♂㉒

とある休日。

飲みに行く約束をした。
連絡先は交換せず、アプリ内でやり取り。
相手の住まいは遠くもなく近くもなく。私の最寄り駅まで来てくれるということになった。

マッチした時点で、『音楽何が好きかでいろいろ決まります』といった少し変わった子だったが、変わってるのも嫌いではないのでとりあえず会ってみることにした。
27歳。職業は不明。


駅前で待ち合わせ。
『黒Tでバスの前に座ってます』

バス停前のガードレールに座っている男を確認。
チャラさはなく普通。
細身でゆるい感じの服装。
「おっすー」
今日もチャラさ全開の私。
彼は寝起き感が半端ない。そういった顔だった。ずいぶん緩いのね。


とりあえず私がよく行く飲み屋へ。

この店にいつも違う男連れて来すぎて覚えられてるんじゃないかと思う。
気にしないけど。

カウンター席にした。
顔はタイプじゃないし、今日は飲めればよかった。
お酒を頼む。
グビグビお酒を飲む彼。これは相手もワンチャン狙ってないな。

「仕事は?」
「バイト掛け持ちしてます」
「バンドマン?」
「そうです」
当たった。匂いで分かるわ。
しかも陰気そうなバンドマン臭。

喋りはするけど陰気な感じがプンプンする。

「アプリで女食えた?」
「一人ですかね。酔った勢いで家に呼んで食いましたけど、後から人妻ってことがわかって謝りました」
いや、それはやる前に言わない人妻が悪いだろ。

他にも食ってそうな感じはしたけど聞かないでおいた。

話してみると、彼もインタビュー目的ででアプリをやっているそうだ。それが本当かは分からないけど。
「ネタ探しですよねー」
「まぁね」
「やばい人いました?」
「いっぱいいたよー」
「どんなのですか?」
「そっちは他に面白い話ないの?」
ネタ探しの奴にこちらの話をするのはなんだか微妙な気がしてこちらのネタは濁した。
私が聞きたいので。ネタにされるのは癪だ。

「童貞捨てにロンドン行った話ですかね」
「何それ面白いじゃん」
「一八歳の時にバイト代貯めて、英語めっちゃ勉強してロンドンの一〇分二千円の娼婦に童貞捧げました」
目的の為の行動力半端ないな。
「安いけど、旅費考えると安くないね」
「そうなんですよ」
面白いじゃん。会った時から唇のヘルペスめっちゃ気になるけど笑
「その数年後に改めて同じ娼婦のとこに行ったら、覚えて無いって言われました」
「そらそうだろうね」
「で、もう一回やらせて貰いました」
「うける」
なかなか面白い子だなぁと思った。

バンドマンなだけあってコアな音楽の話もできて楽しかった。
私の世代のバンドも知ってるし、ギターボーカルなのは推せた。
私が子供の時に住んでた場所と彼の地元が近くて地元の話で盛り上がった。
なんだかんだで二、三時間は飲んだのかな。

でも、性的な興味は湧かなかった。ヘルペスあるし笑

私よりもハイペースで飲んでいた彼はだんだんヘロヘロになってきたので店を出ることに。

彼が何か言おうとする前に「じゃあね〜!」と言って別れた。
酔っ払いだったし、そもそも私にそんな気はなかったかもしれないけど。

家に来たいとか言われても断るだけなので。
余計なダメージ与えたく無いし、与えられたく無い。

今日は潔く飲みで解散。


結局連絡先は好感しなかったなぁ。

彼がやってるバンドの動画は教えてもらったけど。

有名になれるといいね。


意外と楽しかったよ。

最近、エロ、ないなぁ。


それでいいのか私。


エロくなくてもエグい話ほしいなぁ。

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