「ゴスペル日記18」 ~マザーのバックコーラス~

ゴスペル日記 18 ~マザーのバックコーラス~



教会のマザー(私の師匠)の思い付きというのは、
どちらかというと彼女の歌よりもスゴかった気がする。

なんというのか、とにかく突然の行動にはいつも

「え?」

というものが多かった。

マザー 「明日の金曜空いてる?」

私 「空いています」(空いてなくても空いてると言うことにしてる)

マザー 「では12時に出発です」

私 「え!?」

いつも通り約束時間の1時間遅れで(LAタイム笑)マザーのクルマが来た。

クワイヤ所属のヘレン(アルトパートのとてもいい声の女性)と、クワイヤのオルガニストのディアンが乗っていた。

そして今日は隣町に行くという。

そうなの?

みんなで遅めのランチかな?

と思いながら、
クルマでフリーウェイを走ること1時間強。

隣と言うわりには少し遠くの街に来た。

ここでコンサートをやると言う。

出た~~、聞いてない~~
何も用意してない~~
まぁやるけどね笑

ホールに集まった500人ほどの前でマザーの突然コンサートは始まった。

ヘレンもディアンもノリノリでやってるが、
結局、私が知っていたのは計10曲中1曲。

すべて母音を合わせるカンジでハモって対処した。

ずいぶん対応能力もついてきたなと我ながらに思った。

アメリカのミュージシャンの一番素敵なところは
とにかく楽しんで音楽をすることだ。

もちろんそれ故に大変なことも多々あるが、
大抵は結果オーライである。

そういったことも全て含めて、
いつも教会やステージでマザーの背中を見て学んだ。

そしてコンサートも終盤に近づいたとき

またもやマザーはニコニコしながら私に

「あの曲を歌いなさい」

とマイクを渡した。

出たーーー

たまには事前に言ってよね~

でももう慣れたけどね笑

その日にマザーもヘレンも歌ってなかった
「アメイジンググレイス」
にした。

ディアンも盛り上がってピアノで同調してくれたので、調子に乗ってフェイクしまくって歌った。

オーディエンスは盛り上がってくれた。

師匠のステージに少しはイイカンジに華をそえることができたかな?

という感じでちょくちょく突然のバックコーラスを勤めさせてもらっていた。

それを繰り返すうちに、歌の勉強になる前にクソ度胸がついていった笑

この時点ではまったく気付いていなかったが、
後にいろいろなことに気付き、マザーに対する感謝は尽きない。

彼女は手取り足取り教えてくれたことはなかったが、

ゴスペルの精神はもちろん、
いつでも歌える心構えをしておくこと。
オーディエンスに楽しんでもらうこと。

それを自らの背中で、教えてくれた。

・・・・・・・・・・つづく

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