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ジンの香りづけ 2種類の製法 《ジン⑧》

■ジンの3つの分類方法

◇ジンの分類①(EUの法律上での規定)
 ①ジン(≒コンパウンド・ジン / バスタブ・ジン)
 ②蒸溜ジン=ディスティルド・ジン
 ③ロンドン・ドライジン

◇ジンの分類②(再蒸溜でボタニカルの香りの添加する製法の違い)
 ①浸漬法(=スティーピング法)
 ②ヴェイパー法(=ヴェイパー・インフュージョン法)

◇ジンの分類③(仕上げに水で希釈するのみか、どうか?)
 ①ワンショット
 ②マルチショット

今回は、「ジンの分類②」の浸漬法と、ヴェイパー法について、ご紹介します。


■ジンの製造工程における再蒸溜とは?

梅酒のように、
「スピリッツに香りを混ぜ合わせ(=コンパウンド)ました!」
という、コンパウンド・ジン(バスタブ・ジン)もありますが、ほとんどのジンは製造工程において『再蒸溜』を行います。

バスタブ・ジンとは?
これを知っていればGIN通! 3つのカテゴリー分類方法《ジン⑥》 | 記事編集 | note

◇再蒸溜とは?
一旦できあがっているスピリッツ(無色透明で、ウイスキーのニューポッドや、麦焼酎もその一種)を、さらにもう一回、蒸溜すること。

モルトウイスキーでは再蒸溜(2回目の蒸溜)は、アルコール度数を上げて、より香味成分を凝縮させるために行います。

ジンの場合では再蒸溜は、モルトウイスキー同様に「アルコール度数を上げて、より香味成分を凝縮させるため」に加え、
ジュニパーベリーを中心とした「ボタニカルの香り」をつけるため
に行います。

そして、ジンの再蒸溜工程香りづけをするには、2つのやり方があるのです。


■再蒸溜でのボタニカルの「香りづけ」の方法

再蒸溜で使用する単式蒸溜機は、基本的にモルトウイスキーのポットスチルと同じものだと思ってもらってOKです。

正確には、モルトウイスキーのポットスチルよりも小さめであることが多く、ネック部分(上へ延びる煙突みたいな部分)が長いことが多くはありますが・・・

さらに言うと、グレンモーレンジィ蒸溜所のポットスチルのネックが長いのは、もともと中古のジン用スチルを使っていたから!、なんて歴史もあります。

樽熟成の技術結集と首が長いポットスティル?グレンモーレンジィの特徴・ラインナップ・蒸留所の背景をご紹介! | 穏やかウイスキータイム (scotch-whisky-time.com)


話を戻して、ポットスチルによる再蒸溜時に、どんようにボタニカルの香りをつけるかと言うと、以下の2つのやり方があります。

①浸漬法(=スティーピング法)

スピリッツにボタニカルを漬け込んでから、単式蒸溜器で再蒸溜する製法。

1つめは、再蒸溜する際に、ポットスチルの中に入れたスピリッツに、ボタニカルを漬け込む方法です。

ボタニカルの成分が、スピリッツの液体に溶け出した後に、そのスピリッツが蒸溜されることで、ジン原酒にボタニカル成分が加わります。

これを浸漬(=スティーピング)法と言います。


②ヴェイパー法(=ヴェイパー・インフュージョン法)

単式蒸溜器(ポットスチル)の上部にボタニカルを入れた「カゴ」を設置。
再蒸溜のスピリッツ蒸気がそのカゴを通過する際に、香味成分が加わる製法。

もう1つは、再蒸溜する際に、ポットスチルの内部の上部に、「金網のカゴ※1」を設置してその中にボタニカルを詰めて、蒸溜によって立ち上るスピリッツの蒸気をカゴにくぐらせることで、ボタニカルの成分をジン原酒につけるやり方です。

※1 「ジンヘッド」「ボタニカル・バスケット」と呼ばれます。

こちらを、
・ヴェイバー・インフュージョン法
(ヴェイパー=蒸気/インフージョン=注入)
・バスケット法
などと言います。

ヴェイパー・インフュージョン法の詳しくは ↓

ヴェイパー・インフュージョンとは | Gin Lab (ginlab-japan.com)

【ジン】香りづけ・蒸留の方法【浸漬法とバスケット法】 | MixoloGin (mixologin278.com)

ジンの基礎講座〜ボタニカルの抽出・蒸留方法とは? (liquorpage.com)


■浸漬法とヴェイパー法の違い

大きな違いは、ボタニカルへの熱の加わり方です。

浸漬法では、最初から最後までグツグツ煮るわけなので、ボタニカルの香りを充分に抽出できる反面、エグみ的なものが抽出されてしまうケースもあります。

ヴェイパー法では、熱しすぎないことで、ボタニカルの香りを、トップノートの部分を中心に繊細に抽出できる反面、ボタニカルの「香り」や「風味」が浸漬法のように明確には抽出されない=表現されない、という点があります。

「どちらが良い」というわけではなく、目指す商品の「味わいの方向性」によって、製法も異なるということです。

◇浸漬法
ROKU、翠、ニッカ・カフェジン、季の美、ビーフィータージン など

◇ヴェイパー法
ボンベイ・サファイア、ボタニスト、カルーン など

ちなみに、アロマオイル化粧品などは、実は「ジンの香りづけ」と製法はほとんど一緒です。
そして、その場合は、「素材の香りがほんのり香る」ヴェイパー法が多いようです。

私チャーリーが北海道・家族旅行で、富良野のファーム富田というラベンダーで有名な観光農園に行った際、「ラベンダーオイル」をつくる工房がありました。

北海道のラベンダー畑「ファーム富田」オフィシャルサイト (farm-tomita.co.jp)


蒸留の舎 | 舎の紹介 | 北海道のラベンダー畑「ファーム富田」オフィシャルサイト (farm-tomita.co.jp)


そのラベンダーオイルの製造工程が、「ジン」や「ウイスキー」にソックリ!

妻・子供をそっちのけで、親父は、食い入るように蒸溜器を見ていたわけですが、その製法はヴェイパー法でした!



■浸漬法とヴェイパー法

この違いを知ってしまうと、ジンを見かけるごとに、これはどっちの製法かなぁ?と意識してしまうようになります。

蒸溜酒へ、ようこそ!!

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