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看護学実習での一番の学びは夫婦のあり方だった

私の人生において、「看護師免許」はクソくらえな所持アイテムのひとつだ。
なんなら学生の頃から「なぜこの分野を選んでしまったのか」と後悔するくらいには性格的に向いていない世界だった。

それでも、看護学というもの選択していてよかったなと思えることがひとつある。

多くの夫婦の形を見れたことだ。

学生の実習は、1人の学生に1人の患者さんというスタイルで基本行われる。すると、患者さんやその家族と会話をする時間がかなりある。

むしろ、患者さんの嗜好や背景を理解するためにあれこれ会話をせねばならない。

そんなこんなで、仕事の話とか、家族の話とか、その人なりの生き方とか、そういった話をたくさんする。

協力してくれる患者さんは、小児実習と母性看護実習(産科分野)を除き、ほとんどが高齢者だった。当時、19〜22歳だった私から見たら人生の大先輩達だ。

私が出会った人生の大先輩たちは、どの人も快く自身のこれまでの人生について語ってくれた。

いろいろな話を聞かせてもらったが、その中でも特に印象に残っている言葉がある。

とある男性の患者さんだった。
シルバーグレーの髪がとても似合う、オシャレでダンディーな方。

私は軽い気持ちで「奥さんのことは今でも好きですか?」なんて質問をした。

「好きとか愛してるとかいうより、人生の戦友であり相棒だよ。」

あぁ、なんて素敵な答えなのだろう。

結婚やら愛やらは「ときめくような恋の先にあるもの」だと思っていた子供の価値観が変わった瞬間だった。

他にもいろんな夫婦の話を聞いた。

うつ病の患者さんからは「病をきっかけに配偶者や子供と疎遠になった話」を聞いた。
がんで手術した患者さんからは配偶者と良好な関係を保つ秘訣を聞いた。
とある人は「オレがいてやらなきゃダメな可愛いやつよ」と照れくさそうに笑っていた。

受け持ち事例の数だけ、夫婦の形をみた。

指導者や教員からいただいた有難い指導はちっとも思い出せない。
しかし、人生の先輩達が語ってくれた「夫婦論」はしっかり覚えている。

人生の大先輩達による素晴らしい個別講義のおかげか、大学を卒業する頃には結婚相手に望むものがかなり整理されていた。

「結婚相手は、最高の友人でありたい」
「なにか困難に遭遇した際に1人だけ逃げようとしない人がいい」

結婚相手に求めることの大枠は上記の言葉に詰まっていたと思う。
一緒に夕食を食べられる時間に帰ってくる人がいい、などの細かいものは他にもあったけど。

5年ほど前、友人として長い付き合いがあった人を配偶者として選んだ。
見た目も仕事も、Instagram向けの華やかな要素は特にない人だと思う。
良き理解者として信頼はしていたけれど、恋愛的な感情もほとんどなかった。

「何があっても、この人とならどうにかやれそうな気がする」
理由はそれだけだった。

結果、間違っていなかった。

病めるときも、健やかなるときも、常に私に寄り添い、私が健やかであれと隣で祈っていてくれるような人だ。

まさに戦友であり相棒のような配偶者。

当時は20代前半。まだ若い時期にこのような選択ができたのは間違いなく実習を通しで出会った人生の先輩達の言葉のおかげだと思う。

数十年後、若い人から結婚観やら夫婦観について聞かれたら、おそらく私もこう言うのだと思う。

「好きとか愛してるとかいうより、人生の戦友であり相棒だよ。」

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にょろ | がんばらない暮らし
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