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大谷基道『東京事務所の政治学─都道府県からみた中央地方関係』

※2019年12月9日にCharlieInTheFogで公開した記事(元リンク)から、本書に関する部分を抜粋して転載したものです。


 地方分権改革で国と都道府県は上下・主従関係から対等・協力関係になり、また三位一体改革では国から地方への補助金は減った今もなお、東京には都道府県の出先機関として東京事務所があります(なんと東京も都庁とは別に平河町の都道府県会館に事務室を置いています)。なぜ都道府県は今も東京事務所を置くのか、なぜ全ての都道府県が東京事務所を置くのか。この問いに中央省庁と都道府県庁の情報交換ルートとしての重要性をもって答えています。

 本書を読む限りは、東京事務所が自律的に中央省庁と折衝する姿は見えません。あくまで東京事務所は都道府県庁本庁と中央省庁の間の情報回路を確保するために奔走しているイメージです。そこまでして得たい情報は、かつての補助金獲得のための政治的交渉に必要なものというよりは、都道府県が実施すべき政策・制度の形成過程に関するものが中心で、これは具体的に都道府県が動くに当たって発案者である省庁の意思を確認することが執行上のリスク、不確実性を減らす効果を持つためだということです。

 東京事務所の実務、「省庁県人会」といった人事の実際なども詳しく記述されており、マニアックなテーマでありながら面白く読むことができました。


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