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デンマークの「尊厳」ーー日々の尊厳

デンマークで私は当時(2019)の自治体のウェブページを見て多くの気づきを得たが、最近それは更新されているようだ。思い立って、改めてその内容を見てみることにした。南デュース(Syddjurs)市という自治体である。帰国してからもデンマーク語を練習し続けたおかげで少しは読むスピードは上がっているのが幸いだ。
2019年当初は「尊厳」という言葉はあまり表立って記述されていない印象だった(語学力のせいかもしれない)のが、改訂版では「尊厳の方針」という見出しが作られている。実は2019年に初めて「尊厳の方針」というセクションができたらしい。デンマーク語の「尊厳(værdighed)」という言葉は「価値のある(værdig)」という言葉が名詞になった形で、日本語の「尊厳」の持つニュアンスとは少し違うかもしれない。とにかく尊厳の方針には次のように書いてある。
「尊厳は対話の席でお互いが平等であることの前提であり、当自治体の住民との対話において重要な一部である。」そしてやはり尊厳について「尊厳とは与えられたものではなく、取り組まねばならないものである」と書いてある。高齢者となると少し事情が変わってくるが、高齢者の尊厳ある生活については次の3つの方針が示されている。
1.自己決定を尊重すること:自分の人生に発言権を持つ自由、自分の人生を自分で決める自由、そして自分で決めたことに責任を負う ということ
2.個人の多様性を尊重すること:一人ひとりは価値観が異なっていても自分にとって意味のある人生が与えられていることを感じる ということ
3.個人の脆弱な部分に配慮すること:ときにはできないことに対して共感をもって配慮される権利がある ということ。さらに良好なコミュニティも同時に重要であること
私はウェブページ改定前に読んだ尊厳の方針:「自分の人生に責任を負う機会が与えられていること」という表現を何度となく思い返しているが、現在はおそらくそれを噛み砕いてわかりやすく表しているのだろう。
そのうえで、生活の質・自己決定・介護の質や一貫性・健康と栄養・終末期・本人の周りの関係者・孤独との戦いについて、
住民が経験すべきこと・自治体の行動範囲・具体的な行動、がそれぞれ記されている。
細かいことはさておいて、この個人の尊厳ある生活というものをかなり明確に定義している点はやはりデンマークの特徴ではないかと思う。
日本ではまず、制度が示され、それが高齢者の尊厳ある暮らしにどのように寄与するのかを説明していることが多い。それでは尊厳ある暮らしとはどのように書かれているだろうか。私の住む地域の高齢者プランには
「高齢者を含めたあらゆる人々が役割を持って、いきいきと活躍し支え合うことのできる「地域共生社会」の実現に向けた施策が重要となります。そのために必要となる「地域包括ケアシステム」のさらなる深化・推進に向けて、まずは「予防」、次に「医療」「介護」、それらを取り巻く「生活支援」「住まい」の5つの構成要素につなげていくよう施策を展開していきます。」
と書かれている。また、時々出てくる言葉に「日常生活における自立度」というものがある。自立とは、他人の手を借りなくても「できる」ということだ。だから「要介護度」がついた人は、この自立度が下がってくるということになる。何かその人の価値が下がってしまうような印象を受けるのは私だけだろうか。なかなかどのような生活が尊厳ある生活なのか見つけられていないのだが、おそらく「元気で生き生きとして自分のことはなるべく自分でできる」生活ということ、なるべく価値を下げずに生活すること、そのようなものが「尊厳ある生活」なのではないかと感じられる。なるほど、だから4年前に「尊厳とはなんだろう」という疑問が湧いてきてデンマークに行くことになったのだ。






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