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2023秋 信州旅行記(その1)

 卒業以来会っていなかった大学時代の友人に会いに、同じく大学時代の友人である在京の2名と信州を訪ねた。松本市中心部と、同市旧安曇村の乗鞍高原をめぐる1泊2日の旅だった。

0日目(2023.10.6金)

 旅は7日からだが、前日から休暇をとって夜に東京入りし、在京の友人K氏宅へ泊まることにした。

 その前にせっかく東京まで来たので一人で映画鑑賞をした。初訪問となるポレポレ東中野にて、作品は大島新監督『国葬の日』。とても面白かったが、レビューは別稿で書くべきだろうから省く。

 上映前少し時間があったので、併設のカフェ「Space&Cafe ポレポレ坐」で、びわ茶を頂いた。私は一人で利用したが、映画を見た後に同伴者と話せる場が、すぐそばに確保されているということの贅沢さを、周囲の人達が実際にそのようにしているのを見ながら痛感した。

 K氏と新宿で合流し、彼の住む家の近くの中華料理店で海鮮焼きそばを食べた。彼は、人と会うときでなければ酒を飲まないというマイルールを持っており、この中華料理店でビールを飲みながら飯を食うのが念願だったらしい。人助けである。食後、お宅訪問、そのまま宿泊となった。

 よく見る夢の話になる。K氏はたいてい殺されそうになる夢を見て、私はたいてい留年する夢を見る。ただ最近私が見た「穴子の天ぷらを原油で揚げたらどうなるかをやってみる、桂米朝司会の朝のワイドショーの夢」の話を披露したところ、K氏は困惑していた。

1日目(2023.10.7土)

旅情を誘う「まつもと~」

 12時26分、特急あずさ81号でK氏と松本入りする。松本駅名物のホーム自動放送「まつもと~」を実際に聴くことができ、感激した。

 声の主は沢田敏子さん。地元紙、信濃毎日新聞が沢田さんに取材したところによれば、ユニークな放送音声は次のような注文から生まれたそうだ。

北海道から九州まで収録した幾つもの駅の中、東北や信越などの玄関口として一大ターミナルだった上野駅(東京)と、松本駅だけがなぜか「別枠扱い」とされ、上野は郷愁を、松本は旅情を感じるように―と注文された。

信濃毎日新聞(2021年6月7日)「声のチカラ - 『まつもとぉ~まつもとぉ~』旅情感じる駅放送 誰の声?いつ誕生?(動画あり)

駐車場探し

 駅前には信州在住のH氏が既に車で迎えに来てくれていた。

 別途高速バスで東京から同様の時刻に松本入りする予定だったA氏は、3連休初日の渋滞による遅延であと2時間程度要する見込みとの連絡を入れてきた。そこで我々はいったん、車を市内の駐車場に止め、散策がてら昼食のお店を探すこととした。

 駐車場探しの間、カーステレオが流れていた。最初、FMを流しているのだろうと思ったが、羊文学の『マヨイガ』が流れたので局の推薦曲にしては少し時間がたち過ぎているなと考え、尋ねると、H氏のプレイリストであった。

 彼女の趣味である野球とアニメに絡んだ選曲が中心だったが、なるほどドライブ向きのプレイリストとはこういうことかと、得心がいったものだった。

 私が普段聴いているプレイリストは、ややダンサブルに過ぎる。徒歩と公共交通による移動がメインの私には向いているが、不随意に体を動かすわけにはいかない運転には向いていない。

 この日は普段めったにないような混雑だったらしい。また、先週は通れた橋が塞がれ、横に新しい橋ができているとH氏はいった。無理に並行して作った橋だから、橋への入口がカーブになっていて、これは渋滞をひどくするだろうなと思った。

スーパー視察

 街から少し外れた駐車場に車を止め、散策を始める。

 イオンモール松本に立ち寄る。旅先のスーパーは、その品揃えのローカリティーを感じるべく、必ず訪ねることにしている。

 初めて見たものが「氷餅」だった。厳寒期に信州で作られる保存食で、茶請けなどに使われるらしい。餅を水に漬けてのり状にした後、外に出して凍らせ、干して乾燥させる、いわば伝統的フリーズドライとでもいうべき製法で作られる。

 他に、「梅じそなめ茸」「岩下の新生姜なめ茸」など、なめ茸の味付けにバリエーションがあったり、砕いたクルミが何製品か置いてあったりしたのには、内陸県らしさを感じた。

翁堂でカフェランチ

 なんだかんだ、散策が長くなって、ようやくランチのお店に入ったのは14時頃だった。松本駅東口正面の通り沿いにある「翁堂 駅前店喫茶室」に入った。和菓子店の2階にあるカフェレストランである。

和風イタリアン

 H氏はビーフシチュー、K氏はナポリタン、私は和風イタリアンを注文。「スパゲッティは結構、量たくさんあるよ」とのH氏の言葉どおり、ボリューミーなのがありがたい。醤油の味付けがおいしかった。

 食べている間にA氏合流。A氏はドライカレーチーズ焼きを食べた。

松本城

 歩いて松本城へ。第17回信州・松本そば祭りが松本城公園で開かれていた。台風や新型コロナウイルスなどの影響で、開催は実に5年ぶりとなったそうで、にぎわっていた。なおH氏と私がそばアレルギーなので、飲食はしなかった。

松本城

 祭りの実行委員会に加わっている地元紙「市民タイムス」の10月4日号に、そば祭り特集が掲載されており、この紙面が無料配布されていた。

 さっき通れなくなっていた橋のニュースが載っていて、さすが地域紙だとうなる。信州は県紙よりもさらに狭い地域をカバーする地域紙が多い土地である。

 中ほどに掲載されていた園内マップを見ながら庭園と公園を散策した。入場有料の天守は、50分待ちの行列だったため断念した。

 庭園には加藤清正由来の「駒つなぎの桜」がある。熊本城主である清正が、江戸からの帰路、松本城に立ち寄った際、城主石川康長が所有する2頭の駿馬のうちいずれかを進呈すると申し出る。清正は、目利きの選んだ2頭を、自分ほどの目利きで選ぶのは忍びないからと2頭とも頂戴したといい、これを聞いた人々が「さすが清正公」と感心したという逸話にちなむ。

 上記のいわれを記した碑文を読んだ一行、「さすが清正公」の理屈はわかるけども、共感が難しい、という会話をした。

 日が傾き、再び車へ戻って、宿へ向かうこととした。

(つづく)

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