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ウイスキー/アイルランド起源説 チャーリー流:ウイスキー誕生ストーリー 《歴史の授業⑥》

■ウイスキーの発祥を探る旅

前回からの続きです!

◇ウイスキー:アイルランド発祥説

歴史の変遷や、文化の伝播を考えた時に、
スコットランドよりも、アイルランドの方が、
(決定的な証拠はないものの)
「大麦麦芽の醸造酒」を蒸溜して飲んでいたのは、早いのではないか?

◇ウイスキーの誕生に必要な要素

・ビール(的な麦が原料の醸造酒)
・蒸溜技術

◇ビールと蒸溜技術の伝来(公式)
<アイルランド/スコットランドへの伝来>

《4~6世紀》ビール(的なもの)が伝来
 ゲルマン民族の大移動で、ヨーロッパ本土からアングロ・サクソン人がイングランドへ侵入してきて、すでに定住していたケルト人は大ブリテン島の北部(=スコットランド)や、アイルランドへ追いやられる。

《5~6世紀》キリスト教が伝来
 432年:聖パトリックがアイルランドへ布教
 563年:聖コロンバがスコットランドへ布教

《11~13世紀》蒸溜技術がヨーロッパの修道院に伝来
 十字軍のエルサレムへの遠征によって、蒸溜技術がアラビアからヨーロッパへ。

《14~16世紀》蒸溜技術が修道院から一般民衆へ伝わる
 宗教改革による修道院解体で、蒸溜技術が民間へ流出。

   ↓

「ビール(的なもの)」×「蒸溜技術」
  = 『ウイスキーの誕生』

上記が通説であるが、もっと早い時代にアイルランドに「蒸溜技術」が伝わり、「大麦の蒸溜酒」が飲まれていたんではないか? というのがチャーリーの考え。

ここまでが前回のお話です。

それでは今回は、アイルランドで「大麦の蒸溜酒」が誕生したタイミングを妄想してみたいと思います!


■通説への疑念

《チャーリーの心の声》

蒸溜技術が伝播するの遅くね?

だって、紀元前後エジプトのアレクサンドリアに「ビール」「蒸溜技術」「原始キリスト教」があったわけでしょ?

アイルランドやスコットランドのエリアに、ビール(4~6世紀に伝来)とキリスト教(5~6世紀に伝来)が伝ったのは、ざっくり同じくらいの時期と推定されています。

じゃ、普通に考えてそれと同時期に「ビール」や「キリスト教」と一緒に、「蒸溜技術」もアイルランドやスコットランドに来たんじゃないの?と思うわけです。

それが「蒸溜技術」だけが、11世紀とか、14世紀とか、はたまた16世紀とか、1000年近くも「エジプトから伝わらなかった=タイムラグがある」と考える方が、なんか違和感があるんですよね。


■最初は修道院の中だけで・・・

「ビール」や「キリスト教」と同じ時期かその少し後(例えば6~7世紀)に「蒸溜技術」が伝わったと仮定したら、当時は蒸溜技術を「嗜好品としてのお酒」に使っていたわけでないとます。

修道院の中の儀式や医療行為などかなり限られた世界で、それこそ「アクアヴィテ=命の水=スピリッツ」として使用(≒飲用)していたと思います。

それが、どこのかのタイミングで蒸溜技術が、修道院から民間へ流出して(例えば8~9世紀)、「大麦の醸造酒=エールビール」を蒸溜するようになって、『ウイスキーが誕生』したのではないか?と、チャーリー的には妄想してしまいます。

で、それがアイルランド発祥説の1つ、「ヘンリー2世のアイルランド遠征時の兵士の報告」へと繋がると、時系列の流れは完璧だと思うんですよね。

1172年
ヘンリー2世の兵士が土地の蒸留酒・ウスケボーについて報告をしたとされる(ネトルトンの書物などで紹介されるが、原典は不明)。

ウイスキーコニサー資格認定試験教本2021 下巻 P46
発行:ウイスキー文化研究所


ただ、この妄想の決定的な弱点は「物的証拠」がない点です。

修道院の遺跡などから『蒸溜器』などが発見されれば、かなり強い証拠となるのですが、この時期のアイルランドやスコットランドの遺跡からは、そのようなものは今のところ発見されていません。


■チャーリー流:ウイスキー誕生までのストーリー

物的証拠がないものの、チャーリー的にはこのように考えています。

◇チャーリー流:ウイスキー誕生ストーリー

・「ビール」「キリスト教」と同時期に「蒸溜技術」もアイルランドに伝わったのではないか?(推定6~7世紀頃)

・この時、アイルランドで誕生した「蒸溜酒=アクアヴィテ(ラテン語:命の水)=オスケボー(ゲール語:命の水)=スピリッツ」は、嗜好品としてのお酒ではなく、修道院の儀式などごく限られた範囲でのみ飲用されていたであろう。

・修道院内の儀式で飲用されていた蒸溜酒は、どこかの段階で民間に流出(推定8~9世紀頃)し、保存性向上の観点などから、一般民衆が嗜好品として飲用していた「エールビールを蒸溜」するようなり、『ウイスキー』が誕生した。

・次第に民間でも、普通に大麦原料の蒸溜酒(=ウイスキー)を飲むようになっていった。(推定10~11世紀頃)

では、アイルランドとスコットランドのどちらで先に「大麦の蒸溜酒=ウイスキー」が誕生したのか?

チャーリーには、アイルランドに軍配を上げます!

なぜなら地図を見ながら、キリスト教の伝来ルートを確認すると、そのようにしか思えないからです。

■キリスト教の伝播ルート

それでは、次回はキリスト教の伝播ルートを地図で確認してみたいと思います!

そろそろ最終回が迫って来ました。
もう少しだけお付き合いください!

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