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【雑記】雨雲が両親を迂回して、俺に直撃した話

ある日、夜勤終わりの私は決意した。
「沖縄…沖縄に行こう…」

沖縄に行くことを決意した私は一か月後に飛行機の予約を取り2泊3日の沖縄弾丸ツアーを企画した。

当時、職場に入って仕事をだいぶ覚えてきたところで
資金面でも少し余裕が出てきた頃。

私には一定以上のストレスが溜まると、唐突に旅行に行く習性がある。

接客業で、なおかつ人手不足であった私の職場は、新人にも容赦のない量の仕事が降ってきていて、しゃべれるコミュ障である私の ”人付き合いバケツ” は既に溢れ出していた。

その後もルンルンでバケツを溢れさせながらも、
来る沖縄旅行を楽しみに過ごした。

その頃実家住まいだった私は、旅行の数日前に両親がほぼ同日程で宮古島に向かうことを知る。

晴れるといいね、なんて話していると旅行の日になり、私は夜勤終わりにそのままキャリーケースをごろごろと引いて沖縄へと旅立った。

初日はレンタカーを借りて、移動してホテルで休む予定だった。
その日は良く晴れていて、男の中では色白の私は、
日焼けしちゃうかな、とかわくわくしながら車を走らせた。

途中でスパムおにぎりを食べ、さんぴん茶を飲みながらホテルにも無事に着いた。

夜にはステーキを食べ、親にも天気が良くてよかったね、と連絡した。

親は明日以降はお天気が崩れるみたいだから気を付けてね、と返信が来た。

雨雲レーダーを見ると尋常じゃない赤色に表示された塊が迫ってきていた。

もー、勘弁してよね、と母から冗談交じりの連絡が来た。

そう。私は雨男である。
呼んでもいないのに、下手な祈祷師よりも雨が降る。

しかし、母は比較的晴れを引くことが多かったし
残りの二日を雨の中で過ごしたくはなかった。

南から北上してきている雨雲が母を経由する際に
うまいこと消えてください、と祈りながら眠った。

祈ってはいけなかった。
内容はともあれ、雨男が祈った結果、
沖縄には雨が降り注いでいた。

呆然と窓の外を眺めていた私は、
急いでスマホで天気と雨雲レーダーを確認する。

…雨は降っていたが、どうやらまだ本気じゃないらしい。
雨雲が本気を出して近づいてきていた。

今日は…国際通りと、アメリカンビレッジと…半分泣きながらスマホのメモ帳の旅程を確認する。

それにしてもなぜ、外に出る予定ばかり…。
外での予定をなるべく減らし、最初は美ら海水族館に行くことにした。

雨の中車内で出発の準備をしていると母から着信があった。

私が「雨降っちゃったね…やあねえ」と言うと、
「あんたのとこだけよ、こっちは降らなかったわ」と。

…?

もう一度雨雲レーダーを見返す。

…!?

回避していやがる!?

雨雲は両親を素通りしてまっすぐ私に向かってきていた。
母親は電話口で南国の鳥くらい笑い転げていた。

私はそっと電話を切った。

その後も雨は勢いを増して降り注ぎ、
ニュースでは季節外れの記録的大雨と報道された。

車のワイパーは横揺れするほど働き続け、
美ら海水族館は私のように雨を避けた人でごった返していた。

それでも人間環境に順応するもので
国際通りやアメリカンビレッジで大量の買い物をして、それなりにハッピーに帰ることができた。

ちなみに、私の沖縄での雨男伝説は一か月家族の語り草になり、その少し残念な天気運の悪さは現在も続いている。

関東の方はわかるでしょうがリアルに今も。


3月8日深夜0時ごろ著

雨は嫌いじゃないけれど、正直勘弁してほしいなと感じて書きました。
皆様お付き合いありがとう。


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