木樽熟成の発見は「うっかり八兵衛」
■ウイスキーは木樽熟成をさせるお酒
前々回・前回と、「ウイスキーは木樽熟成をさせるお酒」であり、「昔から長期熟成ものが好まれていた」ということをご紹介しました。
では、なぜウイスキーは木樽熟成をされるようになったのでしょうか?
チャーリー的には、2つの理由があると思います。
まずは木樽熟成の発見という歴史から振り返ってみたいと思います!
■木樽熟成の発見
ウイスキーの木樽熟成の発見では、下記の逸話が有名です。
これは事実だと思うのですが、どうも
「お酒は木樽熟成させることで美味しくなるらしい」
ということは、スコットランド以外でも、各所で自然発生的に知られるようになっていたようです。
ウイスキーと同じく「木樽で熟成させるお酒」としては、ブランデーがあります。
るという点は一緒なので、見た目はソックリです。
では、どこがちがうのでしょうか?
■ブランデーとウイスキーの違い
ブランデーとウイスキーの違いは、原材料です。
そして、昔のヨーロッパでは、「ワインがイケているお酒」でしたので、ワインの方がビールよりも先に広く広まり、生産技術も先に発展しました。
キリストが「パンは我が肉、 ワインは我が血 」という言葉を残したと言われ、当時、絶大な権力を持っていた修道院でも「まずはワイン」でした。
修道院ではワインがつくられ、宗教的な意味以外でも、綺麗な水が乏しいヨーロッパ大陸では衛生面で「ワインは安全な飲み物」として飲まれていました。
「ワイン=葡萄」が栽培できない北の寒い地方では、しょうがないので寒さに強い大麦から、ワインっぽいものをつくりました。それがビールです。
なのでビールは、先ほどのフレーズの「パンは我が肉」の方をもじって、キリスト教の世界では『液体のパン』と呼ばれ、こちらも修道院でつくられるようになりました。
こんな歴史の順番があるので、生産技術の発展は、ワインの方が先に進んだのです。
■蒸溜技術とワイン/ビール
もともと蒸溜技術自体は、メソポタミヤあたりで紀元前には誕生していました。
ただ蒸溜技術は、まずは錬金術などのために用いられていました。
また、地中海をわたってギリシャ・ローマなどへ経由してヨーロッパ大陸へ伝播するのにも時間を要したので、アルコール(醸造酒)に蒸溜技術が用いられるようになったのは12~13世紀と言われています。
この蒸溜技術もキリスト教の広まりと一緒に、ヨーロッパ中へ広がったので、ビールよりも先にワインが蒸溜されたのは、ほぼ間違いないでしょう。
なので、木樽熟成させていないブランデーと、木樽熟成させていないビールとでは、誕生はブランデーの方が先ということになります。
■ブランデーの木樽熟成
ブランデーの木樽熟成は、17世紀から18世紀にかけてはじまったというのが通説です。
コニャックの歴史を振り返ると、
とのこと。
という流れはブランデーも、ウイスキーも一緒ですね。
ちなみに、この「うっかり八兵衛的」な木樽熟成の発見は、うっかりなだけに「発明しました!」みたいな記録がありません。
スコッチウイスキーで木樽熟成が一般的に行われるようになったのは、税金がバリ高くなった1713年以降と言われていますので、ブランデーとほぼ同時期だと思われます。
■木樽熟成ってわかりやすい!
木樽熟成をさせると、荒々しかった蒸溜酒の味が円やかになるとともに、琥珀色がつきます。
あの琥珀色ってわかりやすいですよね?
メチャメチャ色の濃いウイスキーを見ると、ほぼ無意識のうちに「熟成してんなぁ」と思っちゃいます。
昔の人もいっしょで、ブレンデーでも、ウイスキーでも、「木樽熟成でお酒が美味くなる!」を知ってしまった人は、その『琥珀色』を求めるようになりますし、それがブランディングに繋がるわけです。
■ブランデーの場合
木樽熟成による琥珀色は、オー・ド・ヴィーなど生産地周辺で消費される無色透明な蒸溜酒をコニャックと区別する決め手となったそうです。
なので、木樽熟成は『安心のコニャック地方産!』を証明する典型的な特徴になりました。(アルマニャックも同様。)
そうなると生産者は、コニャックの品質を上げるために、木樽製造と熟成管理の技術に磨きをかけるようになったのです。
■ウイスキーの場合
ごく最近、世界最古のウイスキーが発見されました。
世界最古のスコッチウイスキーが競売に 1833年蒸留 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
蒸溜年である1833年を、ちょっと調べてみると
ブランデーも、ウイスキーも木樽熟成が、いつから始まったのか正確なことはわかっていないです。
ただ、浮世絵が流行っていた江戸時代に、すでに「8年間」も木樽熟成をさせていたスコッチって、なんかスゴイ!
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