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東欧で見た格差社会

私の住んでいたプレヴェンという街はブルガリアの第8都市で、首都からバスに揺られること3時間という田舎町だった。

プレヴェンに住んでいて印象的だったのは、夏になるとよく水不足で断水していたことだ。これがなかなか厄介で、前もってアパートの入り口の扉に張り紙でアナウンスされるものの、長くて半日以上水が使えないなんてこともザラだった。食事も作れないし、トイレすら流せない。本当に困る。だからなのか、夏にはスーパーで7Lの大きなペットボトルをいくつも担いで自分の車に乗せていく買い物客をよく目にした。私の家も、もちろん水をストックしていた。

ある夏の日の午後の事。前の晩に疲れてシャワーを浴びず寝てしまったし、さあシャワー浴びようかと蛇口をひねったものの案の定水が出ない。
『しまった!今日は断水の日なのか。』後悔しても遅かった。友達が多いわけではないのに、こういう日に限って夕方から先輩のお別れパーティーというイベントが控えている。

きっと、数時間まったら水が出るようになるだろう。私は無宗教だけれど、あの時ばかりは祈った。無情にも1時間待っても、2時間待って水は出ない。

パーティーまであと1時間...残された私の選択肢は...

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浴槽の中に座り込んで、7Lのペットボトルの水をかぶるしかなかった。こんなひもじい思いをして私は何をしているのだろうか。ペットボトルシャワーを浴び終わった後に残ったものは、とてつもない疲労感だった。

そんな話を先輩の家でしたら爆笑された。どうやら先輩の家は断水がなかったらしい。それもそのはず、先輩の家の家賃は私の家賃の2倍くらい。
プレヴェン、高級住宅街は断水しないんですよ。

二度も寒い思いをした夏の日だった。

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