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(シングルモルト人気の解説の前に)そもそもシングルモルトって何? 《スコッチ・トレンド史③》
■スコッチウイスキー人気の浮き沈みの歴史
大きな周期で繰り返すスコッチウイスキーのトレンドについてご紹介する3回目です。
◇前回までのあらすじ
スコッチウイスキーは、大きいな時間軸で浮き沈みを繰り返してきた。
《1880年代~1890年代》UP↑
最初のスコッチ・ウイスキーブームの到来
《1900年代~1940年代》DOWN↓
パティソン事件によるウイスキーバブルの崩壊
《1940年代》DOWN↓
第二次大戦による生産調整
《1950年代~1960年代》UP↑
第二次大戦後の好景気によりスコッチ消費量が上昇
《1970年代~1980年代》DOWN↓
ウォッカ(を中心とするホワイト・スピリッツ)人気によるウイスキー離れ
・これにアメリカではバーボンの消費量が、ウォッカに抜かれた。
・この現象をホワイト・レボリューションと呼び、アメリカだけではなく、全世界的にウイスキー消費が、スピリッツ消費へと移行していった。
《1990年代~》UP↑
シングルモルト・ブームによって、スコッチ消費が上向くとともに、今の世界的なスコッチウイスキー人気、
このシングルモルト・ブームの始まりを深掘りしてみたいと思うのですが、今回は、まずシングルモルトって何なのか?について、ご紹介したいと思います。
■そもそもシングルモルト・ウイスキーって?
よく勘違いされますが、
シングルモルト ≠ シングルカスク
です。
シングルモルトとは、1つの樽からのモルト原酒を瓶詰めしたものではありません。
それは、シングルカスク・ウイスキー(バーボンではシングルバレル)と言います。
シングルモルトとは、
シングルモルト
↓
シングル(ディスティラリー)
モルト・ウイスキー
ということです。
どういうことかと言うと、1つの蒸溜所のモルト原酒のみをブレンドに使い、瓶詰めしたウイスキーのことを、シングルモルト・ウイスキーと言います。
したがって、シングルモルト・ウイスキーは、原酒をブレンドしてつくられているのです!
■なぜモルト原酒をブレンドするのか?その①
これはいきなり答えからです。
◇答え①
工業的に、同じモルト原酒が、ジャンジャンできあがるわけじゃないから。
例えば、同じ時に蒸溜したニューポット(ウイスキーの赤ちゃん/透明なウイスキー)を木樽に詰めて、3年間熟成させたとします。
ただこれだけでも、1丁1丁の樽によって仕上がりに違いが生じます。
木樽からの成分の溶出度合いには、木目なども影響しますから、同じ熟成にはならないのです。
また、数年間という長い年月を熟成に費やしますから、樽の置き場所(上段か下段か/倉庫の入口に近いか遠いかetc.)によっても熟成に違いが生まれます。
このように、生産者の意図しない形で、原酒に多様性が出るため、そのブレ幅を修正して平均化するために、原酒をブレンドする必要があるのです!
■なぜモルト原酒をブレンドするのか?その②
◇答え②
1つの蒸溜所でつくるモルト原酒にも、色々なバリエーションがあるから。
モルトウイスキー蒸溜所の生産者も、色々なバリエーションの原酒づくりにチャレンジしています。
◆モルト原酒の変数①
・麦芽の品種を変える
・麦芽のフェノール値(燻製っぽさ=スモーキーさ)を変える
・発酵用の酵母を変える
・発酵時間を変える
・ポットスチルの形を変える
・蒸溜の熱源を変える(直火/間接加熱)
・ミドルカットのポイントを変える
・冷却方式を変える(ワームタブ式/チェル&チューブ式)
など
これが木樽熟成の工程まで行くと、さらに多様性が広がります。
◆モルト原酒の変数②
・樽材を変える(ホワイトオーク/スパニッシュオーク/ミズナラetc.)
・樽の大きさを変える
・前歴の違う樽を使う(中古樽の場合、前にどのお酒を入れたいたか? バーボン/シェリー酒/ポート樽/赤ワイン/白ワイン/カルバドス/ビールetc.)
・ウッドフィニッシュ(途中での樽の詰め替え)の有無
など
代表的なものだけで、これほど変数が多いとなると、1つのモルト蒸溜所でできあがるモルト原酒のレパートリーには、数に限りがないとも言えます。
このように、生産者が意図した形で原酒に多様性を持たせています。
この1つの蒸溜所でつくられる多様な原酒の中から、「狙った味わいのシングルモルト・ウイスキー」に仕上げるため、商品毎に、異なる原酒がセレクトされ、ブレンドされているのです。
■山崎12年は山崎18年になれない!
このようにシングルモルトも、1つの蒸溜所でつくられる多様な原酒を、ブレンドしてつくられます。
そして商品毎に、使われる原酒のバリエーション(レシピ)は異なります。
例えば、
山崎12年と山崎18年では
使われている原酒のバリエーションが異なる
と言うことです。
・山崎12年には入っているが、山崎18年には入っていないモルト原酒
・山崎18年には入っているが、山崎12年には入っていないモルト原酒
が存在します。
このように商品によって、使用する原酒の構成が異なるので、仮に
山崎12年を木樽に戻して
あと6年熟成させても
山崎18年にはならない!
のです。
これは以前に記事化しています。
山崎12年は、山崎18年になれない!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■次回は
話をスコッチのトレンド史に戻して、シングルモルト・ウイスキーを誕生させた立役者をご紹介します!
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