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『人的資本の生かし方』

私たちは、社会に生きている限り、何かしらの組織に入っていると思います。会社、学校、そして家族であってもある特徴からすれば、組織かもしれません。一定のルールがあり、それに沿って日々安心して、ストレスなく過ごしていけるためには、こうした組織、もしくは共同体、さらに簡単な言い方をすれば、人々との繋がりが必要です。

しかし、その繋がり方は、様々です。ダイバーシティの時代とよく言われていますが、その共同体内で共有される価値観は違ってきます。そして、お互いを理解しようとしても、完全に一体になることは、無理と言っていいでしょう。そして、変化が激しい時代の中で、その共有すべき価値観も変わっていきます。したがって、同じルールで、同じ人々が、同じことをやるという、「同じ」だらけが長年続くことは、不適切でしょう。

そんな中で、上林周平さんが書かれた『人的資本の活かし方』は、人の能力にフォーカスすることで、新陳代謝が良く、変化に対応ができ、充実した組織を作っていけることを、提唱しています。

例えば、社内で「パン屋をやってみたいんです!」と言ってきた人がいるとします。その会社(学校のクラブに置き換えてもいいです)は、パンの販売など全くしておらず、携帯電話の通信会社だったとします。その時に、その会社の経営者は、どのようにその人物に接するでしょうか。パンは社内の事業に適さないから、社風に合わないからやめようと、一言で却下するか、もしくはその人に「なんでパン屋をやりたいの?」と言って目的を尋ねてみるでしょうか。

もし、校者であったとします。その社員が「会社が人々にとって身近な食を通して知られるようになったら、旅をする人が携帯電話だけではなく、私たちのパンを持って移動してくれるかもしれません。その方がブランドが人々に浸透するかもしれないです!」という意図を言ってくるかもしれません。そうしたら、その会社の経営者であり、上司は少なくとも、以下のような反応ができるかもしれません。

「それなら、まず携帯の契約者に、食に関するサービスを実施している会社のクーポン券などを限定的に提供できるようにすることから始めてみない?社内でパンを作るところから始めるのは、今の時点では難しくても、他のサービスを紹介して、ユーザーの様子を見て、その反応がよければ自社のブランディングを考えてみるのはどうかな?」

もっともいい答えかは分からないですが、その社員がなぜパンを販売したいのかという意図を組み、その人が活躍できる場を作ることで、彼が会社のブランドを最も親しみやすいものにしたいという思いを実現していくことに繋げることができると思います。そして、その後彼が、会社のブランディング戦略で才能を磨いていく可能性もあります。

こうして、その人の能力やアイデアに注目して、それを最大限に生かすことが、「人的資本」を活かすことです。このように、社内で出てくるアイデアを生かす際には、著者の上林さんは「コーチング」が重要とお話されています。これは、単に知識を与える「ティーチング」ではなく、相手が問い(課題)に対して答えを見つけていくことができるために、導いていくというものです。こうしたコーチングがしっかりできることで、社内での新事業の促進(アクセレーターの育成)にも繋がります。

コーチングについてお話しする上では、以下の本を参考にしました。

社内起業や、そこからスピンアウトして個人事業を実施するなどのことについては、以下の『会社を辞めない起業』が、とても参考になります。

「人的資本」の活かし方は、それ以外にもたくさん紹介されています。『マネーボール』という映画では、弱かったチームが、そこに必要な能力をかき集めるという視点で、監督が人を探し、リードしていくことで成功していきます。さらに集めた人材や彼らによって行われる試合をデータベース化し、分析することで、さらに必要なスキルを効率よく伸ばしていくことで、もともと必要と判断していた人材の能力を、さらに底上げしていくことで、無敵のチームになっていきます。

この『マネーボール』で描かれているチームの姿で、通常のチームと違うのは、監督がメンバーを数合わせでとりあえず集めていくのではなく、必要なスキルを分解した上で、それぞれのパーツに合う人を雇っていったことです。そうすることで、ダイバーシティがあってもお互いに能力を認められるし、お互いの完全な理解がなくても、一つのチームの力学は働きます。みんなの能力をデータで見えるかすることで、お互いの理解も深まり、チームワークの素晴らしさも、促進されるはずです。

https://www.sonypictures.jp/he/782613

ここまででキーワードとして使ってきたのは、「人的資本」、「コーチング」、「チームワーク」、「データベース化」、そして「ダイバーシティ」です。それぞれの言葉が、現在の企業だけではなく、学校の教育現場などでも使われるようになってきていると思います。時代のニーズに合わせて、適切なチームを作り、前に進んでいくためには、何が必要なのかをそこにいる人の内側から出てきている能力、アイデアに寄り添い、そのスキルを活かす方法を考えてみることが重要かもしれません。特に年代が違う人との対話は、常にアップデートをするために、欠かせないと言えるでしょう。その特にキーワードになるものの一つが、「人的資本」かもしれません。

私自身も、NPO法人を運営させて頂いているのですが、ボランティアの方にたくさんお会いすることがあります。そして、その支援企業のMobellでは、オンラインコースを開講していて、その中で参加者の方と一緒に、どんなチャリティ活動やソーシャルビジネスをやってみたいか、私たちが何を手伝えるのかについて、お話しする機会が多いです。その際は、皆さんとチームになって、参加者の方が持っている関心や力を活かして、具体的な活動やアイデアを実現頂けるように、工夫をさせて頂いております。

これからも、たくさんの人と一緒に活動を盛り上げていけるように工夫をしていきたいと思っています。


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