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常識を疑え!! 台湾のウイスキー!

■21世紀に飛び出した超新星 台湾・カバラン蒸溜所!

ジャパニーズウイスキーの関係者をはじめ、スコッチウイスキーづくりを知る人は、基本的には「冷涼」な環境でないと長期熟成は難しく、「長期熟成」によってこそ、原酒をより「まろやかに」「上品に」仕上げることができると考えていました。(当然、熟成のピークはきちんと管理する必要がありますが。)
今も基本的にはその考えは間違いではないと思いますが、型破りな野郎が現れました!

台湾カバラン蒸溜所です。
台湾の地で、缶コーヒーなどで有名な大手飲料メーカー「金車グループ」が、2005年にウイスキー事業に参入、2006年に蒸溜を開始し、2008年に初のウイスキーを発売しました。
このカバランのウイスキーは、覆面で持ち込まれたスコットランドのウイスキー品評会で、とんでもなく高い評価を受けることとなります。
その後も、品質を高め続けており、TWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション:2019年にはじまったアジア唯一の国際ウイスキーコンペティション)では、最高金賞の常連中の常連です。

東京ウイスキー&スピリッツコンペティション-TWSC (tokyowhiskyspiritscompetition.jp)

東京ウイスキー&スピリッツコンペティション


■カバランのすごいところ

すごいぞポイント①

酷暑の環境なのに、本場スコッチウイスキーの作り方に則って、モルトウイスキー原酒をつくった点。

今までも、例えばバーボンでは、酷暑の環境で、短期のダイナミックな熟成を念頭に、連続式蒸溜機で、グレーン原酒をつくることはありました。
ただ、カバランが「コロンブスの卵」的にすごいのは、冷涼な環境でないと、「上質なモルトウイスキー原酒はできない」と誰もが思っていたところに、ど直球で、ポットスチルで本場スコットランド風に、モルトウイスキー原酒を、それも味のクオリティも高くつくったことです!

また、気温が高いので、エンジェルズシェアによる欠損が、バーボンと同じくらい多くなると思います。

ウイスキーは樽の中で目減りする!|チャーリー / ウイスキー日記|note

ただ、それは一方で、冷涼なスコットランドなどよりも「早く熟成する」ということを意味します。
そのため、原酒の品質をきちんと管理できれば、「スコットランドで10年かかる熟成が、台湾では3年でOK」なんてことも現実気を帯びます。
実際、カバラン原酒は、そんな感じで熟成が非常に早いそうです。


すごいぞポイント②

つくり方超本格。そして、斬新!

今はお亡くなりになりましたが、ウイスキーづくりの有名なコンサルタントでジム・スワン博士という方がいます。世界各国で、ウイスキーづくりを指導された方で、このカバランでも中心的な役割を果たしました。そのつくり方は、スコッチウイスキーづくりの王道そのもの。生産設備なども、スコットランド企業のものを台湾に輸入しています。

一方で、ジム・スワン博士は、樽からの成分を効果的に引き出すため、新しい樽の処理方法を、このカバラン蒸溜所から導入しています。

変えてはいけない部分は残しつつ、変えるべき部分は、大胆に変える。素晴らしいことだと思います!


すごいぞポイント③ 

つくりの規模超でかい

蒸溜所サイズも超巨大! 日本で一番、ポットスチル(=モルトウイスキー製造釜)の数が多いのは、サントリー山崎蒸溜所16基ですが、カバランはなんと20基アジア最大級を誇ります。
「新規参入のクラフト蒸溜所が頑張っていますね」などというレベルのものではなく、『質・量』ともに、世界のウイスキーづくりのトップ集団にいます。

そして、その半端じゃない生産量の原酒が、酷暑の環境の中で早く熟成するわけです。
質の高い原酒が、次々に熟成・出荷されてくるカバラン蒸溜所。
今度、世界のウイスキービジネスの中心に入ってくることは間違いなさそうです。


■南国の気候風土ならではの味わい

台湾で熟成させたウイスキーには、南国ならではの熟したフルーツのフレーバーが感じられるとされます。それが、その土地の気候風土が原酒にもたらす個性なのです。
一方で、日本で熟成させたウイスキーには、日本的な個性(=日本の四季)が原酒に宿ります。

つまり、「気候風土による熟成感」「つくり手の技」が異なるため、『違う味のウイスキー』ができあがるわけです。

台湾の本格ウイスキーである、カバランのシングルモルトが発売されたのが、2008年。
その歴史も10年を軽く越え、「台湾ウイスキーらしさ」を確立してきた台湾ウイスキーは、インドウイスキーとともに『世界5大ウイスキー』を『世界7大ウイスキー』へと、呼び名を変更させる勢いです!


■カバランの他にも・・・

台湾には、カバランの他にも本格的な蒸溜所が誕生しています。

カバラン シングルモルトウイスキー -Club KAVALAN

kavalan.jp

オマーシングルモルト│ナントー蒸留所 (omarwhisky.com.tw)

omarwhisky


■常識を疑え!

世界のプレミアムウイスキーの嗜好が、飲み口がまろやかなブレンディッドウイスキーから、シングルモルトウイスキーに変化してきたということもありますが、南国で熟した本格モルトウイスキーのクオリティの高さ。

そして、カバラン蒸溜所の躍進を見ると、今まで「冷涼じゃなきゃ無理」と言われていたのは、誰も検証したことのない、ただの思い込みだったのか?って、思ってしまいます。

『常識を疑うこと』。
私も普段から心掛けたいと思います!

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