見出し画像

数年前の自分へ。

はじめに

2021年の秋に大好きなアパレル業界を離れ、全く領域の異なるIT業界に転職してそろそろ丸2年が経とうとしている。たった2年ではあるが、予想もしていなかった様々なことが起こった2年だった。ざっくり書くと、転職して携わった事業が1年でクローズになり、1年間一緒に仕事をした同僚達が会社を辞めたり、それぞれ別の部署に異動したり、とにかく環境の変化が目まぐるしかった。自分も周りの皆と同じく進む道の選択を迫られた訳だが、自分の能力を伸ばせる機会はまだあると思い、会社に残り別の事業のマーケティング担当として気持ち新たに仕事に打ち込む日々をリスタートさせた。それが2022年11月頃の話。

大前提として明言しておきたいのは、自分はまだまだ発展途上のマーケターの端くれであるということ。アパレルとは全く畑の違う業界に根を張って約2年。行動を起こさなければ得られなかった知見や経験を得ているが、インプットする度にそのアウトプット先として考えるのはアパレルのこと、ファッションのこと。数年前に何もできていないくせに自分はマーケターだと心の中でイキがっていた自分に説教をする気持ちで、この2年の気付きを戒めの意味も込めて書きたいと思う。

そもそもなぜアパレル業界を離れて転職したのか?

・自分のアウトプットがユーザーの為になっているのか分からなかった。
・プロモーションを展開していく上で自分の引き出しに限界を感じていた。
・マーケティングのマの字も実は知らないのでは?と不安になった。
・書籍を読んだりセミナーに参加したりしていたが、机上の空論に感じた。

こんな理由だったかと思う。新規事業に携わり、より事業の根幹に寄与するマーケティングに挑戦してみたいという思いもあったが、この先もずっとマーケティングの領域で生きていくのであれば、今のままの自分ではまずいという焦りのような感情が強かったような気がする。

以前別のnoteで、自分の考えを整理する為に「なんでマーケティングが好きなの?」という記事を書いたことがあるが、その時は”マーケティングとは事業戦略そのものであり、マーケターとは戦略を武器に事業をつくったり成長させたりすることができる人だ”とまとめた。このnoteを書いてからもう2年が経つ。まさに光陰矢の如し。

時間が経ったいま改めてより強く思うのは、マーケティング=「お客様の意見を聞き、お客様の為になること」であるということ。文字にすると当たり前のことのように思えるが、意外とできていないことが多い。そもそもアウトプットそのものがお客様のニーズに適うものになっているのか、アウトプットした結果はどうだったのか?当時の自分は100%の自信を持って説明することが難しかった。これが上述した転職した理由の1つ「自分のアウトプットがユーザーの為になっているのか分からなかった。」に繋がる部分である。

知見を積み上げることの重要性

当時は”正しい効果検証”の仕方が分からなかったのだと思う。もちろん何かを仕掛けた時は自分なりに振り返りはしていた。例えば、IGやYouTubeに出稿した時はクリエイティブの良し悪し、いいね数やLPへの遷移率の結果など基本的なことは見ていた。ただ本当に見ていただけで、自分の中で”咀嚼したつもり”になり、また別の案件に移っていく。広告を出稿をする場合、代理店を通じて広告を展開するケースが多いが、あまり良くない結果だったとしても、虚偽はもちろんないもののレポートは良い感じの雰囲気で作成され、全体としてポジティブな内容であがってくる。その結果、本質的な課題がぼやける。そして、次に同じような施策を仕掛ける時には忘れているような浅い振り返り、積み上がらない振り返りに終始し、本質的なPDCAを回せなくなる。代理店にはノウハウが積み上がるが、自分で積み上げられないことに個人的な課題意識を感じていた。担当者としてチームとして、同じ視点、同じ指標で良いことも悪いことも経験を積み上げることが必要だったと今は思う。

全ては最初の設計で決まる

より正確な効果検証を実施するには、施策を展開する前に明確な戦略設計が必要だ。これがないとそもそも何を振り返れば良いのか分からないはずである。例えばターゲット、目的、課題、検証項目、KGI、KPIなど、事前に内容を詰めて関係メンバーの合意をとった上で企画、実行、効果検証まで推進する。具体的な言葉と数値で共通認識を持つことで、企画途中での様々なブレを防ぐことができる。偉い人に何かを言われた時も元々の設計に沿って説明し、企画案でどのアイディアを採用するか迷った時も元々の設計に帰着することで終始一貫した施策を実行できる。

また、組織としてPDCAの仕組み化ができていない場合は同じフォーマットで少なくとも半年〜1年くらい運用すると共通認識として定着しやすくなる。同じ仕組み、同じ視点でPDCAを回すことで経験が積み上がり、過去の実績から未来の想定もしやすくなるはずである。

商品のプロモーションというと、LPを制作したり、お洒落な商品画像を用意したりと一種いつものパッケージ化された手段に留まることが多かった。よく言われることだが、手段が目的に擦り変わっていたような気もする。LPの目的や流入経路を整理できているか?お洒落な商品画像を制作するにしても、作り込みの方向性や掲載面に関しても感覚的なものになっていないか?など、全てを事前に設計できていたかと問われるとこれに関しても100%の自信はない。そもそも異なる商材や異なる状況に毎回同じ訴求方法が当てはまる訳もない。いつも通りのパッケージ的な訴求方法から脱却し、コンテンツ毎の最適化を図る為にも戦略設計を明確にした方が効果の最大化に繋がるはずである。

百聞は一見に如かず

マーケティングの様々なフレームワークは書籍やセミナーなどで勉強できるかもしれないが、そのフレームを自分が関わる事業にうまく落とし込むことが必要だ。汎用的なフレームであっても業界や事業内容によって活用の仕方も異なるので独自のアレンジが大切である。また、勉強だけでは机上の空論になり、実を伴わずにフレームを語る人間は評論家扱いされチャレンジの機会をも失ってしまう。現状にうまく並走させ地道に結果を出し、周囲の理解も得ていくことが健康的なマーケティング活動に繋がっていく。

PDCAのサイクルもフレームワークも、その事業として組織として継続的に積み上げていくことでしか機能する知見は得られない。「競合他社の結果が◯◯だったから、きっと◯◯のような結果になるだろう。」は存在しない。独自の積み上げが効果の最大化と正確な目標設定や効果検証に寄与するはずである。

論理を突き詰めてこそ、非論理的な勝負ができる

お洒落そう、面白そう、お客様の為になりそう的なことが成されていればOKだと以前は思っていた節があったが、論理的な思考スキルが足りていない自分からの逃げだったと猛省している。本来は論理的に整理した上で、論理的に突き詰め過ぎてしまうと競合他社と差別化を図れないので、自分達らしさを表現しよう、尖った表現をしようと考えるべきだと思う。上述したような戦略設計ができていれば冷静に結果の予想ができ、その上で仮説検証の項目として自分達らしい表現、尖った表現ができる。そうでないと、軸がない打ち上げ花火的な施策に終始し、何が良くて何が悪かったのか振り返りづらくなってしまう。論理的な整理ができて初めて、マーケティングやプロモーション担当として期待を超えるアイディアが出せるはずであり、論理がないと何を期待されているのかも分からない。論理的な整理ができて初めて、非論理的な要素の追求にチャレンジできるのだと思う。

成果意識の重要性

マーケティングやプロモーションの部門も予算を使ってアウトプットするので、成果に対してはシビアに考えなくてはいけない。認知なのか売上なのか施策の目的によって達成すべき項目は異なるが、仮に売上が目的だったとして、もし狙い通りに売上げに寄与できなかった時に何を持ち帰ることができるか?が重要だ。失敗した時もどう転ぶのか。ただ転ぶのではなく、未来に繋がる転び方をしなくてはいけない。何も持ち帰れないと担当としての存在意義が示せない。極端かもしれないが、有名なブランドやサービスに属しているお陰で仕事の交渉がしやすかったり、プライベートにおいても自己ブランディングがしやすくなっていたりする。それと同じくらい、もしくはそれ以上の価値を会社に返せているか?きちんとパフォーマンスできていない=搾取する側に回ってしまっていないか?を念頭に置きながら仕事に向き合うと、成果も変わってくる。

最後に

新たな知識や経験を得たり、自分を成長させる為には環境を変えることが一定有効だと考えつつ、精神的にも体力的にもかなりの負荷が掛かるのも事実。逆に言えば負荷が掛かるからこそ成長できるのかもしれないが。日々様々な情報に接触し、たくさんインプットしている気になりがちだが、特にSNSにおいては自分に最適化されたコンテンツを当てられているので、意外と閉ざされた世界の情報に過ぎないと感じている。だからこそ既定路線から無理矢理外れてみることも時には大事。ただその一方で、どこかで腹を括って経験を積み上げることの必要性も感じる。今回「数年前の自分へ。」というテーマで書いてみたが、本当に数年前に今の感覚を持っていたらあらゆることの結果が変わっていたのかな?と思う。ただそんなことを言ってもどうにもならないので、前を向いて進んでいくしかない。まだまだ知らない世界や勉強すべきことが山積みだとは思うが、いつかなりたい自分になれるように常に最適な選択は何かを考えながらこれからも精進していきたいと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?