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【南大沢土木構造物めぐり】No.30 幹線道路と公園の間にある「廃道?」~南多摩尾根幹線道路旧道~

今回は、長池公園の裏側にある、南多摩尾根幹線道路の旧道を訪ねます。
南多摩尾根幹線道路とは、多摩ニュータウンを東西に貫く幹線道路で、交通量も多い大動脈となっています。また、隣接する長池公園も、沢山の人が訪れる人気の公園です。その間に、なぜか不思議な「廃道」。その不思議な道を紹介したいと思います。

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入り口は、南多摩尾根幹線道路の側道に、この写真の青看があるのが目印です。この標識だけ見ていたら、道路はまだまだ現役で、車が走っていそうな雰囲気がありますが・・、

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入り口はこの通り、車止めがされていて、車は通行できません。ただ、歩行者は往来することができます。

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この写真を見ると、普通の車が来そうな田舎道にも見えます。

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この道路、長池公園の園路とつながっています。長池公園から多摩市にかけて、尾根幹線道路沿いに、「多摩よこやまの道」という、手軽にハイクが楽しめる道があるのですが、その一部として案内されているのです。

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道路は、尾根のてっぺんを通ります。(実はすごいところを通っています。後ほど地図で説明します)

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車が通れる状態ではないですが、決して荒れ果てた道ではありません。散策していると、時折歩いたりジョギングしたりという方々とすれ違います。廃道とのミスマッチがなかなか不思議な感じがします。

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制限速度30キロの標識と、「この先急カーブ」の標識。昔は尾根幹線道路の旧道として活躍していたので、そのころの名残でしょうか。公園の敷地のフェンスの内側に取り残されているのがなんだか印象的です。

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こうやって遠目から見ると、ちょっとした廃道間が味わえます。もう一つカーブ注意の標識も見えます。

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坂を上がると、通信鉄塔のようなものが見えてきます。
実はこの鉄塔、2016年までは、「米軍由木通信所」として使われていました。現在は返還され、使われていません。下記のサイトに、米軍施設時代の状況が記載されています。

どうやらこの「廃道」は、米軍施設があったために、廃道になるのを免れていたようです。もう少し進むと、こんなところに出てきます。

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立派な道路橋です。その下は・・

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現道の南多摩尾根幹線道路!
旧道は、新道を通すために、わざわざ新道の上に橋を架けていたのです。ただ廃道になる運命の道路なら、橋など架けずに旧道を行き止まりにしてしまえばよいのですが、あえて橋が架かっています。上述したように、米軍施設へのアクセスなども考慮して、このルートをあえて残すことをしたのでしょう。

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橋の名前は、「長池小山田陸橋」というのですね。

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廃道は、陸橋により尾根幹線道路を渡り、尾根幹線道路の対向車線に合流して終点を迎えます。アスファルトを覆う苔。なかなか味わい深いです。

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実は、ハイカーにとっては、まっすぐ向かうこの獣道のような道が、「多摩よこやまの道」になるため、今はこちらが「メインルート」です。廃道のほうは、左に車止めが見えて、現道と合流しています。

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先ほどの長池小山田陸橋を現道から眺めます。ここから見ると、立派な道路橋で、廃道のような状態になっているとはとても思えません。

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【1996年3月 東京都建造 下部施工 (株)福田組】
なんと、まだ完成から25年しか経過していません。本当の意味で道路橋として活躍していた時期は、本当に限られた時期だけに限定されるのかもしれません。

この道路の過去はどんな姿だったのでしょうか。今昔マップで探ってみましょう。

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上記の地図は、1896~1906年と、現在の地図を見くらべたものです。現在の旧道は、明治時代の道とルートが一致しており、昔からの道路のルートだったと思われます。

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それ以降、1975年~2005年までの変遷を地図で見てみましょう。古い道路は、2005年の地図まで現役で使われています。2005年には、「橋マーク」があるので、現在の姿が次第に造成が進み、等高線の形が激変していますが、旧道から南側はあまり様子に変化がありません。
実は、この旧道上に、市境が走っており、北が八王子市、南が町田市となり、さらには尾根のてっぺんを境に、北は「多摩川水系」、南は「鶴見川水系」になります。この尾根は実は、「鶴見川の最源流の地」でもあるのです。また、町田市側は、「多摩ニュータウンの計画区域の外」でもあるので、色々な開発行為がされない地区にあたります。尾根幹線道路の南側は、古くからの山林や水田が残る小山田の農村があります。そういう意味で、この旧道は、あらゆるものの境界線をなす場所、ということになります。

【終わりに】
南多摩尾根幹線道路の旧道は、廃道のようで廃道でない、ハイカー等が「多摩よこやまの道」の一部として使っていることの多い、不思議な魅力を持った場所であると思います。この道路の南側は、鶴見川水系であり、町田市であり、多摩ニュータウンの外側になります。尾根幹線道路の現道を跨ぎ越す陸橋も見どころ満載です。是非、多摩よこやまの道や、長池公園の散策と合わせて、この不思議な境界をなす道路を眺めてみませんか。

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