きほんの『型』と、ヒトの心。
ChatGPTなどの生成AIが世間で騒がれるようになって、少し時間が経ちましたが、アップデートをはじめとした情報を目にすると、とんでもない時代がやってきたなぁとつくづく感じます。AIが、文章をつくっておススメしてくれて、かなりの精度のものを仕上げてくれる。そんな実験の結果などを目の当たりにすると、これから先の世の中が、どのようになっていくのかが楽しみというよりも、怖さを感じることの方が多くなってきたように、個人的には感じます。
川上徹也さんの新しい本が出たという情報は、少し前に知ってはいましたが、つい最近ようやく手に入れました。ここの所、ソフトカバーの本ばかりを手に取っていましたが、久々のハードカバー。ただ、コンパクトな装丁に、『これだけのページ数に仕上げるために、相当な時間を費やされたのだろう』ということが、ひしひしと伝わってきました。かなり色々なものをそぎ落として、必要なノウハウの肝の部分だけをシンプルに詰め込んである感じです。
こんなことを言うと、教育関係の方には怒られてしまうと思うのですが、小学校時代あまりまじめに勉強した記憶のない私は、学校で文章の書き方を教わった記憶がほとんどありません。まして、キャッチコピーに触れる機会など全くなく、作文のタイトルもあったことをそのまま羅列するだけというものでした。にもかかわらず、仕事をしていくと、いくら外部のプロにお願いするようなものであったとしても、依頼主として、判断する必要があるわけで、『プロが出してきたから、それでいいじゃないか』という思いが頭の中にあったとしても、依頼主の最終的な見解を求められるということはあるわけです。そんなときに、『いやぁ、何となく違う気がするんですよね~』としか、言えない状況を経験した過去を振り返ると、本当に恥ずかしい気持ちでいっぱいです。もっとも、だからプロに頼んでいるわけなのですが、それでも、どんなものをつくってほしいかを、明確に伝えることができなければ、自分自身の頭の中にあるものをそのまま、つくってもらうことはできません。
ネットなどを見てみると、コラムなどでも、『ん?』と、思ってしまうような文章も多い、今日このごろ。意味の分からないタイトルが並んでいるサイトもたくさんあることを考えると、キャッチコピーをちゃんとつくるスキルは、これからの世の中を生きる上で、最低限必要な能力と言えるのかもしれません。
20代のあの頃に、この本が手元にあったとしたのなら、どれだけ物事が変わっていたのだろうか。そんなことを強く感じます。書くことに煮詰まったとき、重たいものを言葉にしなくてはならないとき、この本に目を通してから書きはじめたい。そんな風に感じることのできた、素敵な本です。
やっぱり、基本なんですよね。どんなことも。
『キャッチコピーのつくり方』
川上 徹也 著 日本実業出版社発行を読んでの感想