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【災害の記憶】2019年10月台風19号の高尾付近を歩く

令和元年(2019年)台風19号は、日本各地に大きな被害を起こした台風として知られています。わが町、八王子市も大きな被害を受けました。2年前の台風被害の9日後に高尾付近を歩いた際の記録を記したいと思います。

【台風直撃時の様子】
2019年10月12日、日本列島を台風19号が通過し、各地に大きな爪痕を残しました。東京都に大雨特別警報が発令され、八王子市内でも、上恩方で24時間雨量が600mmを越えるなど、記録的な雨量が観測されました。グラフは八王子市の記録資料(下記リンク参照)から抜粋していますが、上恩方では、時間雨量にして40mm程度の土砂降りが半日以上降り続くという、すさまじい大雨でした。

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(八王子市の台風の記録資料)
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/emergency/bousai/m12873/006/p026341_d/fil/2019taifu19_kiroku.pdf

当時の八王子市の被害状況や、その際の対応状況などについては、上記の八王子市のサイトを見るとよくわかります。八王子市でも、恩方地区や高尾駅付近の浅川周辺で大きな被害が発生しました。下記はその当時のTwitterで高尾駅周辺の南浅川が氾濫している状況の動画です。国道20号が川のようになり、濁流が勢いよく流れています。

動画から見ると、Googleマップで上の投稿の場所を見てみると、ちょうど下のような場所になり、高尾駅のすぐ近くの国道沿いであることがわかります。この国道がまるで川のように濁流が流下していたということは、上流(下記地図左側)の南浅川が溢れていたということなのでしょう。
そういうことを頭に入れながら、災害発生後9日が経過した現地を歩いた結果を見たいと思います。

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【被災箇所付近を歩く(2019年10月21日)】
まず、歩く際のスタート地点は、高尾駅の南側のショッピングセンター「イーアス高尾」。この付近は浸水被害等は出ておらず、通常通りの週末の夕方の賑わいを見せていました。

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町田街道とJR中央線との立体交差地点。このあたりも特に浸水した形跡はありませんでした。

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町田街道と甲州街道の交差点。このあたりはあたり一面が泥だらけで、浸水があったことを物語っています。

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車道は重点的に清掃して車を通したのでしょうか。歩道にはまだたくさんの泥が堆積していました。

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浅川を渡る橋のほうを見たところ。右折レーンが泥だらけです。浅川からあふれた水が、側道からも供給されて水たまりができていたのでしょうか。

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上の写真の浅川を渡る高架橋の橋脚を見ると、70cmくらいまで泥の跡がみえました。周辺の住宅も含めて浸水していたようです。

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南浅川の様子。この付近はまだ上流部なので、川に堤防が整備されていない部分が多いです。川が溢れると、容赦なく宅地にも水が入り込んでしまう状況だったと思われます。

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高尾駅近くの自転車置場。泥と流れてきた木片などがたくさん堆積しています。道路は早く片付けられたものの、それ以外の場所はこのような泥の堆積物を除去することがどれだけ大変か、イメージできると思います。

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冒頭に紹介した、甲州街道沿いの動画撮影地点に近い場所。歩道や民家・店舗の敷地に泥が堆積しています。

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側溝の蓋が外れた状態になっています。浸水すると、こうした場所は転落の危険などがあり、大変危険なことはイメージできると思います。

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南浅川沿いに来てみました。いまだに川の水は増水したままです。道路のガードパイプの高さまで、木の枝が付着し、道路が泥だらけなので、川が溢れて道路上を水が流れていたことでしょう。

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今の道路の下流側を見ると、住宅地があります。住民の皆さんが、泥の掃除や浸水した部屋の家具の片付けなどをされている姿を多く目にしました。

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浅川市民センター。当時ボランティアの受け入れ拠点になるなど、地域の活動拠点ですが、ご覧の通りフェンスの上にも泥の跡があるので、多少浸水する被害が出ていたのかもしれません。

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今の南浅川の流路は上の写真の右に向かっていますが、川が溢れるとまっすぐ道路上に水が流れていくイメージができると思います。増水すると大変危険な川です。

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歩道橋の上から見てみましょう。勢い良い滝のような場所には、砂防堰堤があるのですね。増水時には、堰堤を越えて道路上に水が流れたのかもしれません。

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浅川市民センター。ボランティアの方の一輪車などの貸し出し備品が返却されていました。地域の復旧に貢献いただき、本当に頭の下がる思いです。
やはりここも泥の跡がありました。

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JR線の踏切。JR中央線は、高尾~相模湖間で土砂崩れが発生し、運休していましたが、単線運転で復旧していたところでした。単線運転だと、自動で踏切が作動しないため、係員を派遣して、道路交通を人の手で遮断したうえで列車を通すことをしていました。

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高尾駅に来ました。被害の大きかった恩方方面へのバス運休を告げる掲示がされています。

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高尾駅~相模湖駅の中央線は、1駅だけ1本のみの列車で折り返し運転中。

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高尾駅から甲州街道(赤信号の奥の交差点)を眺めたところ。駅前広場は駅から1段高いところにあり、駅はさらに数段高いところにあります。浸水の有無は、こうした少しの高低差でも、きわめて大きな差が出るものです。駅前広場に大きな泥の痕跡等は無かったです。ただ、高尾駅周辺は、南浅川だけでなく、たくさんの支流が集まってくる場所なので、支流の災害は別途考慮しないといけません。

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京王線に1駅乗り、高尾山口駅に来ました。ここは駅前ロータリーが浸水したようです。泥だらけの駅前でした。

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この付近は、河床勾配が大きいので、川が溢れると平地以上に速い流速で濁流が下ってくることになるので、大変恐ろしい状況になるはずです。

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高尾山のケーブルカー乗り場。ケーブルカーの線路も一部被災したようですが、軽微だったためか、比較的早期に復旧しました。訪問した時はすでに復旧済みの状況です。ただし、登山道の被害が深刻で、通れない区間の情報を伝えていました。

【終わりに】
被災直後の高尾駅周辺の状況を確認して率直に感じたこととしては、浸水被害の深刻さと怖さです。濁流が勢いよく流れていた様子でしたが、人的被害がゼロであったのは、本当に奇跡的と言ってもおかしくないのではないでしょうか。道路上を濁流を流下する姿は、2011年の東日本大震災の津波の時にも話題になっており、避難経路にもなりうる道路が、濁流を合理的に流す通り道になっていると思われます。つまり、水が溢れてから避難するのは不可能というか危険なので行うべきではないということです。

今回の探索地点付近を、防災ハザードマップを使ってもう少し見てみましょう。高尾駅近くは、南浅川周辺が浸水深さ1m以上で、動画の映像の撮影された甲州街道沿いは、浸水深さ1m以下です。このハザードマップを見ているだけで、あんな川のように濁流が国道を流れる姿が想像できるでしょうか。

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(八王子市防災ハザードマップ)

地域の防災力を高めるのに必要なのは、こうした過去の災害記録を教訓にして、水害が起きたらどういうことが発生するかをイメージし、起きた際に何をすべきかを自分で考える力をつけることだと思います。大雨が降った際、行政(八王子市を例にとると)は、八王子市全体の大雨の状況を見て、ハザードマップに載っている危険そうな場所を中心に危険だと声を掛けますが、すべての地区の全ての世帯の危険度まで把握することは無理だと思います。そのために、自分たちで考えて行動できるようにする心がけがいかに大切かがわかると思います。

【参考】
2019年10月の台風の際は、地元・南大沢でも遊歩道の法面が崩壊する被害が発生しています。その報告はこちらに挙げているので、ご覧ください。


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