さつま司酒造にみる日本の酒類トレンド 『ニッカ・ザ・グレーン』⑤
■引き続き、限定品「ニッカ・ザ・グレーン」について解説する5回目です。
前回、カフェモルト・カフェグレーンのご説明をしました。
今回は、《蒸溜所3》さつま司蒸留蔵についてご紹介します!
■さつま司蒸溜蔵の歴史
直近の歴史を、超簡単にまとめると以下の通りです。
アサヒビールが、さつま司酒造を傘下にした2002年といえば、「焼酎ブームのはじまり」の時期で、鏡月やジンロなどの甲類焼酎から、麦焼酎・芋焼酎といった本格焼酎へとブームが移行していた時期です。
国税庁から毎年発表されている「酒のしおり」から、そのトレンドを確認することができます。
040.pdf (nta.go.jp)
酒のしおり(令和3年3月)|国税庁 (nta.go.jp)
その本格焼酎ブームの中、手に入りづらい希少な本格焼酎である、森伊蔵・魔王・村尾を3品は、通称で「3M=スリーエム」と呼ばれていました。
これらは、居酒屋さんで1杯:数千円で販売されていました。
(今もプレミアム価格で売られている??)
古くは、日本酒の越乃寒梅、最近ではまさにジャパニーズウイスキーの山崎などと同様な過熱ぶりですね。
■2007年/2008年/2009年
このように、焼酎ブームへと向かう中、2002年にアサヒビールが、さつま司酒造を買収し、総合酒類メーカーとして、事業ドメインを広げたことは当然の戦略と言えます。
ちなみに上記の「酒のしおり」で、
平成19年(2007年)が本格焼酎の消費のピーク
というのも興味深いですね!
結論から言うと、ここから「本格焼酎→ウイスキー(ハイボール)」へと、お酒のトレンドが移るわけです。
再びこの「酒のしおり」の中で、ウイスキーの列に目をやると、平成20年(2008年)がウイスキーの消費のどん底です。
そして、翌年の平成21年(2009年)から、今に繋がるウイスキーブームとなります。
040.pdf (nta.go.jp)
そして、さらに細かく数字を見てみると、「平成19年(2007年)→平成20年(2008年)」のウイスキーの消費の落ち込みは微減であり、それまで25年間ダウントレンドであった潮目が、この2008年で変わっていることがわかります。
2008年に何があったのか??
そうです!
角ハイ・ジョッキのプロモーション(飲み方提案)です。
これにより日本のウイスキー市場は反転するのです!!
ちなみに、よくNHKの朝ドラ「マッサン」から、今に繋がる「日本のウイスキーブームがはじまった」と言われます。
しかし、歴史を振り返るとそれは違うかなと思います。
マッサンの放映は、2014年だからです。
こうして、ウイスキー市場の再拡大が、明確に認識されるようになったのが、2010-11年くらいです。
■2011年
ウイスキー市場の再拡大が決定的となった2011年、業界でも動きがありました。
この2011年になると、
となり、このウイスキーブームに対応した動きが出てきます。
代表的なのが、製造を中止していた本坊酒造:マルス信州蒸溜所が、生産を再開したことです!
そして、この同じ2011年に、アサヒビールの子会社であったさつま司酒造は、ニッカの子会社へと、アサヒグループホールディングスの中で社内的な組織改編をされるのです。
こういった、
があった上で、2014年に、NHKからマッサンが放映されました。
なので、マッサンから今のウイスキーブームがはじまったわけでなく、角ハイからウイスキーブームがはじまり、そのウイスキーブームの中で、マッサンが放映されることになった、という流れが正しいのではないかと思います。
■こうして
いつものごとく、話が超脇道に逸れてしまい、ちっとも前に進みません・・・
次回は、さつま司蒸留蔵の「グレーンウイスキーづくり=製法・原料など」についてご紹介させていただきます!
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