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ウイスキー/アイルランド起源説 「ビール」と「蒸溜技術」の伝播《歴史の授業③》


■ウイスキーの発祥を探る旅

前回からの続きです!

◇ウイスキー発祥の国は?

「スコットランド発祥説」と「アイルランド発祥説」がある。

◇ウイスキー:スコットランド発祥説の2つの根拠

①大麦の蒸溜酒製造について、最古の『文献記録』が残っている。

②琥珀色へ『木樽熟成』させる工程を発見したのはスコッチの密造者。

◇ウイスキー:アイルランド発祥説の2つの根拠

①1172年前後のイングランド兵の「アクアヴィタ(ラテン語:蒸溜酒)」と「オスケバウ(ゲール語:蒸溜酒)」が飲まれていましたよ!の報告
 《疑念1》原典が不明
 《疑念2》蒸溜酒の原材料が不明

②歴史の変遷や、文化の伝播を考えた時に、スコットランドよりも、アイルランドの方が、『大麦を原料とした醸造酒(≒ビール)』を、『蒸溜』して飲んでいたのは早いのではないか?

《前回のあらすじ》
『大麦を原料とした醸造酒(≒ビール)』と『蒸溜技術』は、紀元前のエジプト・アレクサンドリアに存在していた。

それが、どのようにアイルランドやスコットランドに伝わっていったのか? が今回のお話です!


■ビールの伝播

紀元前3000年頃にメソポタミアで誕生したビールは、紀元前2000年より前にはエジプトに伝わり、大規模に飲まれていました。

そのビールが、ヨーロッパにいつ・どのように伝播していったのか?を確認してみます。

◇ヨーロッパのビール史

【紀元前500年頃】 
ゲルマン人がパンを経由しない方法によるビールをつくり始める

【紀元前300年頃】 
西ヨーロッパでケルト人が盛んにビールを製造

【8世紀】     
フランク王国のカール大帝がビール醸造を振興

【9世紀】     
(イギリス)エールハウス※が広がる

【12~16世紀】  
(イギリス、アイルランド、ヨーロッパ大陸の全域)           
ビール醸造業者、修道院によるビール醸造が盛んになる

日本ビール検定公式テキスト[2022年5月改定版] 
P85-86 監修:一般財団法人日本ビール文化研究
発行:マイナビ出版

(※エールハウス=主婦が経営する自家醸造のエールビールを販売する居酒屋)

ビールは、紀元前にゲルマン人や、ヨーロッパ本土のケルト人に伝わります。

西暦375年、ゲルマン民族はヨーロッパ各地への大移動を始めます。

4世紀から6世紀に渡る約200年間の大移動で、ビールづくりは、彼らの移動によってヨーロッパ各地に広まります。

そして、ヨーロッパ本土のアングロ・サクソン人がゲルマン人に追い出される形で、海を渡りイングランドへ侵入します。
それより先にそこに定住していたケルト人は大ブリテン島の北部(=スコットランド)や、アイルランドへ追いやられます。

こうした民族大移動の中で、ビールづくりは、スコットランドやアイルランドに持ち込まれたと思われています。

なので、スコットランドやアイルランドにビール(エールビール)がもたらされたのは、4~6世紀くらいだと推測されます。


■蒸溜技術の伝播

古代の最先端CITYエジプト・アレクサンドリアで学問として体系化された『蒸溜技術』。 

その蒸溜技術は、「蒸溜技術が誕生したメソポタミア」&「蒸溜技術が体系化されたエジプト」から、2方向へ伝わっていきます。

◇西回りで
地中海→ヨーロッパ→アイルランド・スコットランド→アメリカ・カナダetc.へ

◇東回りで
シルクロード→中国の雲南地方→モンゴル/中国/タイなどの東南アジア地域→琉球(泡盛)→日本(焼酎)etc.へ

ちなみに、江戸時代に日本にもたらされた蒸溜器は、蘭引(ランビキ)という陶器です。

下記のWikipediaランビキより引用

ランビキ - Wikipedia

これは以下が語源です。

アラビア語  = アランビック(蒸溜器)
 → 日本語 = ランビキ(蘭引)

アラビアンナイトの世界で生まれた蒸溜器が、シルクロードを通って、日本にランビキとしてたどり着くなんて、超ロマンを感じますねー。

そして、この日本で「焼酎」と「ジャパニーズウイスキー」が出会ったことで、メソポタミア&エジプト発の『西回りの蒸溜技術』と、スコットランド発の『東回りの蒸溜技術』が、逆回りで世界をめぐって日本で再開したことになります。

なんかカッチョ良いですね~。

この『西回りと東回りの蒸溜技術の伝播』は、こちら↓の書籍に詳しいです。

『焼酎 東回り西回り』
著者:玉村豊男(TaKaRa酒文化研究所)
発行:紀伊國屋書店

おっといけない! 
アイルランドの話をしているんだった!!


■エジプトとキリスト教

話を戻して、エジプトの蒸溜技術が、「どのようにアイルラント・スコットランドに伝わったか?」です。

色々な文化・技術・情報は、古代エジプトの最先端CITY:アレキサンドリアから、キリスト教の伝播とともに、地中海世界やヨーロッパ各地へと広まりました。

次回は「蒸溜技術の伝播」に密接に関係してくる、古代エジプトの「古代キリスト教」から話を始めたいと思います!

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