見出し画像

スコッチウイスキーの規定から見た、酒税法上の日本国産ウイスキーの問題点とは!? 《JW定義②》

■前回は

前回は、日本の酒税法上の「日本国産ウイスキーの定義」と、本場スコットランドの法律上の「スコッチウイスキーの定義」を確認しました。

「日本国産ウイスキーの定義」と「スコッチウイスキーの定義」を比較!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)

そして、

・『スコッチウイスキーの定義』は、大きく
 ①「ウイスキー足り得るための規定」
 ②「スコッチ足り得るための規定」
 2つの観点に分類することができる!

いうところまでが前回です。

今回はその、①「ウイスキー足り得るための規定」について、スコッチウイスキーの法規定の内容を、確認してみたいと思います!

そのためにまず確認しておきたいことは、そもそも、ウイスキーとは、どういうお酒のことを言うのか?ということです。


■そもそもウイスキーとは?

世界的に「ウイスキー」とは、一般的には以下のようなお酒のことを言います。

◇ウイスキーとは

穀物を原料にして、
糖化、発酵、蒸留を行い
木製の樽で貯蔵し熟成させた酒類。

糖化には発芽させた穀類(※1)を用い、その酵素の力により原料を糖化させる。

ウイスキーコニサー資格認定試験教本2018上 P7
発行:ウイスキー文化研究所

※1 原料穀物(大麦とかコーンとか)の「デンプン→糖」へ変換するための糖化酵素は、『大麦麦芽』の糖化酵素を使いことがほとんどです。(ただし、ライ麦麦芽などを使用することもあります)

この糖化酵素に「麦芽を使う」という点は極めて重要です!

お酒の世界では
・収穫された後の大麦(BARLEY バーレイ)
・大麦にちょっと芽が生えた麦芽(MALT モルト)
明確に区別して考えます。


■大麦と麦芽の違い

発芽させた大麦=麦芽(MALT モルト)は、
デンプン分解酵素が誕生している特別な存在です。

いわば、サイヤ人とスーパーサイヤ人くらい違います。

この

    デンプン分解酵素 
     = 糖化酵素 
      = アミラーゼ

がないと、穀物からお酒をつくることができません。

正確には、穀物に含まれるデンプンを糖分に変換できないので、酵母の食べ物であるがないため、アルコールをつくることができません。


ざっくりいうと、

◇穀物を原料とするお酒
 → デンプンに変えることがマスト!
 → そのためには、糖化酵素の活用が必須!!

そして、お酒をつくる上で、代表的な糖化酵素が
・麦芽に含まれる糖化酵素
・麹菌に含まれる糖化酵素

の2種類なのです。
(他にもありますが)

◇糖化酵素
《西洋》麦芽 =ウイスキー、ビールなど
《東洋》麹  =日本酒、焼酎、老酒、白酒など

この観点がわかると、
「モルトウイスキー」と
「木樽熟成させた焼酎」との違い

が理解できます。

それは糖化酵素の違いが、大きいわけです!
(他にも違いはあります)

おっと!

これ以上の説明は長くなるので、穀物からお酒をつくる際の『糖化酵素』のお話はまた別の機会にご紹介したいと思います!


■スコッチウイスキーの定義を再度確認

それでは、「ウイスキー足り得るための規定」「スコッチ足り得るための規定」の視点で、スコッチウイスキーの法定義を、チャーリーなりに分類してみたいと思います。

◇スコッチウイスキーの法定義

▼ウイスキー足り得るための規定
(=どういうお酒をウイスキーと呼ぶのか?の規定)


・水と大麦の麦芽、イースト菌のみを原料とする。(麦芽以外に全粒の穀物の使用も可)

糖化発酵、蒸留を行う

・アルコール度数94.8%以下で蒸留
 →蒸留アルコール度数が高すぎると無味無臭のウォッカに近くなるので。

・容量700リットル以下のオーク樽に詰めて熟成。
 →スコッチとバーボンはオークという木材の指定がある。

3年以上熟成させる
 → 3年以上熟成が世界のスタンダードです。
  (南国では法定の最低熟成期間が2年や1年の国もあり)

・水と(色調整のための)プレーンカラメル以外の添加は認めない。

・最低瓶詰めアルコール度数は40%
 → 40度以上が世界のスタンダードです。

▼スコッチ足り得るための規定(=産地の規定)

スコットランドの蒸留所で(糖化と発酵、蒸留を行う)

スコットランド国内の保税倉庫か許可された場所で(3年以上熟成させる)

・木の樽または木製の容器によってスコットランド以外の国に移動させてはならず、特にシングルモルトスコッチウイスキーはスコットランド国内で瓶詰め、(小売り用)ラベリングをおこなわなければならない。

スコッチウイスキーのレギュレーションは、ざっくりこのように2つの視点に分類できるのです!

それではこのスコッチの定義から、酒税法の定める「日本国産ウイスキー」のレギュレーションの問題点を確認してみたいと思います。


■問題点①(熟成規定に関して)

日本国産ウイスキー(酒税法)の法定義と、本場スコッチウイスキーの法定義とを比較してみます。

▼ウイスキー足り得るための規定を比較すると

(日本の酒税法が定めるウイスキー)
穀物を原料とする規定 → 〇
糖化/発酵/蒸留をする規定 → 〇
上限アルコール度数の規定 → 〇
・木樽熟成の規定 → × これがない!!

日本の酒税法のウイスキー定義では、「熟成」の定義が一切ありません。

世界的には、

・木製の樽(スコッチやバーボンはオーク材指定あり)で
・3年以上の熟成

というのがスタンダードです。

このように、日本では酒税法上のウイスキーの規定に「熟成がない」ため、

熟成1日だったとしても、
(なんなら熟成0日でも)
理論上は「ウイスキー」として
販売することが可能

なのです。


■問題点②(ブレンド規定に関して)

問題①に続き、問題②も「ウイスキー足り得るための規定」についての問題点です。

次回に続きます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?