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憧れる友達がいるということの嬉しさ

友人の中に、憧れのような存在の子がいる。

短大の同級生で年齢はちょっとだけお姉さんのMちゃんだ。

憧れと聞くと「目上の人」や「手の届かない人」など、話したことはないけれどいつも素敵だなと思う人のイメージがあり、その友人も仲良くなる前はそんな感じに思っていたように記憶する。
今となっては仲良くなってもやっぱり憧れの人だ。


始まりとしては、学内で見かけるたびに、いつもふんわり乙女な空気を保っていて、素敵だなぁ、ちょっとお話してみたいなぁ、どんな子なんだろうという、まさに「話したことはないけれどいつも素敵だなと思う人」だった。

私の通っていた短大は美術系で、Mちゃんは社会人を経ての入学組だった。
だからみんなよりもちょっとだけお姉さんで、いろんなことを知っている。それなのにちっともお姉さん風を吹かすことなく、みんなのマリア様みたいな尊い存在のようだった。
(本当にマリア様のような菩薩様のような子がいるんだと拝みたくなる感じ)

私がMちゃんと話すようになったきっかけは、大学の授業でゼミが同じになったこと。
そして普段仲良くしているグループは違うものの、話す中で「すきなもの」の好みがとても近いと分かったことだった。
お互いの好きなものは、昭和レトロや大正レトロ、中原淳一氏のそれいゆやブランドのMILK、乙女らしいモチーフなど、昔ふうの「かわいいもの」。
もちろん美術やイラストが好きな生徒が集まっている大学なので、いろんなジャンルの「すき」が溢れていて好みの合う子はいっぱいいるけれど、Mちゃんのニッチな好みはまさに私にもドンピシャで、よく可愛い物談義に花が咲いたものだ。

Mちゃんはみんなに優しくて、明るくて、おっとりさがちょっとほっとけなくて、誰かが悩んでいると真剣に耳を傾けてくれる子だった。
ガーリーで乙女なものだって、年齢を経ても愛そうという精神が気持ち良かったし、未だにそのセンスも大事にしていて身近にいる「すてきなおとな」だと思う。

そんな彼女とのエピソードの中で一番心に残っているのが、私にとって初めての彼氏と失恋した時にMちゃんがかけてくれた言葉だ。

「Time will tellだよ。」

……── 今はつらいと思うけど、きっとその意味がいつかは分かるから、大丈夫だよ。私も初めての彼氏と別れた時にそう言ってくれた友人がいたの。
その時は分からなかったけど、あとになって『Time will tellだよ』の意味が身に染みるように分かった。だから、大丈夫だよ。──……


本当にその時は言葉の意味に気づくまでに時間がかかったけれど、ふと傷が癒えた時にMちゃんの言葉がすぐに思い出された。
そこから数日、数か月、その言葉の意味がじんわりと自分に沁み込んでいき、幾度も心を立て直すことができた。
そして今も何かしんどいことがあると「Time will tellだよ。」とささやくMちゃんの言葉をリフレインしている。

今、Mちゃんはおかあさんをしながらデザイン関連の仕事も精力的に楽しんいる。
素敵なものを創ったり発信していて、SNSでの活動報告をいつもわくわくしながら心待ちにしている。
そして、学生時代から変わらず可愛い物のアンテナに敏感なので、乙女で可愛いものの展示会などに行けば「Mちゃんに見てもらいたいなぁ」と必ず浮かんでしまう。
SNSで私が報告するとMちゃんも興味津々で、話が繋がることがとてもうれしい。

好きなものがあるということは本当に偉大だ。時間の流れを気にせず、いつでも誰とでも気持ちの触れ合いが出来る。
彼女から紡がれる言葉はいつも朗らかで、たおやかで、あたたかい陽だまりみたいだ。
人にそう思わせることの出来るMちゃんは、友人の中でもやっぱり憧れの存在で、自分の中でちょっとだけ特別な人である。

あの子が頑張ってるから、私も頑張ろうって思える。もっと心をやわらかくして楽しもうって思える。
誰かが真剣につらい時に、温かい言葉をチョイスできるようになりたいって思える。

そんな素敵な子が自分の友人にいるということはなんて幸せなんだろう。

もう若くはない年齢になっても、憧れる気持ちを持てるような友人がいるというのはとてもうれしいものだなぁと改めて感じている。