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農学は明日の収穫を約束する学問

以前、何回か紹介した高田大介さんの『図書館の魔女』。
今回は、書き途中だった下書き原稿を引っ張り出してきました。

気になりつつ、いまだに消化できていない部分。
このまま寝かせておいても、発酵どころか腐っていきそうなので、
今回は、俎板の鯉になる覚悟で投稿します…。


国同士の駆け引きの中で、ある土地が作物を収穫できる土地となるかを巡り、議論が交わされます。そんなかけひきの場に駆り出された農業の専門家が発したセリフです。

農学というものは所詮は人の業、人の手の及ばぬ天の配剤が非常なら容易く吹き飛ばされてしまうものなのです……

高田大介『図書館の魔女』講談社

それでは、人間がなにをしようと無力では?と問われて、答えたセリフの一部がこちら。

人の業を尽くして飢える者を救済するのでなければ、農学の進歩など詰まらぬものです。先を見越して、空腹を抱えながらも今日の麦を取りおき、明日に蒔こうというのが人の知恵、それが農学の根本ですから……。

高田大介『図書館の魔女』講談社

農学は明日の収穫を約束する学問であります。

高田大介『図書館の魔女』講談社

仕事でCABIという機関のことを調べたことがあります。農業・環境分野で有名な国際機関で、農業や環境との関わりで、飢餓、貧困、ジェンダー不平等、気候変動、生物多様性など、人類が自然との共生の狭間で直面している諸課題に取り組んでいるのだそうです。

食べることは、人間が生きていく根幹となる行為です。だからこそ、食べることに直結する農業は、人間の様々な活動と関係し、CABIが取り組むような課題を抱えることになるのでしょう。
沢山の課題を抱えていて、農業は素晴らしいと手放しで礼賛できる状態にはないのかもしれません。
実際には生やさしいものではないのだろうと思いつつ、それでも、農業に惹かれ続ける自分がいます。

土に、大気に、空に、人に、そして植物にどのように向き合うか。
それを追いかけていく農学という学問は、物語の中だけではなく、現実世界においてもやはり「明日の収穫を約束する学問」なのではないかと思います。

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