「彼らは罪を犯した。だから罰しなければならない。それが正義でしょ。」

リエは2人の言葉を無視。しかし、ジュンとマサトは説得を諦めなかった。リエが正義に溺れていることを彼女の心に何とか届けようと、何度も対話をした。でも、言葉は一方通行で虚しく消えていったのであった。

ある日、リエが再び「罪人」を罰すと言い出したのだ。それは意外にもマサトだった。彼が学校の図書館から本を無断で持ち帰ったという理由だけで。

ジュン「リエ、それはただのミスだよ。マサトは悪気がなかったんだ。」

ジュンは、必死に彼女に訴えかけた。しかし、またしても、ジュンの言葉をリエはスルーした。

リエ「罪は罪。マサトも罰されるべきなのよ。」

ジュンは、マサトを守るために決意した。リエがマサトを罰す前に、ジュン自身が「罪人」となることにしたのだった。そして、ジュンは故意にリエの前で窃盗を行った。リエは驚き、そして、ジュンをじっと見つめた。

リエ「君も…罪人なんだね」

ジュン「そうだ、僕は罪人だ。だから、まずは僕を罰してくれ。」

リエ「君は罪を犯した。だから、罰しなければ…」

ジュン「リエ、それが本当に正義なのか?正義って、人を傷つけることなの?」

リエは黙ってジュンを見つめていた。そして、彼女の瞳から涙がこぼれた。

リエ「私は…私はただ、正しいことをしたかっただけなの」

その時、リエは警察に取り押えられていた。ジュンは、彼女の何とも言えない表情が瞳に焼き付いていた。彼女は連行される前に、最後にジュンを見つめて言った。

リエ「私は間違っていたのかもしれない…。でも、私の心は変わらない。罪を犯す者は罰されるべきだと…」

その後、リエは警察に連行され、罪人たちを襲った罪で訴えられた。そのニュースは街中に広まり、街の皆は驚きと悲しみでいっぱいになった。リエの裁判は長引き、彼女の罪は重いとされた。しかし、彼女は最後まで自分の正義を貫いた。

ジュンとマサトはリエがいなくなった街に残され、彼女のことを思い出すたびに胸が痛んだ。

マサト「ジュン、リエが言ってた正義って、一体何なんだろうな。」

ジュン「それは…人それぞれだと思うよ。リエは自分の信じる道を歩んだ。それが彼女の正義だったんだ。」

マサト「でも、その結果、リエは…」

ジュン「そうだね。でも、リエが間違っていたかどうかは、僕たちにはわからない。大切なのは、自分が何を信じるか、それをどう行動に移すかだと思う。」

二人はリエのことを思いながら、自分たちの正義とは何かを考えていた。そして、彼女のことを忘れることなく、それぞれの道を進むことを決意した。それは、リエが残してくれた大切な教訓だった。

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