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宇宙一おいしい。と、彼は言った。

ママのハンバーグはうっちゅーいち(宇宙一)
おいしいんだからなっ!!

姉が県外に出張の夜、わが家で夜ご飯を食べることになった甥っ子が
私にそう言い放った。

そうなの?じゃあ今からタナカサンがそれよりもおいしいハンバーグを
作ってあげるね。

私は冷凍庫から秘密兵器を取り出した。
そう、焼くだけなのにふっくらでジューシーな
生協さんのハンバーグだ。

(クスクス。私は知っている。姉はいつもこれを使っていることを。)

温めたフライパンでハンバーグをジュウジュウと焼き、
付け合わせのポテトとコーンの準備も万端。
あとは鉄板に乗せたのちに熱々をご提供だ。
半熟の目玉焼きも忘れずにね。

キッチンからつながる居間にはハンバーグのいいかおり・・・
あぁ、もう白ご飯を大盛でください!これだけでご飯食べれます!
ぐらいレベルのいいかおりだ。

完璧な焼き具合。抜群のビジュアル。
さぁ、甥っ子よ!タナカサンの本気を知るがよい!
アレ!キュイジーー----んヌっっ!!

・・・・・・

「おれは、ふつうのハンバーグがいい。
こんな鉄板とか目玉焼きとかいらんし。
なんならおれはトウモロコシも卵もすかん。ママのがいい。」

と、淋しそうに言った。

私は恥ずかしかった。
姉よりもおいしいハンバーグを作って甥っ子からの支持率を
上げたかった。それが裏目に出たのだ。
ハンバーグは同じ生協さんの冷凍食品だったにもかかわらず。

でもさ、きっと甥っ子はさ、
出張でママがいなくてさ、
淋しくてそう言ったんだヨ。

と、まだ負けを認めていない私の中の誰かが言った。

その後何度か姉の出張たんびにカレーやら唐揚げやら
作ったのだけれど、やっぱり彼は
「ママのごはんがうっっちゅー--いち(宇宙一)おいしいんだからな!」
と私に言う。

うん。それでいいよ、それがいい。

彼からの私への支持率はいつまでたっても上がらないが、
彼の本心はそれだから、それでいいと思っている。

ママが作るごはんは、冷凍でもレトルトでも
それが一番おいしいのだよ。

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